第30回ビジネス・フォローアップ・セミナーの開催

2019年6月7日

経営塾銘板の除幕式の様子

TPA社へ認定賞授与

 2019年6月1日、経営塾(※)の同窓会組織である経営塾クラブとベトナム日本人材開発インスティチュート(以下VJCC)の共催により、ビジネス・フォローアップ・セミナー(以下BFS)が開催されました。BFSとは、経営塾の修了生や現受講生が講師と共に修了生の企業を視察し、経営に関する情報共有や意見交換を通して学びを深める場です。今年は、経営塾10周年であることから、より結束力を高めるため、先週のTOMECO社に続き連続した実施となりました。

 2014年から開始され30回目にあたる今回のBFSは、経営塾第10期修了生のThuong氏が社長を務めるTPA社にて開催され、JICA専門家の杉浦講師、VJCCで比較文化を教えられている佐藤講師、一般社団法人マネジメント・プログレス推進協会(MPA)の小林講師をはじめとする約40名が一堂に会しました。TPA社は昨年9月に、七十七銀行の頭取視察団を受け入れた企業です。

 はじめに、経営塾のロゴが刻まれた銘板の除幕式が行われました。同銘板は、VJCCにて日本式経営を学び実践している証を示すために作成され、このロゴを展示会等で掲示することにより他社との差別化を図ったり、日系企業にアピールしたりすることが期待できます。銘板を自社の看板として設置するのはTPA社が5番目となります。銘板は会議室の壁に掛けられ、経営塾クラブ幹部と共に除幕され皆でその設置を祝いました。

杉浦講師

佐藤講師

小林講師

 そして、Thuong社長からTPA社についての説明がありました。同社は2006年に創立された工場用機械の製造企業で、従業員は現在約240名です。供給先は自動車工場から生活用品の製造工場に至るまで多岐にわたり、近年は大学などの実習で用いるトレーニング用の機械の生産も行っています。同社は経営塾で学んだことを活かし、SBU(戦略事業単位)を導入して組織モデルを変更したり、従業員教育に力を入れるため内部教育部門を設けたりなどの改善を行いました。また、日本式経営に基づき、生産管理・報連相・目標計画の見える化などを重視した経営を行った結果、現在日系企業10社との取り引きが成立し、売上は昨年から3割増加しました。現在は、顧客と従業員からの信頼を得ることを第一に、更なる発展を目指して取り組んでいます。

 その後、「日本のビジネス文化と経営戦略の理解」をテーマに3名の講師の方々による講演が行われました。

 杉浦講師のテーマは「事業ドメインを極めるポジショニング」です。ポジショニングは事業の方向性を見極める中で、競合他社との差別化を明確に位置付ける軸を考えることと強調されました。この軸は最も強みを際立たせる一点に絞り込むことが肝要で、一点集中戦略で他社に勝てるポジションを確立し、そのうえで拡大展開の戦略が効果的と指摘されました。

 佐藤講師のテーマは「経営に生かす比較文化 ベトナムと日本」です。他国籍の人と仕事をする際、言語よりも価値観の違いの方が支障をきたしやすいというデータに基づき、経営を行う上での異文化理解の必要性を指摘されました。日越の文化を比較するとともに、日本人の気質として、長期的な視点で物事を捉える、競争主義、不確実性を嫌う、などの特徴を取り上げ、日系企業との取引においてこれらを理解しておくことがビジネスの成功につながる、と述べられました。

 小林講師のテーマは「データに基づく経営」です。多くのベトナム企業が、納期の予測や注文商品の見積計算ができていない実態から、各工程におけるデータ管理の重要性を指摘されました。各工作機械を何時間使用したか、従業員がそれを用いて何時間作業したか、などの分析が必要となること、それらはIT技術の発達によってで比較的安価に導入できることなどを説明されました。VJCC はMPAとの協力により短期のビジネスコースの実施も予定しています。

講義の様子

工場見学の様子

講師の方々を囲んで記念撮影

 講義の後は、Thuong社長が工場内を案内して下さいました。Factory Automation Solution (FAS)の機能が付加された大型機械から生活用品を製造する小型機械まで、あらゆる製品の製造現場を見学しました。工場の至る所に設置されている掲示板には月毎の目標計画や報連相についての掲示がされており、見える化の実現が図られていました。今回のBFSで得た知識を活かし経営戦略に取り入れることで、自社のさらなる強みを確立できるようになることが期待されます。

 経営塾修了後にもこのような学びの場を設けることで、日本式経営の実践に磨きをかけ、VJCCそして経営塾クラブの企業同士の繋がりを深め、さらに日本企業との取り引きが増えることを目指しています。



(※)経営塾とは、ベトナム産業界を牽引する経営者育成のための日本式経営の研修。企業経営者や幹部を対象に、月5日間の授業及び実践を10か月にわたり実施するプログラム。