【インタビュー】前・ラオス日本センターチーフアドバイザー 佐藤幹治さん−アセアン、メコン地域開発において重要な役割を果たす国家へと変貌

2011年5月6日

【画像】2001年5月に立ち上がったラオス日本人材開発センター(ラオス日本センター)。ビジネスコース、日本語コース、相互理解事業を3本柱に、ラオスのビジネス人材育成に取り組んでいます。08年9月にはラオス国立大学経済経営学部とジョイントで、MBAコースが開設。こういった取り組みが評価され、ラオス日本センターは2010年5月に、大学の学部と同格のインスティテュートへと格上げされました。
今回、2007年4月〜2011年3月までラオス日本センターチーフアドバイザーを務めた佐藤幹治さんが帰国したことを機に、ラオス日本センターの役割や、ラオスの将来について聞きました。

−08年9月にラオス国立大学経済経営学部とジョイントで開設されたMBAコースについて教えてください。

【画像】MBAコースは社会人を対象とした1年半の夜間プログラムで、定員は35人。公務員から、企業、援助機関、NGOで働いている人まで、幅広い人材が集まっています。
コースの目的は、めまぐるしく変化する企業環境に対応できる優秀なビジネス人材を育成することです。ラオスは中国やベトナム、タイ、カンボジアなど近年成長著しい国々に囲まれており、今後アセアンが経済統合を迎えて物流が活発化し、企業間の競争が激化すれば、ラオスはその波にのみ込まれるかもしれません。そのために経済のグローバル化に対応し、ラオス企業が生き残っていくための高度なビジネス人材を育てることを目指しています。
コースの特徴は、欧米流のマネジメントだけではなく、日本的経営を含めたアジア地域固有の知恵や文化も取り入れた、アジア流のマネジメント知識の習得を目指している点です。また、補足ですが、MBAコースの開設は、人材育成のみならず、ラオス日本センターの財務面での自立発展性にも貢献したと思います。

−ラオス日本センターが、大学の学部に当たるインスティテュートに格上げされたことによって、どのような変化が生じたのでしょうか。

【画像】最も重要な変化は、センターの職員として公務員23人が配置されたことです。優秀な公務員が恒常的に加わることで組織力が強化され、長期的な視点に立った運営がやりやすくなりました。さらに、大学における組織の位置付けも変化したため、ラオス社会からの期待に応えようと、職員の仕事に対する意識も大きく変わりました。
さらにインスティテュート化によりリサーチ機能も強化されたため、ラオス国立大学の他学部、関係省庁や産業界、そして海外の大学などと連携しやすくなりました。

−事業を運営する上で、佐藤さんはラオス関係者からの信頼が非常に厚かったと聞いています。信頼関係構築で重要な点について教えて下さい。

【画像】技術協力を実施する上でまず大切なことは、お互いが当初約束したことをきちんと履行することです。もし、相手国における履行が困難となっても、粘り強く自助努力を促すことが重要で、それが自立発展性の向上につながります。
二つ目は、プロジェクトの目標やビジョンを明確にし、その目標に向けて双方が努力することです。技術協力は、双方が共同で新しいものを作りあげていくことですので、それにより達成感が得られるとともに、連帯意識も強くなります。

三つ目が、組織や職員のオーナーシップを高めるために、職員の各種のインセンティブ制度を整えることです。たとえば、管理職手当、語学手当の導入や、留学や研修の機会を付与することで、仕事へのモチベーションが高まると思います。

−アセアンにおけるラオスの位置付けは、これからどのようなものになるでしょうか。

ラオスは、長い間貧しさから脱却できないというイメージがありました。しかし近年は、鉱業、水力発電、観光、縫製業などの製造業が好調で、海外からの民間投資も活発化しているため、2010年度のGDPの伸び率は7.9%と大変勢いがあります。また、中国の借款により、中国との国境の町ボーテンから首都ビエンチャンまでの420kmの鉄道の建設工事も始まっており、2015年には、ラオス、タイ、マレーシア、シンガポールが高速鉄道で結ばれることとなります。これによりラオスはさらなる経済発展を遂げるでしょう。
ラオスは中国とアセアンを結ぶ中間地点にあり、歴史的にも周辺の中国、ベトナム、タイなどから圧力を受けてきた緩衝国家で、民族の交流も活発な受容性の高い国でした。ラオスは地政学的に要衝の地となり、アセアンやメコン地域開発におけるラオスの位置付けは大きく変わるように思います。

−今後ラオスに期待していることを教えてください。

ラオスは今後経済発展が見込まれる一方で、そこで暮らす人々は、お金では測れない価値を大切にしながら、慎ましく、助け合って生きています。たとえば日本では失われた家族の絆や地域社会の互助精神などが残っています。
ここでラオスに期待したいのが、仏教で言われる、足るを知る経済社会を実現することです。物質的な欲望を抑えつつ、環境や仏教文化とも調和した経済発展をすることです。ラオスには物乞いや押し売りをする人がほとんど見受けられませんが、人間にとって大切なものを残しながら、少しずつ発展していく国であって欲しいと思います。