アフリカ水道一家!チーム横浜との連携によるグローバルな学び合い。-マラウイ・ルワンダ・ケニアの都市水道関係者によるワークショップ開催-

2019年9月26日

概要

マラウイ、ルワンダ、ケニアの3カ国の水道事業体がマラウイの首都リロングウェに一堂に会し、アフリカ域内協力「第2回無収水(注1)対策ワークショップ」が2019年9月23~26日の4日間で開催されました。

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参加者の集合写真の様子

今回のワークショップは、2018年11月にルワンダの首都キガリで開催された「第1回無収水対策ワークショップ」に続く域内協力です。参加者は、10か月ぶりの再会となりましたが、前回のワークショップの学び合いの成果であるパフォーマンス改善計画に基づき、各国で無収水対策を実践してきました。第1回ワークショップを経て、各事業体が自分たちの活動を月単位でモニタリングする習慣が身につきました。また、他国との比較を通じ、各事業体が自らの活動を客観的に見ることの重要性を学んだことは第1回ワークショップの大きな成果と言えます。

各国で一歩前に進んだ状況を共有しながら、学び合いを深化させつつ、よりスケールアップした第2回ワークショップとなりました。第2回ワークショップのスケールアップのポイントは以下2点です。

(注1)無収水とは、水道管からの漏水などにより、料金請求の対象とならなかった水のこと。

(1)横浜市水道局も参加

第2回のワークショップには、日本の横浜市水道局からも参加いただき、「横浜市水道局の概要と無収水削減対策」と「横浜市における無収水削減にかかる好事例・失敗の教訓」について、経験を共有する場を持つことができました。

横浜市とマラウイの関係は深く、2013年の第5回アフリカ開発会議(TICAD V)での、マラウイ国のジョイス・バンダ大統領(当時)と林横浜市長との対談を受け、2014年度から毎年、JICAのボランティア制度を利用して、同国第2の都市であるブランタイヤ市の水道公社(BWB)に5回、計17人の職員を派遣してきています。また、2019年度から開始された技術協力プロジェクト「リロングウェ市無収水対策能力強化プロジェクト」のチーフアドバイザーも横浜市水道局から職員を派遣されており、このような横浜市水道局とマラウイの深い絆に基づき、第2回ワークショップへの横浜市水道局の参加に繋がったものです。

今回のワークショップでは、横浜市水道局国際事業課の山下課長を始め3名が参加しました。日本の水道事業体の参加もあり、アフリカ域内という枠を超えたグローバルなワークショップとなり、一層深みのある学び合いの場となりました。

(2)マラウイ国内の他の水道事業体の参加

もう一点としては、第1回より参加のリロングウェ水公社(LWB)も含め、マラウイ国内にある5つの水道事業体全てがワークショップに参加したという点です。

技術協力プロジェクト「リロングウェ市無収水対策能力強化プロジェクト」では、プロジェクトを通じて得た知見を、マラウイ国内の他の水道事業体にも共有できる仕組みを作ることも成果の一つとして目指しています。

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ブランタイヤ水公社で活動する横浜市水道局の短期ボランティアの写真

背景と目的

今回のホスト役を担うLWBは、ルワンダ上下水道公社(WASAC)と2017年に連携協定を締結し、無収水削減を含めた相互の学び合いを促進することを合意しています。また、第三国研修でWASACを受け入れた縁で、ケニアのエンブ上下水道会社(EWASCO)も本取り組みへの関心を寄せることになり、その結果、マラウイ、ルワンダ、ケニアの各国で行われているJICAの技術協力プロジェクトが水道公社独自の取り組みによる連携協定を後押しする形で、学び合いの取り組みがスタートしました。各国のプロジェクトの点と点とがつながり線となり、新たな水道事業体の参加を得て、さらに面へと広がりを見せ始めています。

「安全で安定的かつ安価な水道をすべての人に届ける」という水道事業体同士のビジョンは各国で共通です。1年に1回程度、各国に集まり、好事例やお互いの活動を学び合うワークショップを開催しつつ、それぞれの水道事業体でパフォーマンス改善計画の実践を通じて、無収水対策をはじめとする水道事業体の改善に努めていきます。

ワークショップの内容

ワークショップの開会にあたり、主催機関であるLWBのムベウェ財務部長及びJICAマラウイ事務所の木藤所長が挨拶を行いました。

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開会挨拶を行うムベウェ財務部長(リロングウェ水公社)

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冒頭挨拶を行う木藤所長(JICAマラウイ事務所)

開会挨拶後、まずは参加各国の水道事業体の概要を理解する目的で、日本の近代水道発祥の地の水道事業体である横浜市水道局から順番に、それぞれの水道事業体の概要を発表し、各事業体の強みや課題等の現状が共有されました。

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横浜市水道局瀬川氏による同市水道局の活動内容発表

各事業体の概要説明後、ルワンダ、ケニア、マラウイの水道事業体から、前回のベンチマーク結果に基づくこの1年間の改善活動結果報告がなされました。無収水対策という共通の課題を抱える参加者にとって、他国水道事業体の経験から学ぶことは非常に多く、活発な意見交換が行われました。

ワークショップの第二部では、「無収水削減にかかる好事例・失敗の教訓」について各国の取組を踏まえ、全体討論を行いました。第二部ではWASAC、EWASCO、LWBのみならず、横浜市水道局やマラウイ国内の他の水道事業体からの発表もありました。参加事業体にとって、横浜市水道局から“教わる”という立場ではなく、共通の課題を持った一事業体として対等な立場で意見交換を行ったことは、非常に有益な機会となりました。また、今回初めて参加をしたBWBからは、短期ボランティア派遣を通じて学んだ環境教育を契機とし、小学校に対して水資源保全にかかる啓発活動を実施している旨が好事例として紹介されました。

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活発な議論が行われている様子

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発表内容を聞き入る参加者

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今回初めて参加をしたブランタイヤ水公社による発表

2日目には、マラウイ市内のDMA(注2)を視察するとともに、LWBが誇るコールセンター施設、Mobile Billing System設置場所などを視察し、LWBによる取り組みを共有しました。

一人当たりの国民総所得が380USD(2018年世銀)と非常に低いマラウイですが、LWBは2019年度のWater Service Provider of the Yearに選出される等、水道事業体として優秀な功績を重ねています。またLWBのみならず、本ワークショップを通じて、主催者であるLWBはじめマラウイ国内の水道事業体が自信をもって自分たちの取組を紹介できたことは、彼らの今後の自信に繋がると考えます。

(注2)DMA(District Metered Area)。流量計で給水量を管理する水理的に外部から区切られたエリアで無収水対策に重要な区域割。

コラム

コールセンターは、日本では顧客サービスとして様々な企業で設置され、なじみ深いものですが、途上国ではまだなかなか浸透していません。また、現場で検針しその場で料金請求するのが特徴であるハンディ検針システムも水道料金の迅速な請求を可能としました。これにより、料金請求の遅れから顧客の支払いが遅れ、水道が止められてしまうケースが大幅に改善されました。どちらもLWBが重点的に取り組む顧客サービスの一貫です。

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リロングウェ水公社内にあるカスタマー・センターの視察

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顧客メーターなどの精度検定機器のデモンストレーション現場

今後の取組み

マラウイでは2019年6月に開始した「リロングウェ市無収水対策能力強化プロジェクト」を通じて無収水削減計画作成や削減実施能力の向上を図ります。更に前述の通り、得られた知見やノウハウを積極的にマラウイ国内外に発信していきます。また、10月には横浜市での国別研修も予定しており、日本での無収水対策を実際に確認し、カウンターパートの能力強化を図る予定です。

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閉会の挨拶を行うチクニCEO(リロングウェ水公社)

ルワンダでは、実施中の「キガリ市無収水対策強化プロジェクト」を通じて、キガリ市の状況に合った無収水削減方法を特定するとともに、無収水削減5か年計画を作成し、計画的な無収水削減活動の実施・モニタリングを行っています。WASACは、今回のワークショップでの学びを活かし、より現実的な手法で、効率的に無収水削減が行えるよう更なる実施体制強化に努める予定です。

ケニアでは、実施中の「無収水削減能力向上プロジェクト」を通じて、無収水削減基準の改訂、ケニア国内の水道事業体の職員に対する無収水技術研修の実施、ケニア国内の9つの水道事業体の無収水削減計画の策定と活動の実施、これらの活動に関する知見や情報の共有を図っており、無収水削減活動を実施するための支援体制の確立を目指しています。

このように今回の無収水対策協議結果を踏まえ、WASAC、EWASCO、LWBは他国の事例やワークショップで得られた示唆も参考に引き続き改善を継続し、第3回ワークショップ(2020年度開催予定)でその成果を発表する予定です。

なお、次回のワークショップ開催までの間も、水道事業体の間では引き続き、進捗について情報交換していくことが合意されています。次回ワークショップにおいても、単なる成果発表に終わるのではなく、モニタリングの過程で新たに見えた問題点などを更に具体的に議論し、問題解決につなげる場になることが期待されています。

このような活動は、今後の水道事業体の継続的な学びあいのための第一歩となっており、サブサハラ・アフリカ地域の安全な水の安定的な供給に寄与しています。JICAとしてもこういった取り組みを引き続き支援していく予定です。また、今後は、国を越えてJICA技術協力プロジェクトとの連携を行うことで、将来的に同じような無収水の課題を持つ周辺国の水道事業体も巻き込む形での域内ネットワークの構築が期待されます。

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