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調査・研究


国際協力研究 2002年4月 Vol.18 No.1 (通巻35号)論文

熱帯モンスーン圏における藻類を利用した水質浄化の可能性
-タイにおける安定化池の現地調査から-
Feasibility of Greywater reatment using Algal Growth in theTropical Monsoon Regions
-Field Surveys of Waste Stabilization Ponds in Thailand-

中本 信忠 Nobutada Nakamoto*
竹内 準一 Junichi Takeuchi**

(要約)

利用可能な化石エネルギー資源に限りがあることから、持続的な開発(sustainable devel-opment ) は開発途上国のみならず、すべての国が目標とすべき課題で、水質浄化もその例に漏れない。

タイでは独自の土壌浸透式便所を発達させてきたため、その下水は糞尿を含まないグレイウォーター(greywater )が基調である。 屋台などから発生した厨房廃水は新鮮な有機物であり、生分解性に優れている。熱帯圏の高水温条件下では自浄作用がいっそう促進されるので、 自然の生態系(natural ecosystem )の仕組みに近い手法を採用することで、低コスト・省エネルギーで水質浄化することが可能である。

安定化池(waste stabilization ponds )は電気エネルギーを使って空気を吹き込む代わりに、藻類の光合成による酸素の発生を廃水の浄化に利用している。 もともと藻類の発生を前提とした廃水処理法であるが、タイでは廃水の有機物濃度が非常に低いので、池が一次生産(primary production )の場となっている事例が多く見られた。

しかし、池を多段化したことで、段階的に浄化が進行し、窒素・リンが効率よく除去されている事例に遭遇した。 また、池内で漁獲している場合があり、廃水処理と水産養殖がリンクできる可能性も見られた。 さらに、池の容積を流入水量に対して小さく設計することで水流が生じ、植物プランクトンが発生する代わりに付着性の藻類(Cladophora ) が発生する。このような糸状性の藻類は網で簡単に回収できるうえ、脱水も容易なので栄養塩の回収を可能にする。 脱水した藻体はコンポスト化して肥料にすることが可能である。

以上のように、タイにおける安定化池の状況は問題点もある一方、大幅に改善できる見込みが認められた。 本稿では、環境に配慮した衛生処理(environmentally sound sanitation )の中で藻類を利用する水質浄化法の位置付けと実行可能性について考察する。

*元JICA 専門家、信州大学繊維学部教授
Former JICA Expert,Professor,Department of Applied Biology,Shinshu University,Japan
**元JICA 専門家、英国エセックス大学大学院生物科学科博士課程
Former JICA Expert,PhD Candidate,Department of Biology,University of Essex,UK

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