【研修レポート】「ノーブランドのブランド」の舞台裏をのぞく−キルギス日本センターの研修生が無印良品を見学

2014年4月10日

研修後は全員で写真

中央アジアにおいていち早く市場経済化に取り組みつつも、天然資源の乏しさなどから経済が伸び悩むキルギス。その一方で、起業を志すなどビジネスに対して熱意を抱く若者も多く出てきています。そうした同国の企業人を育成するキルギス日本センターのビジネスコースから選抜された10人の研修員が、3月3日に来日。15日までの2週間弱、関西や東京の企業などを見て回りました。

3月10日の朝10時。通勤ラッシュが過ぎ、静けさを取り戻した東京のJR有楽町駅。冬の名残の寒風が吹く中、研修生たちが向かったのは、「ノーブランド」「感じ良いくらしをリーズナブルに」を掲げる生活雑貨専門店『無印良品』の旗艦店である東京・有楽町店です。

無印良品を運営する株式会社良品計画は、国際協力機構(JICA)と共同でキルギス・イシククリ州において一村一品運動の支援に取り組むなど、キルギスにとって縁の深い企業です。そしてこの日、彼らを温かい笑顔で迎えてくれたのは、同支援事業を担当する生活雑貨部の増田明子さん。

無印のメッセージ「人類は温暖か」

増田さんの案内で有楽町店に一歩足を踏み入れると、「人類は温暖か」という企業メッセージを載せたアルパカの写真が壁一面に広がっています。増田さんは、「地球温暖化に警鐘を鳴らしつつも人類と地球の『温もりのある関係』を築くことを訴える無印良品からのメッセージ」と説明しつつ、「当社では、店舗のデザインや商品の品質、陳列方法などによって、われわれの持つ世界観を伝えることを重視している」と語りました。

商品の並べ方にも、さまざまな工夫がある

続いて増田さんは、店内の陳列方法について説明。衣類や家具、小物のコーナーなどを回りつつ、「商品の使い方や素材の良さが伝わるよう、われわれは多様な工夫をしている」と語りました。「たとえば、家具のそばにはその使い方を示した雑誌を置いたり、お皿などは同じ素材のものを一カ所にそろえ、小さいものから大きいものへ順番に配列している」。なお、ブランドとしての統一感を出すため、全ての店舗で商品を同様に陳列できるようマニュアルも作成しているということです。

店内を見学中、研修員の一人が「無印良品は自社工場を持っているのか」と質問。増田さんは「当社はデザインと販売のみを行っており、生産は外部に委託している」と述べつつ、「われわれは委託先の工場への視察や指導を欠かさず行うとともに、『良品基準』という独自の品質基準を設け、これをクリアしていない製品は販売しないようにしている」と強調しました。

続いて研修員たちは、在庫商品を管理している倉庫に案内されました。さまざまな管理表が貼られ、少ないスペースに多くの商品を収納している倉庫の様子を見て、「5Sなどの取組みが、このような形で生きているのか」と、研修員たちは感嘆の声を上げました。忙しく立ち回る店舗スタッフたちから笑顔の挨拶を受けながら、彼らは倉庫内の休憩スペースに腰を下ろしました。

新井さんと質疑応答

ここで登場したのは、有楽町店の店長として約230人のスタッフを束ねる新井真人さん。新井さんは、これまでイタリアやフランス、ドバイなどで駐在所長を務めるなど、豊かな国際経験と経営の知識を持っています。「皆さんの疑問に何でもお答えします」とする新井さんに対して、研修員たちは次々と質問を投げ掛けました。

まず、「在庫管理はどのようにやっているのか」という問いに対して、新井さんは「各商品の販売数をデータ管理し、不足分を自動的に発注するITシステムを活用している」と答えました。ここで、今回の研修をアレンジした公益財団法人太平洋人材交流センターの奥村玲美さんは、「こうした一見ハイテクな在庫管理システムは、実はシステムを構築したエンジニアや、届いた商品の管理・陳列などに日々汗を流している店舗スタッフなど、『人』の力に支えられていることも忘れないでほしい」と補足しました。

さらに、「無印良品は『ノーブランド』をうたっているが、ブランドロゴがないと簡単にニセモノが作られてしまうのでは」という質問に対して、新井さんは微笑みつつ、「無印良品の商品はシンプルなように見えて、お客さまの使い勝手を考えたさまざまな工夫が込められている。たとえば、当社で販売している時計を取ってみても、このようなスムーズな針の動きは簡単に真似できない」と答えました。

その後、新井さんは、同社のスタッフ教育について説明しました。「当社では、どの店舗においても最適な形で業務改善ができるよう、『MUJIGRAM』という店舗運営のマニュアルを作成し、全店舗で共有している。そして朝礼を通して、スタッフに浸透を図っている」ということです。その後、実際に同店の朝礼を見学しましたが、スタッフたちが「ウイスキー」と声を出して笑顔をつくるなど、お客さまへの挨拶の練習の様子を目の当たりにして、研修員の一人は、「日本の小売業のハイレベルな接客の裏側にはこんな工夫があるのか」と驚きの声を漏らしました。

キルギスの一村一品運動で創られた雑貨を置いているコーナー

研修後、研修員たちは「シンプルなデザインの商品、そして『ノーブランド』をコンセプトに事業展開するといった独特の取組みが非常に印象的だった」「キルギスで作られた商品が東京で売られていて、嬉しかった」とさまざまな感想を述べました。

独自の理念を掲げ、世界の市場を開拓してきた無印良品。キルギスの将来を担う研修員たちが、その熱い思いを学び、今後の同国の未来を切り拓いていくことが期待されます。