【研修レポート】ウクライナ日本センター「生産管理研修」実施−マツダ自転車工場で職人魂を見る

2011年11月14日

松田さんの説明に、熱心に耳を傾ける研修員たち

ウクライナ日本センター(UAJC)は、2006年5月にウクライナ国立キーウ工科大学に設立され、市場経済化を担う人材の育成や、ビジネス分野での交流促進などに取り組んでいます。 本研修は、ウクライナにおける「モノづくり」を担う人材の養成を目的として、10月16日〜30日に実施。製造業のトップや製造管理責任者、政府関係者など10人が参加し、北海道と東京でモノづくりの現場を視察しました。その中から、数多くのモノづくりの現場がある東京都荒川区で、同区役所の協力を得て実施されたオーダーメイド自転車会社、(株)マツダ自転車工場での研修の様子を紹介します。

マツダ自転車工場は1951年創業の老舗自転車会社で、競技用から一般向けまで、高品質の自転車をオーダーメイドで製造・販売しています。社員数6人の規模ながら、その高い技術力と品質から確固たる人気を誇っています。

研修ではまず、代表取締役の松田志行さんが会社について説明をしました。「会社は父親が始め、私で2代目。当初は官公庁に自転車を納入する実用自転車メーカーでしたが、1970年頃から安価な自転車との競争が激しくなり、差別化を図るために、品質を追求したオーダーメイド自転車の製造・販売に乗り出しました」。

6角形のレーダーグラフを書き、販売戦略について解説する松田さん(奥右)。 今回の研修には、荒川区のケーブルテレビも取材に入った

続いて松田さんは、販売戦略について6角形のレーダーグラフを描きながら「自転車購入の際の判断要素としてあげられるのが、見える部分の“値段”、“デザイン”、“機能”と、見えない部分の“強度”、“精度”、“性能”です。我々は特に見えない部分を大事にして、信用を得るようにしています。そのためには時間を惜しみません」と解説。そのために、体調が崩れても点滴を受けながら、徹夜で製作に取り組んだエピソードなども紹介されました。

さらに松田さんは、品質は守りながら販売層を広げるために取り組んでいる、3つの販売形態について解説。「最初は競技用として、その人の体型に合わせて、ミリ単位のフレームの調整を行う“フルオーダー”自転車のみを販売していました。さらに近年は一般向けとして、その人の体型と、通勤やサイクリングなど用途に合わせて、いくつかのフレームから選んで自転車を製作する“セミオーダー”、完成品の自転車から用途にあったものを選ぶ“イージーオーダー”による販売を行っています」。

バナーを使ってフレームの溶接作業を実演

続いて松田さんは製作現場に場所を移し、実際にバナーを使ってのフレームの溶接作業や、わずかな長さや角度を調整する繊細な作業を実演で解説。道具についても、決まったところに整理することで作業の効率性を上げている様子について紹介しました。研修員たちは松田さんの実演を交えた解説や、高い集中力の中で作業をする職人の様子を熱心に見つめ、松田さんに対し「価格はどれくらいなのか」「どのような素材を使っているのか」「注文から納品までの期間はどれくらいか」といった質問を次々に寄せていました。

松田さんは説明の最後に、日本の自転車の生産拠点がほとんど東南アジアに移っていることに触れ、「それでも我々が日本に残っているのは、高い品質へのニーズがあるから。できるだけ多くの人に、高品質の自転車のよさを分かってもらえるようにしていきたいです」と語りました。
最後に研修員を代表して、ジュエラーサービス社最高責任者のリパトフ・ゲンナージーさんがあいさつ。「マツダ自転車工場の品質へのこだわりと販売戦略から、多くのことを学びました」と感謝を述べ、さらに日本の自転車の生産拠点が海外に移っていることに触れ、「それぞれの国に誇るべきものがあると思いますが、日本はモノづくりの文化を、民間と行政が協力しながら残していくべきです」と松田さんにエールを送りました。

最後に松田さんを囲んで、自転車を バックに記念撮影。前列左端がリパトフさん

今後についてリパトフさんは「5S・カイゼンには半年前から取り組んできましたが、今回の研修でいい刺激を受けたので、磨きをかけていきたい。さらに、学んだことを伝えるためのセミナーも開き、5S・カイゼンをウクライナに根付かせたいです」と意欲を燃やしました。