【インタビュー】前・ベトナム日本センターCA藤井孝男さん−民間出身CAとして

2013年1月29日

2007年からベトナム・ホーチミン日本センターの、そして2010年から2012年12月までハノイの日本センターのチーフアドバイザーを務めた藤井孝男さん。民間企業時代を含めると、合計18年間ベトナムで仕事を続けてこられましたが、日本センターでの活動や今後のベトナムの展望など関して聞きました。

−ご自身の提言で立ち上げた「経営塾」は今年4年目を迎えましたが、その成果を教えて下さい。

「経営塾」の授業風景

ベトナムは2020年までに近代工業国となることを国家目標として掲げており、そのために裾野産業を担う中小企業の育成が欠かせません。しかし、なぜ強い中小企業が育たないのかを考えた時、目先の利益しか考えない経営者が多いといった問題がありました。「まず経営者のマインドを変えなければ」という思いから、2009年に若手経営者を育てる「経営塾」を始めました。

「経営塾」の人気は高く、昨年9月に始まった4期生募集では定員の倍以上の応募がありました。その際、中部のダナンなどからも応募があり、今後はベトナムの地方からも参加者が出てくると思います。

卒業した経営者が、自社の副社長や工場長などに薦め応募させることも多く、卒業生からも高い評価を受けています。卒業生の中には、例えば日系自動車メーカーの下請け会社で、経営塾で学んだ生産管理手法を生かし、今ではトップクラスの取引先になったなど、業績を上げている企業が多くあります。

加えて、彼らの中には、自社のためだけでなく「国全体の発展に貢献したい」という意識も育って来ており、経営塾の講師を自ら進んで引き受けてくれる卒業生も出てきています。

また、卒業生が自主的に勉強できる場として「経営塾クラブ」を作りました。「経営塾クラブ」では、セミナーなどを定期的に開いているほか、最近では、日本の「九州・アジア経営塾」などとの交流や商談会も行っています。彼らには、これからのベトナムを背負う経済人になっていってほしいですね。

−「経営塾」のほか、民間出身の日本センター・チーフアドバイザーとしてどのような活動に特に注力されてきたのでしょうか。

インタビューを受ける藤井前CA

「日本センターは一つの企業」と考え、スタッフのコスト管理の意識などを強化しました。その一環として、ホーチミン、ハノイ各センターで年間の事業計画を作成し、その達成度の確認を毎月行っています。また、ビジネスコースをはじめ運営する各コースの損益計算書や投資計画も作り、赤字の出ない事業経営を進めてきました。

また、スタッフに対して導入した能力別賃金の仕組みはすっかり定着していますが、この取り組みを知りたいと多くのベトナム企業から依頼を受け、外部向けセミナーを開催したところ、大きな反響がありました。

−18年間ベトナムと関わってきましたが、今後の同国についてはどうお考えですか。

藤井前CAによる現場指導の様子

ベトナムは質の高い労働力があり、またGDPも増加を続けています。

しかし、裾野産業育成も含め、国際競争に打ち勝っていけるスピードで工業化が進んでいるとは必ずしも言えません。今後、ベトナム政府は、自国の強みと弱みをしっかり把握し、強みを伸ばす投資を行っていくべきだと思います。なお、ベトナムは食料自給率が160%にも上るほど食に関する資源が豊富ですので、個人的には食品加工など「農業の工業化」を目指して行ってもいいのでは、と思っています。

なお、日本企業にとって、ベトナムの人件費高騰が問題視される向きもありますが、日本に比べればまだ安いですし、なにより優秀な労働者が多い。だから、この国では単に安いものでなく、質の高いものを作ろうとすることが成功の秘訣だと思います。

−今後の日本センターの目指すべき方向性について、お考えを教えて下さい。

日本センターのスタッフたち

ベトナムでは、民間の人材育成機関が多く進出していますので、そうした民間の機関と日本センターの間で、双方の特長を生かしながら、相互補完的に協力していくことができればと考えています。

ベトナム日本センターのプロジェクトがいずれは終了することを想定して、私たちは独立採算化に向け着実な取り組みを進めてきました。しかし「日本センター」と名前が付く以上、100%の自立化・自主運営は難しいと個人的には考えています。「経営塾」をはじめ、日本センターはベトナムで欠かせない存在になってきており、日本センターは日本の外交にとっても非常に重要な役割を担っていると思います。

−今後、ベトナムで仕事を始めようとしている日本人にメッセージを。

民、官を問わず、ベトナムで仕事をするうえでは、その国民性や特徴をしっかり理解するのと同時に、この国を好きになることが大切だと思います。我々はベトナム人にとって外国人。彼らを好きになり、彼らに信頼されるようになることこそが、仕事を始める第一歩だと思います。