【研修レポート】ウズベキスタン企業家が“改善”現場を視察−座学で学んだ日本式経営を体験

2012年5月17日

起業家や企業経営者を対象にした4種類のビジネスコースや、中小企業を対象にした経営コンサルティングなどを通じ、市場経済の基本である企業家の育成に努めるウズベキスタン日本センター。特に、MBAタイプの包括的なビジネス研修を提供するプロフェッショナル・マネジメント・プログラム(PMP)コースは同センターの基幹事業として位置付けられており、同コースの修了生が現地のビジネス雑誌「GOLDEN PAGE」で「ウズベキスタン経済におけるトップリーダー」として選出されるなど、ビジネス界でも高く評価されています。今年1月末から2月には、このPMPコースで特に優秀な成績を修めた人たちや、さらに上級の経営塾を修了した経営者層たちが相次いで来日。2〜3週間かけて大阪や兵庫、東京、千葉の日本企業を視察し、日本式経営について理解を深めました。

4Sの考え方について講義を受ける研修生たち

気持ちのよい冬晴れとなった2月3日の午後、ウズベキスタン日本センターのPMPコースを優秀な成績で修了した10人は、企業の物流センターが立ち並ぶ千葉県市川市にある(株)豊田自動織機(トヨタL&F)のカスタマーズセンターを訪れました。この施設は、「4S」(整理、整頓、清潔、清掃)に基づくトヨタ式“改善”ノウハウを広く知ってもらうための「ショールーム施設」として2001年に開設されました。1階と2階が、大規模な流通業者や倉庫業者に同社のフォークリフトなどを用いた物流改善の方法を提案するスペースとなっているのに対し、今回一行が集まった3階の「改善ステップ体験ゾーン」は、機械をあまり用いず段階を追って“改善”を体験できるように、小規模の物流倉庫が再現されています。

種類別に整理された商品棚を視察(ラックを使用することで、上の商品を移動しなくても下の商品を楽に取り出すことができる)

ステージ0では、まず「現状を把握し、問題に気付く」ことを学びます。例えば、製品を作り過ぎて在庫を過剰に抱えている倉庫では、商品の手前に別の商品が次々と積み上げられ、奥にどの商品が置かれているか分からなくなったり、高いところに置かれた商品を取ろうとして下の商品によじ登ることで商品の破損や怪我につながり、様々なムダが出てくることになります。それぞれの場面を再現した映像を興味深そうに見入っていた研修員たちは、「だからこそ、どこに何があるか一目瞭然な状態にしておくことが大切です」という男性職員の言葉に、「なるほど」と大きくうなずいていました。

一行はその後、ステージ1〜3までの各ステージを視察。4Sを実践して必要なものと不要なものを区別し、古い商品から先に取り出せるよう床に線を引いて商品の定位置を決めるステージ1から、固定ラックを活用しスペースの効率利用を図るステージ2、可動式のラックを活用し更に効率利用を図るステージ3まで、順を追って見学しながら、簡単な物流機器を用いたトヨタ式のソリューションや“改善”の考え方について学びました。

倉庫内で荷物を運搬する電動ローリフトを動かす研修員

中でも研修員たちが強い関心を示したのは、フロアの一角に設置された「訓練道場」です。トヨタの自動車工場に必ず設けられているこの施設では、作業員たちが経験に頼ることなく効率的に必要な品物や部品を必要な量だけ倉庫から選び出す訓練が繰り返し行われています。研修員たちは、「ピッキングに必要な品物は視線より下の棚で保管する」「重いものは中下段に置く、品物のサイズに合った棚サイズを用意する」「頻度が高いものほど手が届きやすい場所へ」といったルールに従って品物が種類ごとに保管され、その脇に各作業員の名前と所要時間が一覧表で貼り出されているのを興味深そうに眺めながら、在庫の管理が商品の保管効率を高め、作業の効率にもつながっていることを学んでいました。

同センターで9年にわたり様々な視察を受け入れてきた金子益教・副センター長は、「普段は国内のお客様が多いですが4Sに基づいた改善に対して海外の人から寄せられる期待と信頼も非常に強い」と感じているそうです。「企業にとっての物流は、例えて言うなら人間にとっての血液。常にきれいな流れを確保しておくことは業種や企業の規模を問わず大切だということを理解してもらいたい」と話してくれました。

小型電動牽引車に試乗するラリサさん

研修に参加したラリサ・スカコーヴァさんは、以前、ウズベキスタン日本センターで短期コースを受講し、今はビジネスコースで経理や会計を教えています。企業の経理担当者に加え、弁護士や医者などの個人事業主を教えることも多いため、以前から「経理のノウハウだけでなく、会社経営に“改善”を取り入れる方法も指導できるようになりたい」と感じていたラリサさん。トヨタL&Fの男性職員に、「こちらがいくら“改善”を提案しても、企業側が新しいやり方を余計な手間だと感じ、導入を嫌がる場合はどうすればいいですか」と日ごろの悩みを打ち明け、「やり方を変えた方がいい理由を繰り返し説明し、ゆっくり理解してもらうことが大切ですね」という答えを懸命にノートに書き留める姿が印象的でした。

また、1年前に知人と一緒にスワロフスキークリスタル社を立ち上げたナザロフ・アジジョンさんは、「日本センターの講義を聞き、“改善”について7割方は理解できましたが、今回、日本企業を訪問したことで理解度が9割に高まりました」と満足気に話してくれました。「ウズベキスタンに戻り学んだことを自社の運営に取り入れた時、初めて“改善”を完全に理解したと言えるのだと思います」と話すアジジョンさんが、帰国後、どのような取り組みに着手するのか楽しみです。

このほか、ウズベキスタン日本センターからはこの時期、PMPコースより上級の「経営塾」で学んだ修了生たちも来日。2月17日の午後には、東京都豊島区の大正製薬を訪れ、商品の販路開拓を卸業者ではなく自社の販売員に任せたり、一人一人のユーザーが持っている潜在的なニーズを掘り起こし製品化につなげている同社のユニークな商品開発の思想について、商品開発本部の真沢和良・OTC商品開発部長から講義を受けました。

成果発表会での記念撮影。

どちらの研修コースの参加者たちも、社員のモチベーションの高め方や効果的なチームビルディングの方法、社内争議の治め方、エンドユーザーのニーズ把握など、それぞれの問題意識や目標を胸に抱いて来日しただけに、質疑応答も活発に続き、日本企業への関心の高さが伺われました。この日本研修を通じて日本企業で行われている経営や生産管理のノウハウを実際に見た彼らが、今後、ウズベキスタンに戻って自身のビジネスにどう反映させていくのか、期待されます。