ベトナム日本センター 経営塾フォローアップセミナー −BSC導入の経験をハイエン社から学ぶ−

2015年12月25日

関係者全員での記念写真

ベトナム日本人材協力センター(VJCC-ハノイ)では企業の経営管理者を育成する長期コース(経営塾)を実施していますが、12月12日(土)、第7期経営塾の2回目のフォローアップセミナーが開催されました。フォローアップセミナーとは、経営塾の修了生の企業を訪問し、経営塾で学んだことを実際にどの様に適用しているか、他社の経験を学び、自社での実施に役立てるものです。今回は業務用厨房機器を製造しているハイエン社に、第7期受講生と元受講生を合わせた約50名が訪問し、同社のバランススコアカード(BSC)導入について学びました。

同社のラン・アイン社長は、第3期経営塾の修了生。経営塾で学んだことを生かし、それまでの経験と感覚による経営から、戦略に基づいた経営へと変化させました。その結果として同社は順調に発展しましたが、更なる飛躍を目指し、2014年にBSCの導入に踏み切りました。

プレゼンテーションするラン・アイン社長

BSCとは、企業のもつ重要な要素(4つの視点:財務・顧客・業務プロセス・学習と成長))が企業のビジョン・戦略にどのように影響し業績に現れているのかを可視化するための業績評価手法です。

それぞれの要素に対して、数個の評価尺度とその目標値(KPI: Key Performance Indicator)を設定します。まず、同社はBSCの導入にあたり、外部のコンサルタントを雇いました。その際集めた自社の情報はA4用紙100枚にものぼり、自社の強みと弱みが分析できたと言います。目標を1.サービスと品質改善による競争力強化、2.流通チャンネルの拡大とし導入を始めましたが、当初は社内に理解がなく協力を得られませんでした。そこで、中間管理職を1週間集中的に教育したところ、BSCの意義が理解され、積極的に行動するようになったと言います。また、社内全体で取り組むことにより、スタッフのモーティベーションアップにもつながったといいます。

「BSCは飛行機のコックピットのようなもの。行き先が明確に示され、どこに向かっているのかはっきりする。色々な失敗があったが、BSCを始めてから会社の発展が速い。」とラン・アイン社長は語ります。また導入の成果として、「スタッフが自ら考えるようになり、全社一丸で問題解決にあたるようになった。」とも語りました。好きな言葉は、”Where work is made, mistakes are made.”と語るラン・アイン社長から挑戦者の強い意志を感じました。

プレゼンテーションするViet Vuon社代表

経営塾第2期から6期まで参加しているメッキ及び機械部品製造のViet Vuon社もBSCを導入しており、その経験について発表しました。導入に際しては、「経営者のやる気とスタッフへの集中トレーニングが必要であり、やりやすいものからやっていくのが良い」とし、今後の課題としては、「スタッフ個人のKPIにも取り組んでいきたい。」と語りました。

コメントする河口JICA専門家

経営塾で長年講師を務め、今回のフォローアップセミナーに同行したJICA専門家の河口真一郎氏は、「BSCは経営戦略を実施に移す際のひとつの道具として活用するもの。4年前から経営塾で教え始めたが、当時はまだ導入する会社はほとんどなかった。今日2社の発表を聞いて、2社ともに、非常によくP(計画)⇒D(実行)⇒C(チェック)ができていると感じた。今後いかにA(アクション)を取っていくかが重要となってくる。色々な問題にぶつかるかと思うが、今後も課題を皆に共有して欲しい。また、企業のKPIと個人のKPIをつなげ、人事管理や給与、賞与等とリンクさせることができれば、スタッフのモーティベーションもあがる。それがBSC導入成功の鍵となる。」とアドバイスを送りました。