経営塾修了企業 HANEL PTがブラザーと契約!~「ものをつくる前に人をつくれ」を実践~

2018年5月14日

Trang社長

 ベトナム日本人材開発インスティチュートが実施している経営塾(経営者育成のための長期研修コース)第5期修了生のMs.Tran Thu Trangが社長を務めるHanel PT社は、ブラザーインダストリーズベトナムと、プリンターの基盤組付けにかかる業務契約を締結するに至りました。契約の締結は、2018年4月。既に、第1回の納品は終了しています。

 プリンターには様々な基盤が使用されており、それらは人間で例えるなら、脳のようなもの。その重要な部分をブラザー工業が経験のない現地企業に委託するのは過去に例がないとのことです。ブラザー工業もベトナムでの工場設立以来、基盤の製造はベトナムの日系企業に依頼してきましたが、更なる現地化を目指し、現地企業からの調達を探っていました。

 HANEL PT社は、2000年に設立され、カメラ・電話機・自動車等の電子部品を製造してきました。製品は100%輸出されており、95%が日本、5%が台湾と香港向けです。今までプリンター基盤製造の経験がなく設備投資も必要であったため、Trang社長はこの業務を受けるかどうかに迷いもありましたが、「やってみたい」というスタッフの言葉に後押しされました。

改善チーム活動の貼り出し

 契約に至る過程は困難なものでしたが、決め手はTrang社長が日本から来たブラザー幹部に対するプレゼンでした。自社の売り込みよりも、いかにして同社で人材育成を行っているか、「社員一人ひとりの質が高くなければ製品の質も高くならない」と語り、ブラザー工業の心を掴みました。ブラザー工業は、プレゼン直後に同社との契約の推進を決めたそうですが、工場を見学し、5Sや改善チーム活動の貼りだしを見て、さらに信頼が増したようです。

 Trang社長は、経営塾について、「経営塾に参加して本当に良かった。日本人講師の方から、日本の企業文化や5S、人材育成、など日本企業の価値観を学ぶことができた。」と語ります。「良い製品とサービスを提供するのは企業の社会的責任。それを果たすには"ものを作る前に人をつくれ"です。」というTrang社長の価値観は、経営塾で培われました。

 具体的にどのように人材育成をしているかについては、まず採用に関しては、欲しい人材の像を明確にし、採用した後は、どうやって定着させ、会社に貢献してもらうかを考えています。近隣に大手企業もあり、人材の確保はそう容易ではありません。採用後の研修は、長期的な観点から計画的に実施しているとのこと。また、仕事に役立つかどうかを基準に、研修費用の支援も実施しています。評価については、目標の達成度を測るツールとしてKPIを導入しています。3か月に一度、目標、進捗状況、取り組みを全員の前で発表することを義務付けています。

家族写真を掲載している“Happy Corner”

 全社的なスローガン募集を実施し、優秀賞は大きくして誰もが目につくよう掲示するなど、働く環境やモティベーションの向上にも努めています。また、会社はファミリーと考え、スタッフの家族写真を貼るコーナーを作ったり、スタッフの子どもの企業訪問の日を設けるなど、スタッフの幸福度を上げる配慮も欠かしません。 

 強力なリーダーシップを感じさせるTrang社長ですが、10名いる中間管理職の中から、キーパーソンを選び、権限の委譲を進めています。また、そのキーパーソンのバックアップ体制にも抜かりはありません。何事にも絶対ということはないので、早目の対応が大切とのこと。中間管理職に対しては、誠実な対話を心がけ、3~6か月に一度はボーナスを出している他、生命保険を手当する仕組みもあります。
 「この会社は、私がいなくなっても大丈夫。やっていける。」とTrang社長は語ります。

 ブラザー工業からは、第1回目目の納入(2品目)が終わるまえに、更なる19品目の見積り依頼が届いたとのこと。しかし、Trang社長は慎重です。「急激な拡大は質を落とす。いいものを提供して、徐々に業務を拡大していきたい。」と語っています。

 新規事業を開拓し、順調なスタートを切ったHanel PT社。今後どんな飛躍を遂げるのか楽しみです。

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