JICA緒方研究所

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宮崎卓研究員がフィリピン北部を現地調査、農村発展のメカニズムを探る

2012年1月5日

宮崎卓研究員は2011年12月1~6日、フィリピンを訪問し、ルソン北部のラウニオン州の農村で、農家所得についての現地調査をしました。今回の調査はJICA研究所の研究プロジェクト「フィリピン農村部における成長と貧困削減の実証研究」の一環ですが、このプロジェクトは、3つの州に跨る、計1,000以上の家計を対象とする調査を行い、分析をすることによって同国の農村の経済発展を阻む、あるいは促進する要因を地域ごとに特定し、貧困削減への具体的な処方箋を提示することが狙いです。2010年の調査を経て、データが出そろい、分析に取り組む中、フィリピン農村がその発展に際して以下の過程を辿っているのではないか、との仮説が浮上してきました。

 

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   写真提供:今村 健志朗/JICA
まず、フィリピン政府が選定する「農地改革対象コミュニティ」(ARC)で灌漑などのインフラが整備されることによって農家の所得が上昇する

 

→所得の増加、または農地改革の成果として入手した土地を質に入れることによって農民の教育投資は増加する

 

→教育を受けた次の世代が非農業部門への就業を選択する

 

→ARC内での農業分野での労働力が不足し、ARC内さらには外からの雇用が増え、選定されたARCの周囲にも開発効果が広がる(スピルオーバー効果)

 

一般に、開発のための資源は需要のごく一部しかカヴァーすることができません。従って広範な農村地域から、ピンポイント的、パイロット的に一部の地域を選定、開発のための様々な措置を集中していく、いわば「選択と集中」的なアプローチが採られる例が多く見られます。もしこうしたプロセスが現実に起こっているとすれば、「選択と集中」アプローチをとった場合でも、開発効果がその周囲に広がっていくメカニズムの一部を明らかにすることができます。

 

もちろん、データ上の仮説が農村の現実と合致していなければ意味がありません。そこで、今回の現地調査では、ラウニオン州のプソンとカシラガンという2つの村で、典型的な農家9家計を選定、インタビューすることを通じ、上記仮説の妥当性・現実性を確認したものです。

 

今回の現地調査を終えて宮崎研究員は「村落内及び村落間の農業労働にかかる出稼ぎネットワークが形成されていることが確認でき、実際に出稼ぎに参加した話も聞くことができた。これは仮説中の最後のステップ、即ちARC内外からの雇用増加を反映していると見ることができ、仮説は農村の現実とも合致しているとの強い印象を持った。」と話します。

 

宮崎研究員はまた、これらの仮説とこれまでの分析結果、及び今回の現地調査の結果について、現地の政策担当者・有識者と意見・情報交換し今後の分析に生かすため、首都マニラでテーマにワークショップを開催しました。

 

このワークショップでフィリピンの政策担当者側からは、上記仮説が現実に合致しているという印象と合わせて、農業開発が結果として労働力の非農業への流出を招いていることについての懸念が示されました。当方からは、こうした労働力のシフトは開発において必要なプロセスであること、及びこうしたシフトにより、従来土地を持っておらず労働に従事できなかった層も労働を通じて成長の果実を手にする可能性が高まる点に触れながら、特定セクターに視野を限定しない開発戦略が重要であると述べました。

日時2011年12月 1日(木) ~ 2011年12月 6日(火)
場所フィリピン



開催情報

開催日時2011年12月 1日(木)~2011年12月 6日(火)
開催場所フィリピン

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