ジェフリー・サックス教授と語るSDGs講演会を開催-北岡理事長が開会講演-

2019年11月12日

概要

11月12日、JICAは東京大学とSDGs・プロミス・ジャパンと共催し、ジェフリー・サックス教授を招いて講演会を開催しました。会場となった東京大学の弥生講堂・一条ホールは、大学生・大学院生(留学生含む)など約300名で満席となりました。

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開会講演を行う北岡理事長

冒頭、北岡伸一JICA理事長が開会講演を行いました。その中で、故緒方貞子元JICA理事長がその普及に尽力した「人間の安全保障」の今日的意義に鑑み、その定義をバージョンアップする必要があると強調しました。すなわち、「人間の安全保障」とは、すべての人間には「恐怖」や「欠乏」から自由になり、尊厳を持って生きる権利があり、当該国政府や国際社会は、それを支援する義務を負うというものです。また、「人間の安全保障」の概念は、「誰一人取り残さない」を目指すSDGsの根底にもなっていることを紹介しました。

その後、沖大幹東京大学未来ビジョン研究センター教授のSDGsへの東大の取り組みに関する発表に続き、「Japan and the SDGs: Domestic Challenges, Global Opportunities」というテーマで、サックス教授による白熱した特別講演及び参加者との質疑応答が行われました。

サックス教授は、世界的な経済学者であるとともに、国連事務総長特別顧問としてSDGsの策定に関わり、世界各地でその推進に努められています。今回の特別講演では、主に以下の3つの観点について熱く参加者に語りかけました。

一つ目は、知識を社会・経済課題の解決に活かすということです。政治主導でそれを行うことは難しい場合が多いものの、明治維新直後の岩倉使節団の例を挙げ、日本は明治期に政府の要人等を欧米へ派遣し、さまざまな知識を得て国づくりに役立てた、世界でも稀有で且つ模範となる成功例を有する国であると言及しました。また、東アジアの経済発展に果たした大きな貢献のほか、交通渋滞やゴミ問題についても計画的に解決してきた日本の取り組みを称賛しました。

二つ目は、SDGsのゴール1に掲げられる「貧困」の撲滅は可能であるということです。世界の一人当たりのGNIは近い将来2万ドルに届く水準にあり、世界の富を公正・公平に分配すれば、極度の貧困にある人はいなくなるはずと主張しました。また、新しい技術を効果的に活用することも重要であり、その例として、住友化学株式会社が開発し、日本がリーダーシップを取った防虫剤処理蚊帳の普及によるアフリカにおけるマラリア対策の取り組みを紹介しました。

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サックス教授講演の様子

三つ目は、持続可能な世界をつくるためにSDGsが必要であるということです。市場主義経済そのものが貧困、格差、子どもの教育、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジといった社会開発課題を解決することはないと主張しました。地球温暖化が進行する中、脱炭素化社会を目指すことが必要であり、SDGsは再生可能エネルギーへの構造転換を含む各国が目指すべき方向性を示していると強調しました。日本には、優れた省エネ技術があり、環境対策での貢献についても期待を表明しました。

最後に、参加者からの質問に答える形で、サックス教授は、SDGsの推進において教育の拡充や国連機関を含むあらゆるアクターによる取組と共創が重要であると訴えました。

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