【研修レポート】ウズベキスタンの研修員がモノづくりのまち・大田区へ−ウズベキスタン日本センター

2014年2月7日

ウズベキスタンは1991年に旧ソ連から独立した後、国家による経済管理のもとで経済市場化に取り組み、2004〜2010年の経済成長率は7〜8%に上ります。しかし同国の経済は、資源や綿花の輸出への依存度合いが高いため、今後の持続的な発展を目指すためには、製造業やサービス業などの育成が重要となります。そうした同国の未来を担う産業人材を育成するウズベキスタン日本センター。そのビジネスコースの受講生から選抜された研修員など9人が2014年1月13日に来日し、24日までの約10日間、東京や関西の企業などを見て回りました。

安久工機の外観

冬晴れで暖かくなった1月21日、研修員たちは東急多摩川線の武蔵新田駅に降り立ちました。ここは、約4,000の工場が集積し「モノづくりのまち」として知られる大田区。道を歩くと、住宅地に入り混じって小さな町工場が顔をのぞかせます。この日、彼らが向かったのは、駅から約15分歩いた場所にオフィスと作業場を構える有限会社安久工機(やすひさこうき)。社員数はわずか6人ながら、クライアントからの要望に応える受託開発だけでなく、ユニークな自社製品も多く展開しているモノづくり企業です。

ところ狭しと加工用機器が置かれた作業場

同社に到着した研修員たちは、まず、ところ狭しと加工用機器が置かれた作業場を見学した後、同社の代表取締役社長である田中隆さんの話を聞くことに。

研修員たちに、「Здравствуйте!(こんにちは)」とロシア語であいさつを切り出した田中さんは、1969年に創業された同社の2代目社長。自身は人工心臓に関する研究で博士号を取得するなど先端技術に関する知見を有するほか、ホームステイの受け入れなどを積極的に行う国際人でもあります。その一方で、「作業着が当社のフォーマルな服装」と主張し、式典などにも作業着で出席。また、設計を行う際にもコンピューターによる製図システム(CAD)を使用せずに手書きで図面を作成するなど、誇りある「町工場の職人」としてのこだわりを見せる一面も。

田中さんは、学生時代は大手企業への就職も検討したことを明かしつつ、「ものづくりの最初の段階から関われることに魅力を感じた」と、同社を選んだ理由を語ります。また、「大手企業の子会社・孫会社の場合、親会社の指示に沿ったモノづくりしかできない場合もあるが、大田区の場合『協力会社』という立場のため、こちら側から発注者に提案をしやすい」と、大田区の町工場の魅力を説明しました。

続いて田中さんは、まずクライアントから依頼で受託開発した製品を紹介。大学の要請を受けて作ったサルの歩き方分析装置など、ユニークな製品の事例を挙げましたが、さらに「アイデアさえあれば、小さい企業でも独自の製品が作れる」として、自社で開発したオリジナル製品の説明を始めました。

自社開発したカラーコーン

そのうちの一つが、折りたたみ式カラーコーン「パタコーンNN型TM」。これは、同社の社員が警察の関係者から「パトカーのトランクにいくつも積めるカラーコーンがあったら便利なのに」というニーズを聞きつけ、同社が独自に開発したものです。大量に持ち運びできるよう、軽量化し、折り畳んでコンパクトに収納できる形になっており、平成9年の発売以来、すでに4万本以上の納入実績があるということです。

人工心臓模擬循環装置

また、大学院で人工心臓を研究してきた田中さんの知見をフルに生かし、東邦大学医療センターと連携して開発した製品に「Ozサイザー」があります。これは、心臓弁膜症の患者へ手術を行う際に、患者の大動脈弁尖の大きさを計測する器具。同製品は、その性能はもちろん、医療関係者と深い関係を築きつつ進めてきた開発スタイルも高く評価され、2011年に公益財団法人大田区産業振興協会が主催する「大田区中小企業新製品・新技術コンクール」で優秀賞を獲得しています。

視覚障害者用の筆記具を使って絵を書く田中社長

さらに、多くの試行錯誤を重ねて生み出した製品の一つとして、視覚障害者用の筆記具「コンパクト型有線式触図筆ペン(ラピコ)」も紹介。これはみつろうで作ったインクを使用するペンで、書いた文字が紙の上で盛り上がる仕組みになっているため、文字の形を手で触って分かるようになっているもの。田中さんは、インクの素材としてみつろうを思いつくまで、また、それを形にするまでどのような苦労があったかを語りました。

次から次へと出てくるユニークな製品の数々に、研修員たちは驚きつつ、その実用性などについて質問を投げかけました。それに答えつつ、田中さんは「一貫性がないのが、当社の特長」と指摘。モノづくりの基本をしっかり押さえつつ、柔軟にものごとに取り組むことの重要性を強調しました。

研修の終了後、研修員の一人は「日本の生活水準が高いことは知っていたが、こうした製品を開発する際も、使用者への細やかな配慮を行っていることに驚いた」と述べました。また、研修員の一人で現在マッサージサロンの経営に携わっている女性は、今回の日本での研修について、「私は現在サービス業に携わっているが、どんなに疲れている時でも笑顔でお客様を迎えるなど、日本のサービスのレベルの高さは素晴らしいと思った。帰国したら、ぜひ当社のスタッフにも伝えたい」と熱く語りました。

今後の豊かな発展の可能性を秘めるウズベキスタン。そのカギを握る日本センターの研修員たちが、今回の研修を糧に自らのビジネスを発展させていくことが期待されます。