国際緊急援助隊医療チーム 医療調整員として活動して

中田 敬司 Keiji Nakata

東亜大学医療工学部 救急救命コース准教授、日本医科大学大学院医学研究科、JDR医療チーム総合調整部会研修実施検討会メンバー 中級研修実施検討会 ロジスティックス班班長 ミッションマネージメント班班員

1999年コロンビア地震を皮切りに、同年のトルコ地震、台湾地震、2003年イラン地震、2004年スリランカ津波災害のJDR医療 チームに医療調整員として派遣。2005年JICA災害セミナー(大阪)で座長。またHuMA(特定非営利活動法人 災害人道医療支援会)においても活躍の場を広げ、2007年JICA災害セミナー(ジャカルタ)においてHuMAの活動発表を行ったほか、2007年には 同会が実施したジョグジャカルタ災害援助活動の事後評価を現地で行った。広島県広島市在住。

JDR救助チームから医療チーム登録へ

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イラン地震診療活動・現地スタッフと共に(左手手前から二人目が筆者)

私は以前広島市消防局で消防航空救助隊員として消防ヘリを使用した救助・消防活動に従事し、同時に国際消防救助隊(IRT−JF・JDR救助チーム登録) のメンバーとして様々な救助訓練を実施していました。ある時、私はもっと幅広く災害救援にかかわる仕事をしていこうと思い、消防局を退職することになりま した。その際に上司から「災害現場では速やかな救助から医療への展開が重要だ。救助・消防・救急活動を熟知している君の能力が将来JDR医療チームの役に 立つ日がくると思う」と言われ、この言葉が登録の大きなきっかけになりました。私は「消防での救助・救急の知識・経験を医療チームの中で発揮し国際災害救 援活動に関わっていこう」と決意し、0泊3日といわれる豊富な内容と熱い思いが溢れている導入研修(注1)を受講し正式登録となり、そして気がつけば過去 5回、医療チームとして災害救援に派遣されていました。

医療調整員としての活動

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イラン地震設営完了・診療活動開始

 JDR医療チームは災害で多くの犠牲者を出した国へ派遣されます。現地で通訳やドライバーと合流するので、チームは合計約40人のメンバー構成になります。

 まず現地で行うことは、私たちの活動する場所(サイト)の選定と生活場所の確保及びその環境整備です。それが整ったところで本格的な医療 活動の開始となります。1日にさまざまな症状を訴える100人を超える患者さんがわれわれの医療テントに訪れます。こうした活動の中で特に大切なことは、 いかに限られた期間・人員・医療資器材・医薬品を使ってより良い医療を提供できるか…ということ。チームメンバーは常にそのことを念頭において活動を展開 します。そして精一杯の活動を現地で繰り広げ帰国の途につくのです。

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スリランカ津波災害でのチームミーティング

ここでの医療調整員の仕事は多岐にわたります。主に受付・トリアージ(注2)・簡単な外科処置や医療行為の補助・後方病院搬送準備や手配・カルテ管理や入 力補助・不足医療器材や薬品の調達・チーム内のマネジメントやロジスティクス・公衆衛生上必要な調査・レポート作成や記録等です。一言で言えば、医療知識 を活かしてチーム全体の流れをしっかりと視ながら必要なサポートをタイミングよく実施する仕事といってもいいでしょう。特にイラン地震の救援活動では現地 の医師や通訳と相互に積極的なコミュニケーションが図られ、チーム内の通訳の配置、休息ローテーションなどチームのスムーズな活動を可能にしました。こう した国境を越えた人と人とのつながりや協力はまさにJDR活動の本質を感じさせるものでした。

今後医療チームのメンバーとして派遣される皆さんへ

派遣に際して最も重要なスキルといえるのは人間力、つまりはヒューマンスキルです。一言で言えば「人から好かれる能力」ともいえるかもしれません。そしてそれはすぐに身につくものではなく、毎日の職場生活や家庭生活の中で努力することが大切だと思います。

 特にJDR医療チームの場合は大変ストレスフルな環境下での活動となります。そうすると私たちは日頃の職場や生活の中で持っている自分自 身の思考パターンや行動や態度が活動の中で顕在化してきます。その場だけ取り繕おうとしても、過酷な現場はそれを浮き彫りにしてしまうといってもいいで しょう。だから日常が常に訓練であり研修と言っても過言ではありません。お互いに日々の小さな努力を積み重ねていきましょう。今後の皆さんの活躍を期待し ています。

(注1)導入研修・・・JDR医療チームの隊員として正式登録するために、参加が義務付けられている2泊3日の研修。海外の被災現場で必要 な知識や判断力を身に付けることを目標としている。JDRの概要やストレスマネジメントに関する講義、通信機器の使用方法に関する実習、派遣から帰国まで を想定したシミュレーション、模擬診療など、多用なプログラムが準備されている。 (注2)トリアージ・・・災害医療現場において、多数の傷病者を重症度と緊急性により優先順位をつける方法。