都市インフラの社会経済的インパクト:山田研究員が分配効果や社会階層ごとの違いに着目する重要性を発表

2016年1月8日

2015年12月14~15日、パキスタンの首都イスラマバードで、「インフラプロジェクトの経済的・社会的インパクト:評価手法とケーススタディについてのワークショップ」が開催され、JICA研究所の山田英嗣研究員が、インドの地下鉄ネットワーク「デリーメトロ」に関する事例を発表しました。

このワークショップはアジア開発銀行研究所(ADBI)とパキスタンの「持続可能な開発政策研究所」(SDPI)主催で開かれました。ADBI、アジア開発銀行、日本、韓国、中国、マレーシア、パキスタンの研究者らが発表し、パキスタン、ネパール、スリランカ、バングラデシュ、ブータン、ミャンマー、モルディブから参加した実務者たちが耳を傾けました。

インドのデリーメトロ

山田研究員は、「都市インフラの社会経済的インパクト:デリーメトロを事例に」のテーマで発表。農村道路や農村電化など、農村インフラの計量経済学的なインパクト評価は近年蓄積されているものの、都市インフラの社会経済的なインパクトに関する定量的な分析はまだあまり行われていないこと、事業対象地域全体でのマクロな経済的効果だけでなく、ジェンダーやカーストなどをはじめ、異なる人々の間でどのように効果が異なっているのかに着目することが重要であることを指摘しました。

山田研究員が研究対象としたデリーメトロは、現在インドの首都デリーを中心に、190キロメートルの区間で運行。環状線などのさらなる整備が進んでいます。デリーメトロは、女性専用車の導入、バリアフリー設計、地下鉄内でのごみ廃棄禁止ルールの徹底による「クリーン」イメージの確立などで、誰でもが安全に利用できる市民の足として定着しています。このデリーメトロの建設は、JICAが計画段階から支援し、建設資金の融資も行っています。人口静態統計(センサス)を使った予備的分析では、デリーメトロへのアクセスと女性の職業参加に正の相関があることが示唆されており、山田研究員はこの結果などを紹介しました。

ワークショップの発表者ら

質疑応答では、プロジェクトが直接目的とした効果(都市交通であれば混雑解消など)以外の副次的効果をインパクト評価の対象とすることの意義について質問があり、山田研究員は「分配効果や社会階層ごとのインパクトの違いは、インフラ開発に合わせた追加的な施策や他のセクターの政策との補完性などを議論する際に重要な情報となる。また研究を通じて、なぜある効果(プラスだけではなく負の効果も含む)が発現したのか、そのメカニズムを示すことができれば、将来類似の事業を行う際のデザインに反映することができる」と説明しました。

そのほか、中国におけるインフラの所得分配効果についての発表などが行われました。ワークショップは、インフラの社会階層ごとのインパクトの違い、包摂的成長への影響について、参加者の意識を高めることにつながったと期待されます。出席者からも、「インフラが裨益者の日常生活にどのような影響を及ぼしたのかについて、ミクロなレベルで検証することは今後より重要になるのではないか」といったコメントがありました。