日商簿記啓発セミナーが開催されました−ミャンマー日本センター

2015年11月12日

会場には約190名の方が参加されました

2015年10月31日(土)、日商簿記啓発セミナー・意見交換会がインヤレイクホテルの会場にて行われ、約190名の方々が参加されました。本セミナーはミャンマー商工会議所連盟(UMFCCI)が主催し、共催としてJICA、日本商工会議所(JCCI)、ミャンマー日本商工会議所(JCCM)、日緬協会(JMA)、ミャンマー日本人材開発センター(MJC)、そして後援としてJETROヤンゴンにより実施されました。

本セミナーの主な目的は、日商簿記の特徴とミャンマーの経済発展における有用性や可能性を参加者と共有し、理解の促進を図るものであり、また日商簿記のミャンマーでの普及について意見交換を行うものです。本セミナーでは6名の発表者が各々の観点から簿記の必要性と日商簿記の特徴などを説明し、意見交換を行いました。

Win Aung会頭(UMFCCI)

仙谷副会長(日緬協会)

冒頭挨拶では、まずUMFCCIのWin Aung会頭から、簿記の重要性そしてその人材育成の必要性を訴える今回のセミナーはミャンマーにとって有意義であることが述べられました。また、これまでミャンマーの経済発展、民主化の過程の中で日本ミャンマー協会、渡辺会長、仙谷副会長、日本の外務省そしてJICAからの支援を得てきたことにも触れ、今後、様々な日本企業の進出がある中で、産業人材育成への要請も更に高まるため、互いに協力していきたい旨が述べられました。

日緬協会の仙谷副会長からは、ミャンマーの発展は第2のステージに入ったと感じており、日本の近代化がそうであったように、働く人の能力やスキルを向上させることが肝要だと訴えました。企業経営においては数字をしっかりと記録するということも大切であり、日本の近代化の過程では複式簿記を用いた健全な企業発展を目的として日商簿記が普及してきた経緯を説明され、ミャンマーの健全な経済発展のためにも、特に若い方々がこのような資格を取り、企業の役に立ってほしいと訴えました。

泉上席推進役(三井住友銀行)

岩崎事業部長(日本商工会議所)

その後、基調講演として三井住友銀行のアジア・大洋州統括部、上席推進役の泉氏から「ミャンマーの経済開発における簿記・会計能力の向上の重要性について」を説明されました。泉氏は、銀行が企業を審査する視点から、わかりやすく説明されました。共通のルールに基づき、また数字をもとに客観的な経営状態を示す企業の財務諸表の作成は今後ミャンマー企業が更なる発展をするためには必要不可欠であることを訴えました。

日本商工会議所(JCCI)事業部長の岩崎氏からは「日商簿記の概要・特徴とその有用性について」説明されました。岩崎氏は日本の経済発展を支えるために貢献してきた簿記のスキルを有する人材の歴史とその人材育成のための教育システムを紹介されました。また、特に日商簿記検定しくみや受験者の構成などについて紹介するとともに、日本企業に求められる人材のスキルとして日商簿記が多くの企業に定着していることを説明されました。

向山講師(MJC)

栗原所長代理(三菱商事ヤンゴン)

公認会計士でありMJCの講師でもある向山氏からは「日商簿記とLCCI簿記との違い、日商簿記の優位点」と題して、日商簿記は企業規模とその発展に応じた形で段階的にレベルが設定していることなどを特徴として、わかりやすい図をもとに説明され、あくまでも仕事場で役立てることを志向した内容となっていることを説明しました。

三菱商事ヤンゴン駐在事務所の栗原所長代理からは「日系企業が直面している簿記・会計の課題、人材育成の必要性」を説明されました。日商簿記で勉強できるような原価計算は今後ティラワ工業団地ができることもあり、その必要性は高まることが予想されると述べられました。また、簿記のみならず内部統制も理解し、財務諸表の正確性や透明性の確保のための業務上での改善、さらにはそうしたシステムを考案できる人も求められてくるだろうとのことでした。ミャンマー企業については、現状では信頼できる財務諸表が作成されておらず、財務情報が提供されないケースが珍しくなくないため、その企業の実態が把握しにくい点があげられ、それが外資との提携などにおいて制約になっている可能性も考えられるとのことでした。

U Aung Nyunt氏(財務コンサルタント)

金丸チーフアドバイザー(MJC)

ミャンマー側からは財務コンサルタントのU Aung Nyunt氏から「ミャンマーにおける簿記人材の必要性」として、ミャンマーにてこれまで導入されてきた様々な簿記、会計に関する資格や教育体系の歴史などを説明されました。またU Aung Nyunt氏からは日商簿記がミャンマーに展開していくにあたり、教材や日本の会計ソフトの英語化の必要性、すでに普及している英国式の簿記資格との競合などをあげられました。

ミャンマー日本人材開発センター(MJC)のチーフアドバイザーである金丸氏からは「日商簿記 試行コースについて」が紹介されました。MJCでは今後、日商簿記の普及に向けて様々な関係機関や企業との連携のもと、現地講師の育成研修を行った上で、日商簿記3級コースと試験を試行的に行う計画を発表されました。

質疑応答の様子

意見交換・質疑応答では、大手会計事務所の方より「当社の社員(英国式簿記資格の保持者)に日商簿記のテストを受けてもらったが、3級は全員合格したものの満点ではなかった。2級は誰もパスできなかった。特に原価計算についてはよく知らなかったようだ」と日商簿記の特徴を実際の実例をもとに説明して頂きました。その他「日商簿記資格は日本の会社で働くにおいて必要なのか?」という質問に対しては「日商簿記資格がなくても勤められるが、日本式のものを学ぼうという意欲も評価できるため、日商簿記資格を持っていれば日系企業で働くにおいては有利と言えるだろう」と栗原氏から回答されました。また「現在、私はLCCI資格(英国式簿記資格)を持っているが、日商簿記も取った方がよいのだろうか?」という質問に対しては「LCCI資格を取っていれば、必ずしも日商簿記を取った方が良いというわけでもない。むしろ会社側が雇用したいと思う人材、それが日商簿記資格を持つ人材であったら、持っていた方が良いだろう。この点は、会社側の求めるところによるだろう。」と回答されました。

中澤所長(JICAミャンマー事務所)

最後にJICAミャンマー事務所の中澤所長より、今後、ミャンマーではティラワ工業団地が稼働することもあり、より多くの日系企業が進出してくることが予想されること、特に製造業関連では日商簿記との親和性もあり、日系企業の進出に応じて日商簿記資格への要請も高まっていくこと、またミャンマー企業においても健全な企業発展において必要不可欠である財務諸表がしっかりと作成されることが求められていることが述べられ、本セミナーがこれら必要性を啓発する機会となれば幸いであると、閉会の挨拶で強調されました。また、日本の経済発展の過程の中では、多くの若い方が簿記を勉強し企業の成長を支えて来たことを述べられ、ミャンマーでもそのような人材育成の必要性が高まることへの期待を述べられました。