COP25サイドイベント 太平洋における気候変動への強靭性の強化にむけた太平洋気候変動センターを通じた協力について

2019年12月12日

背景

大洋州地域に散在する島嶼国は、自然災害に対して極めて脆弱であり、気候変動に伴う海面上昇や干ばつにより、今後さらなる自然災害の激甚化が懸念されています。気候変動・防災対策に資する域内拠点の整備と、関連人材の育成が急務の課題となっていることから、JICAはサモア政府への無償資金協力「太平洋気候変動センター建設計画」にて大洋州気候変動センター(Pacific Climate Change Center:PCCC)を建設し、PCCCは2019年9月に開所しました。2019年7月からは、サモア政府及びPCCCを運営する「太平洋地域環境計画事務局(SPREP)」と共に、気候変動への適応、資金アクセス、緩和にかかる研修機能の構築に向けた技術協力「気候変動に対する強靭性向上のための大洋州人材能力向上プロジェクト」を実施中です。こうした背景を踏まえ、スペインで開催中の国連気候変動枠組条約第25回締約国会議(COP25)において、2つのサイドイベントを開催しました。

イベント(1)COP25サイドイベント「太平洋における気候変動強靭性強化にむけて:民間を対象としたキャパビル機会の充実」

概要

開催日:12月5日(木)
主催:国際協力機構(JICA)
開催地:スペイン、マドリード COP25ジャパン・パビリオン

登壇者

  • 村上裕道 JICA地球環境部 次長
  • ウェイン・キング(Mr. Wayne King)クック諸島 気候変動局長
  • アン・ラスムッセン(Ms. Anne Rasmussen)サモア天然資源環境省 次官補(気候変動担当)
  • タガロア・クーパー・ハロ(Ms. Tagaloa Cooper-Halo)太平洋地域環境計画事務局 気候変動局長
  • テエア・ティラ(Ms. Teea Tira)太平洋諸島フォーラム事務局 気候変動レジリエンス・コーディネーター
  • 加藤真 一般社団法人海外環境協力センター(OECC)理事
  • 江里口若尚 OECC 研究員

目的

全ての国が温室効果ガスの削減に取り組むことを約束した枠組みであるパリ協定の発効(2016年11月)以降、気候変動への適応や強靭性向上に関するアクターは多様化し、特に民間セクターによる活動が活発になっています。それに伴い、能力開発のニーズが高まり、研修等の機会が増えています。気候変動分野での民間セクターの役割の重要性を踏まえ、その参加や官民連携(PPP)を促進できるよう、能力開発の機会は民間セクターのニーズを踏まえて形成されることが望まれます。今回、民間セクターを対象とする能力開発の事例や課題、さらなる機会の充実について議論するサイドイベントを開催しました。

内容

イベントでは、大洋州における民間セクターの重要性につき活発な議論が行われました。冒頭、モデレーターが、大洋州の地域レベルで気候変動対策及び防災を統合した「大洋州における強靭な開発のための枠組み(2017~2030)」(Framework for Resilient Development in the Pacific 2017-2030)とその実施を推進する政府・非政府が参加する大洋州強靭性パートナーシップ(Pacific Resilience Partnership)を紹介し、パネリストは、法制度や資金支援の仕組みの整備、民間セクターの活動状況に関する調査(マッピング)など、民間セクターの参画を促進する各国や地域機関の取組を紹介しました。また、大洋州の民間セクターは一般的な中小企業よりも更に規模が小さく、参画のためには資金調達・アクセスが必要であること、再生エネルギーなど気候変動緩和だけでなく、民間も参加する強靭性強化のプロジェクトの拡充が必要であるとの指摘がありました。

JICAの技術協力プロジェクトでは、PCCCを拠点に資金アクセスを含む課題について広域研修を実施していきます。パネルディスカッションでは同研修が大洋州各国の政府及び非政府のアクターにも開かれたものであることが確認され、更に、研修員のノミネーションを行う各国政府が、民間セクターの参画を検討する重要性が共有されました。

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開会の挨拶をする村上地球環境部次長(JICA)

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質疑応答の様子

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パネルディスカッションの様子

イベント(2)COP25サイドイベント「Enhancing Climate Resilience in the Pacific supported by the Pacific Climate Change Center (PCCC)」

概要

開催日:12月12日(水)
主催:気候変動に対する強靭性向上のための大洋州人材能力向上プロジェクト
開催地:スペイン、マドリード COP25モアナ・パシフィック・パビリオン

登壇者

  • アリイオアイガ・フェトゥリ・エリサイア(H.E. Mr. Aliioaiga Feturi Elisaia)サモア独立国国際連合常駐代表
  • ユアン・キャメロン(Mr. Ewan Cameron)クック諸島外務・移民省 地域コーディネーター
  • 森下哲 環境省地球環境審議官
  • ケイティ・ロシェ(Ms. Katie Roche)ニュージーランド外務貿易省 シニア・ポリシー・オフィサー
  • タガロア・クーパー・ハロ(Ms. Tagaloa Cooper-Halo)太平洋地域環境計画事務局 気候変動局長

目的

PCCCでのパートナーシップの強化・形成に向けて、PCCCの役割と機能を周知するとともに、大洋州島嶼国・地域からの期待や他ドナーのコミットメントを共有するため、今回のサイドイベントを開催しました。

内容

イベントでは、SPREPから、今後PCCCが4つの役割(1)知識の集約・共有(Knowledge brokerage)、2)応用研究(Applied research)、3)能力強化、4)イノベーション)を担うことが共有されました。サモアやクック諸島からは、PCCCの役割を踏まえ、科学的根拠に基づくデータが提供され、今後、大洋州島嶼国における気候変動対策が促進されていくことへの期待が示されました。森下地球環境審議官(環境省)からは、アジアや太平洋地域の各国における気候変動適応の推進を支援するために立ち上げられた「アジア太平洋気候変動適応情報プラットフォーム(AP-PLAT)」が紹介され、PCCCとの協力、大洋州島嶼国でのAP-PLATの活用への期待が述べられました。ニュージーランド政府からは、PCCC及び地域パートナーシップの強化への継続した支援が述べられました。

JICAは、大洋州の地域機関や他ドナーとのパートナーシップを強化し、大洋州における気候変動対策を支援していきます。

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日本の事例やPCCCへの協力について話す森下地球環境審議官(環境省)

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PCCCへの期待を述べるエリサイア国際連合常駐代表(サモア独立国)

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PCCCの概要を説明するタガロア気候変動局長(SPREP)