【インタビュー】前・モンゴル日本センターチーフアドバイザー 森川秀夫さん−センターの財政的自立、日本企業とのビジネスマッチングの進展を目指して

2012年5月8日

2009年7月から2012年3月30日まで、モンゴル日本センターの所長、共同所長、チーフアドバイザーを務めた森川さん。日本センターの財政的自立、そして日本企業とのマッチング支援を進めているモンゴル・日本センターにて、在任中に特に力を入れた取り組みとその成果、そしてモンゴルが持つ可能性と今後の課題について聞きました。

−在任中はどのような取り組みに特に注力されたのでしょうか?

現地での活動について語る森川さん

特に力をいれたのは、日本センターの財政的な自立に向けた収入増。さらにこれと関連していますが、現地職員の意識の向上です。

収益増のために取り組んだのは、セミナーの有料化や、センター内の施設のリース、図書の有料貸し出しなど収益性を考慮したコース・サービスの実施などです。一つ一つは小さな取り組みですが、それらを積み重ね、2010年度の自己収入は2008年度の3倍近くに増加し、2010年度のセンター運営経費に占める収入の割合は目標である4割以上にまでなりました。

一方、現地職員の意識の向上については、彼らはまじめで、言われたことをしっかりこなすことはできます。反面、自分で考えて動くのが苦手です。またモンゴル人は同じ職場に長期勤務することがあまりないので、スタッフの定着率を高める対策も必要でした。そのため、年間最優秀スタッフ賞の導入や各職員の個人目標設定といった新しい取り組みを行いましたが、彼らは非常に優秀で、しっかりついてきてくれました。ただ、これらの取り組みの評価は今後改めて行っていく必要があります。

−その他、日本センターの現地化に向けてどのような取り組みをされたのでしょうか?

これまで日本人がセンターの所長を務めていましたが、一層の現地化を促すため、共同所長というステップを踏んだのち、2012年1月からはモンゴル人を所長として、より現地のオーナーシップを強化しています。しかし、モンゴル「日本」センターである以上、日本が引き続きサポートしていく必要があると思っています。

−ビジネス支援に関しては、どのような成果が上がっているのでしょうか。

モデル企業プログラムの成果発表会

ビジネスコースの一環として、モデル企業育成プログラムに取り組んでおり、2010年1月と2012年1月にその成果発表会を開きました。そこでは日本的経営を学んで売り上げが倍になったとか、従業員の自発的な行動が現れた、5Sが徹底した、といった成果の発表がありました。まだ実現はしていませんが、コースの卒業生の中には日本企業とのマッチングを望む声も出てきています。

また、これまで日本センターは主に現地の中小企業を中心に支援を行ってきましたが、2010年からモンゴル国立総合大学と連携して、モンゴル最大の企業であるエルデネット鉱山会社の技術指導を行いました。これをきっかけに中堅企業などからも、「自分の会社でも個別指導をやってほしい」という依頼を受けるようになりました。今後さらにモンゴル企業の育成支援を進めていければいいと思っています。

−モンゴルの魅力は?

初級日本語コースの授業風景

モンゴルは人口比に占める若い世代の割合が高い国で、初等教育はほぼ100%です。また、大学生の6〜7割を女性が占めていますが、彼女らはたとえ小さな子供がいても家族に預けて留学に行くのが珍しくないほど、勉学に熱心です。こうした若い人たちが、この国の未来を明るくするのではないかと思います。

そしてまた、中国・ロシアという2大国に挟まれている彼らは、第3の隣国として日本に熱い想いを寄せてくれています。日本語学習者は約12,000人で、人口比でオーストラリア、韓国、台湾に次ぎ世界4位。2010年9月に、日本センターで初級日本語コースを初めて開講しましたが、応募数は定員の2倍以上となるという盛況ぶりでした。

−現状の課題と、これから日本センターが行っていくべきことは?

現地には日本に関心を抱いている人が多くいますが、残念ながら日本語を学んでもそれを生かせる職場が少ない、という問題があります。また、失業率が高いことも問題となっています。モンゴルには豊かな鉱物資源がありますが、鉱山関係の会社は雇用創出にはそれほど大きな効果を持っていません。そのため、現地の中小企業を一層活発にすることと、日本企業が現地に進出することで、日本語習得者に対する雇用を創出していく必要があります。

日本企業が現地に進出するうえで、現地企業や市場に関する情報を提供する必要があります。逆に日本企業とのビジネスを希望するモンゴル企業への情報提供も必要です。ただ、そのためにはまず、国内のJETROをはじめとした関係機関と連携する体制をつくっていくことが必要だと思います。モンゴルにはJETROの事務所がないのですが、日本センターが両国企業の窓口となって、モンゴルと日本企業とのマッチング支援を強化していくことで、モンゴルと日本の関係をより深めていけることを願っています。