経営塾12期生がCOSMOS社を訪問

2019年4月26日

COSMOS社にて、副社長・河口講師を囲んで記念撮影

 2019年4月19日、経営塾(※)第12期生15名が、第6回目の講義「経営戦略Ⅱ実践編—KPI(重要業績評価指標)による企業の業績管理戦略」の一環として河口講師と共に、塾生の経営するCOSMOS社を訪問しました。

 COSMOS社は金属部品の製造や鋳型設計を行う有限会社で、2005年に設立されました。従業員20名による小規模な部品製造から始め、現在は、総資本が約2800万USドル(民間資本100%)、従業員数が約1750名に上るまで成長しています。2007年にホンダ・ベトナムの監査を受け、翌年から二輪車の部品の受注ができるようになり、現在は製品の95%をホンダに提供しています。2014年にはホンダへの部品供給者のトップ10入りを果たし、同社からOutstanding Quality Supplier AwardやOutstanding Delivery Supplier Awardを受賞しています。

 ホンダからの受注が増えた背景として、2000年代後半に安価な中国製二輪車が販売され、ホンダによる部品の輸入代替(現地調達を増やす)戦略の追い風に乗ったことと共に、COSMOS社の徹底した品質や納期に対する管理が上げられます。アン副社長は、「売上が拡大する中、新たな環境に対応するため、経営戦略や人事管理の見直しが必要となり経営塾参加を決めた」と述べています。河口講師の「経営戦略Ⅱ理論編」で学んだ内容を持ち帰り、即座に会社幹部と協議し、スピード感を持った現場への適用が図られています。例えば、会社ビジョンを二輪車の枠を超え幅広い機械製品をターゲットとする「ベトナムの機械部品メーカーのトップとなる」へ見直し、戦略マップの導入と共に各部門の年間/月間行動計画に落とし込み、見える化が図られています。さらに計画と連動した従業員への加点方式の人事評価を行っています。

工場内での金属部品製造の様子

 企業見学では、まず企業の概要についてプレゼンテーションが行われ、その後工場内を見学しました。倉庫の在庫管理では、コンピュータの計算ソフトや掲示板を用いて見える化することにより、在庫の無駄を省く工夫がされていました。製造過程(溶接と圧縮)の融合による工場の敷地・人件費の節約や、人工知能を取り入れた3Dロボットの導入もなされていました。

 工場見学の後には意見交換や質疑応答の時間が設けられ、受講生からは「品質や在庫の管理が徹底していて感銘を受けた。」「KPIに基づいた計画的な行動戦略を是非参考にしたい。」などの意見が多数寄せられました。質疑応答では「これから社会は自動車化していくが、二輪車部品の製造量をどう調整していくのか。」という問いに対して、「二輪車の利用者は今後5年は増えるが、その後の5年は分からない。よってビジョンを二輪車からより幅広くすそ野産業を支える部品供給メーカーへと捉えなおした。今後は、状況に応じて取引先を開拓していく予定だ。」との回答がありました。また「従業員に課題図書を与えチームで読んで-考え-教え合う読書会」を導入し、効果を上げている事例が紹介されました。

 河口講師からは、「トップダウンの戦略的KPIという垂直方向だけでなく、部門及び部門間の小集団活動を取り入れたKPIを設定するなど水平方向にも配慮がなされ、現場との連携を大切にし従業員のコミットメントが引き出されている。」「加点式の人事評価を導入し、従業員への教育にも力を入れている。」などと賛辞の言葉が送られました。また、受講生に向けては「経営者と幹部の間だけでなく従業員とのコミュニケーションが重要。」「KPIを個人に落とし込む際、数値による評価だけでは従業員がついてきてくれない。したがって従業員の士気を高めるような、意欲や能力などの人間味を重視したKPIの設定が必要。」との講評をされました。

 経営塾の参加企業は、製造業が中心ですが、従業員や売上規模、また設立年度などバラつきがあります。各企業とも日本式経営で学んだ内容を現場に適用させ、品質を高め納期を徹底し日本企業との取引を目指しています。COSMOS社のように既にホンダから信頼を得ている企業が加わることにより、お互いの学びが促進され、相乗効果が上がっています。VJCCは、これからも経営塾を通じてベトナム及び日本の企業が双方にWin Winとなる関係構築を目指していきます。


(※)経営塾とは2009年に開始された日本式経営の研修で、月5日間、9時から16時半まで6時間の授業及び実践を10か月にわたり実施するプログラム。人数は30人、現在はハノイ2、ホーチミン1、ハイフォン1の計4コースが実施されている。