VJCC(ハノイ・ホーチミン)第8期経営塾〜実商品の生産活動の体験を通して、日本式“MONOZUKURI”と“ムダ取り”を体験する〜

2017年6月28日

 2017年5月8〜12日(第1グループ)・15〜19日(第2グループ)、タンロン工業団地のPanasonic Vietnam内にある「モノづくり大学校」において、第8期経営塾(ハノイ・ホーチミン)の「日本式モノづくり」に関する講義および模擬生産ラインを用いた実商品の生産活動の体験を通して「日本式モノづくり」と「ムダ取り」のを学ぶ演習が行われました。
 
 経営塾は「ベトナム日本人材開発インスティチュート(以下、VJCCインスティチュート)」が実施する長期研修コースです。ベトナムの経営者を対象としており、日本式経営のノウハウを10か月間で実践的に学びます。そのコースの一環である本研修では、(1)現場を一目見てムダが発見できる、(2)生産活動における不具合を発見し、即座に改善できる、(3)実施した改善策を経営効果に結びつけることができる、という3つの「問題発見・改善能力」を養うことを目的としています。

VJCCインスティチュート ヒエン所長

 
 
 初日には、VJCCインスティチュートのヒエン所長から、「この研修は、いわば“経営塾のミソ”。限られた時間の中で、いかに目標を達成するか、実際のモノづくりの現場を肌で感じることができる非常に充実した内容です。塾生の皆さん、5日間頑張ってください。」と挨拶があり、5日間にわたる研修がスタートしました。

清水講師の講義の様子

製品の組み立て指導の様子

模擬生産ラインでの生産活動

平田講師による改善指導

 
 長年経営塾で本研修を指導する清水講師の「日本式モノづくり」に関する講義では、企業経営の目的として「To bring up a person(人を育てるため)」と「To continue(存続のため)」の2つを挙げ、「モノづくりは“人”。彼らが技術や商品を作っていくことで、企業は存続していく」と説明がありました。また、モノづくりは“ゼロから新たにつくる”のではなく、“あるものをいかに効率的に用いるか”がポイントと説明。そして、5日間の研修を通して、モノづくりにおけるマネジメントの要である「P (Productivity:生産性)、 Q (Quality:品質) 、C (Cost:原価) 、D (Delivery:納期) 、S (Safety:安全性) 、M (Morale:モラル) 、E (Environment:環境)」をぜひ学んでほしいと語りました。


 同じく長年にわたって本研修の指導を行う平田講師による「ムダ削減演習」では、塾生たちが工場長、ミズスマシ(部品供給者)、作業者、ビデオ撮影・分析者、作業改善者などの役割に分かれ、模擬生産ラインにおいて実際に生産活動を行います。


 そして、製造工程のムダを発見し、より速く効率的に生産ができるように改善することを通して、(1)生産性の向上、(2)リードタイム(全ての工程を完了するまでにかかる時間)の短縮、(3)キャッシュフロー・利益の改善というミッションの達成、そして、「ジャストインタイム生産方式(必要なものを、必要な時に、必要な分だけ生産する)」の実現を目指すものです。

1.塾生が実施した改善

2.塾生が実施した改善

  塾生たちは生産活動の中で見つけたムダの改善・効率化をはかるべく、ローラーを筒に入れて取り出しやすくする(写真1)、部品を取り出しやすいように、仕切りで分けて均一に並べる(写真2)など模擬生産ラインに様々な工夫が施されました。
 
 塾生が施した改善をふまえ、清水講師・平田講師から「荷姿(出荷予定の梱包された商品の外見)を考えるよりも、作業の効率化を優先すべき」、「模擬生産ラインでの片付けができていないので部品不足が発生し、製品が不良品かどうかの判別もつかない」、「“どうすれば作業者がよりよい作業をできるのか”を第一に考えて改善をすべき」などの熱い改善指導が行われました。

  最終日には、5日間の成果発表が行われ、「模擬生産ライン演習で学んだこと」および塾生それぞれの「今後に向けての決意表明」が共有されました。5日間の研修を振り返って、第1グループで工場長を務めた第8期経営塾(ハノイ)の塾生のフィンさんは「自分の工場を経営しているが、生産に携わったことがなかったのでとても難しかった。しかし、実際に生産やムダ取りを経験できたこと、そして、工場長として1つの目標に向かって皆を動かすという経験ができてよかった。これから自社の工場でも学んだことを活用していきたい」と笑顔で語りました。

コメントする平田講師

 
 塾生の発表を受けて、平田講師は「皆さんが今回学んだ知識は、実際の現場で何度も実践することでノウハウとして身につきます。改善が成功するまで挑戦し続けることが大切です」とコメント。現場で改善を行う上で、(1)一度に多くのことをしない、(2)“部分最適”でよい、(3)「今、自分ができる改善は何か」を考える、という3つを心がける点として挙げ、巧(こう)遅(ち)拙(せっ)速(そく)(時間をかけて良いものを作るより、多少出来が悪くても迅速である方が良い)であっても「まずやってみること」の繰り返しが重要と強調しました。

コメントする清水講師

 清水講師は「皆さんは来週から演習ではなく、真剣勝負の現場で改善をすることになります。5日間で学び、感じたことを自社の改善に活用してほしい」とコメント。また、「皆さんは経営者として、社員と共に様々な人々の思いを展開します。しかし、経営者の思いが社員に伝わっているか、また、どのように伝えるかは非常に難しい問題です。皆さんも諦めずに自分の熱い思いを発信し続けてほしい。」と、自身の工場長としての経験も交えて塾生にエールを送りました。

 
 製造業にとどまらず、あらゆる分野のベトナム企業で活躍する塾生たちが、日本が誇る「モノづくり」の現場を実際に体験することができた実りの多い研修になりました。

【画像】

第1グループ(5月8日〜12日)の全体写真

【画像】

第2グループ(5月15日〜19日)の全体写真