国際緊急援助隊専門家チーム 専門家チームとして派遣されて −フィリピン・ギマラス島沖における重油流出海難事故−

塩入 隆志 Takashi Shioiri

元海上保安庁警備救難部環境防災課専門官。

2006年フィリピン・ギマラス島沖における重油流出海難事故国際緊急援助隊専門家チームの一員として派遣される。千葉県柏市在住。

専門家チームの結成と派遣

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専門家チーム集合写真。右から3番目が筆者.

2006年8月11日、約2000キロリットルの重油を積んだタンカーがマニラから南東約500キロに位置するギマラス島沖で荒天により沈没しました。事 故発生直後に200キロリットルの重油が流出し、沈没した船体からの重油の流出が止まらず、流出した重油はギマラス島に漂着しました。
8月18日、フィリピン政府から日本政府に正式に援助要請が出され、それを受けて、海上保安庁の油流出事故への対応に関する知識と技術を有する機動防除隊 の隊長と隊員各1名、JICA職員1名、私の計4人で構成される専門家チームが結成され、22日早朝フィリピンに向けて出発しました。

専門家チームの任務と活動

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ギマラス島に漂着した油の状況

専門家チームの任務は、汚染状況の調査、フィリピン政府の対応の評価・助言であり、翌日23日早朝、対策本部が置かれているイロイロ市に入り、対策本部との協議、現地調査を開始しました。
現地の調査の結果、ギマラス島には大量の油が漂着していることを確認しました。また、回収された油が袋に入れられて野積みされており、そこから二次的な流 出が確認されました。ギマラス島は、海岸線はマングローブが群生し、島民の多くは漁業で生計を立てるなど、油流出事故に対して極めて脆弱な環境にあり、回 収した油を輸送するための道路等のインフラも十分ではありません。既に広範囲のマングローブ林が流出油で汚染されていましたが、沈没した船舶からの油の流 出は継続しており、大量の油が船内に残っているため、予断を許さない深刻な状況にありました。
被害の拡大の防止するためには、海上の流出油の状況を詳細かつ継続的に把握するとともに、海上の流出油に対して適切な対処を行う必要があります。そのた め、フィリピンコーストガード(PCG)の協力を得て、機動防除隊の隊員による航空機による調査・監視を行い、海上保安庁が採用している評価方法により、 油の厚さ等の詳細な分析を行うとともに、PCGが使用している油処理剤(油を分散する薬剤)有効性を確認するための分析を行いました。
調査の結果、海上における流出油は僅かではありますが減少の傾向にあること、海上における流出油に対して現時点の対応が概ね有効であること、回収した油を 適切に管理する必要があることが確認されたため、それを報告書として取り纏めフィリピン政府に報告したところ、専門家チームの活動を評価していただき、感 謝の言葉を頂くことができました。
専門家チームの任務が無事に終了できたのは、合同油防除訓練、JICAの協力による人材育成を通して、海上保安庁とPCGの信頼関係が構築されていたた め、PCGとの協議・協力を円滑に行えたことが大きな要因だと思います。諸外国と良好な協力関係を構築・維持することの重要性を今回の派遣を通して再認識 しました。

今後派遣される専門家チームの方へ

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調査のため搭乗する機動防除隊隊員。ヘリポートがないため、バスケットコートを応急的に活用した。

援助を必要としている国は大規模な事故、災害等により非常事態下にあり、専門家チームに対する期待も大きく、専門家チームの判断・発言に対する報道関係者などの関心も極めて高いと思います。
そのため、プレッシャーも大きいのですが、日頃から培っている経験を役立てることができる絶好の機会だと思います。厳しい状況に直面することもあると思いますが、頑張って下さい。