【インタビュー】前・モンゴル日本センター業務調整員 佐藤信吾さん「今の」「生の」日本を伝える日本センターに!

2012年11月28日

モンゴル最大の企業であるエルデネット鉱山会社への経営指導をはじめ、現地企業との提携が急速に進むモンゴル日本センター。2010年5月から2012年10月末まで業務調整員を勤めた佐藤信吾さんに、現地の印象や活動の詳細について聞きました。

−現地スタッフに対して感じたことを教えて下さい。

現地の様子について語る佐藤さん

驚いたのは、スタッフのレベルの高さです。

業務にきちんと取り組むだけでなく、飲み込みも早い。例えば、センターの自立に向けて有料サービスを拡大し、お客様に利用して頂けるような取り組みについて指導したのですが、来客された方に対して、私よりも素早く「有料ですが、こういうサービスが提供できます」とお勧めするようになりました。またビジネスコースなどの運営については、今は現地スタッフのみでこなせるほどです。日本語レベルも高く、書類作成も含めセンター内のやり取りは現在、全て日本語で行っています。

ただ、もともと遊牧民族のためか、チームワークは多少苦手なようです。2010年に新規事業として留学フェアを始めた際、全く新しい業務であり誰がどこまでの業務を担当するか戸惑っていたようでした。しかし、その経験を経て、今年はほぼすべての業務を現地スタッフのみで運営できるようになりました。もっとも、新規事業を行う際や臨機応変な対応が必要な時に、チームとしてうまく連携を取れないことがあり、まだ改善すべき部分はあります。

また、モンゴル人は概して離職率が高いのですが、日本センターでは比較的長期間働いてくれるスタッフが多くいます。辞める場合も日本留学などステップアップを目指してのことが多く、日本と日本センターに愛着を持ってくれているのでは、と思います。

−ビジネスの相手としての、モンゴルの可能性については。

もともと親日的な上、留学経験者や語学力の高い人も多いので、ビジネスを一緒にやっていくメリットはかなりあると思います。

なお、現在は資源ビジネスだけでなく、建設関係も需要が大きくなっています。また食品メーカーからは、消費者の食の安全性に対する要求が強くなってきたため、日本企業の技術支援をお願いしたいと言う声をよく聞きます。

−そうしたモンゴルに対して、日本センターではどのような活動をしているのですか。

モデル企業への経営指導風景

現地最大の企業の一つであるエルデネット鉱山会社への経営指導を3年間継続して実施していることで、多くの企業から経営指導の依頼が来ています。今年からチンギス・ハン国際空港に対してモデル企業経営診断指導を始めました。

ただ、それほど多くの企業をモデル企業として指導することは難しいので、まずは依頼を頂いた企業に対して、企業内研修として“5S”(注1)や“改善”(注2)などを指導しています。

なお、基本的にモデル企業経営診断指導は日本人講師が行っていますが、企業内研修については、ビジネスコースの修了生でもある現地講師にも担当してもらっています。

−今後の日本センターの課題について教えて下さい。

モンゴル企業向けのビジネスアライアンスセミナーの様子

非常に残念なのが、モンゴルは日本語学習者が多いのに、日本企業の進出が進んでおらず、日本語を生かせる職場が少ないということです。しかし、日本企業が入る余地は多くあります。日本センターは両国のビジネス交流の促進をもっと支援していくことができると思います。

今年度はJICA主催によるモンゴルのビジネス環境に関するセミナーが日本の6か所で開催されましたが、ここ最近、視察を行うなどモンゴルへの進出を検討する中小企業や関心を示している地方自治体が増えてきたように思います。また、モンゴル国内でもモンゴル企業向けにセミナーを開きましたが、150人ほどの企業人が集まるなど、モンゴル側の日本に対する期待の高さが伺えました。こうした企業に対して、次のアクションを起こすために必要な情報を日本センターがもっと発信していくべきだと思います。

また、留学フェアでも参加する学生数は毎年増えており、日本に対する関心の高さが伺えます。モンゴル日本センターは今年度からモンゴル国立総合大学内の独立ユニットとして位置づけられておりますので、今後は大学間交流や科学技術面での協力にも、センターの力をもっと生かして行くことができればと思います。

最後に、時代は常に動いているということを考えますと、「今の」「生の」日本の姿を伝える日本センターであり続けることが大切だと思います。そこには、例えば東日本大震災時に見られた協力体制のような、日本人の気質に基づく、目に見えない要素も含まれます。そうしたものまで伝えるためには、現地スタッフや現地講師の育成がどれほど進もうとも、今後とも日本人スタッフが日本センターに関わり続けていくべきだと思います。

(注1)5S:整理、整頓、清掃、清潔、しつけの5つから成る業務改善の活動

(注2)改善:製造現場の作業者が中心になって行う生産性向上の活動