○技術協力に関する日本国政府とパキスタン・イスラム共和国政府との間の協定
(平成17年6月27日外務省告示第516号) |
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日本国政府及びパキスタン・イスラム共和国政府は、技術協力の促進を通じて両国間に存在する友好関係を一層強化することを希望し、また、両国の経済的及び社会的発展の促進によりもたらされる相互の利益を考慮して、次のとおり協定した。
第1条 両政府は、両国間の技術協力を促進するよう努力する。
第2条 この協定の下で実施される個別の技術協力計画を規律する別途の取決めが、両政府の権限のある当局間で合意される。日本国政府の権限のある当局は外務省であり、パキスタン・イスラム共和国政府の権限のある当局は経済・統計省(経済庁)である。
第3条 次の形態による技術協力が、独立行政法人国際協力機構(以下「JICA」という。)により、日本国の現行法令に従い、かつ、前条に規定する取決めに基づき、自己負担で行われることになる。
(a) | 技術訓練をパキスタン国民に提供すること。 |
(b) | 専門家をパキスタン・イスラム共和国に派遣すること(以下、派遣された専門家を「専門家」という。)。 |
(c) | 幅広い技術と豊かな経験を有する日本人ボランティア(以下「シニア海外ボランティア」という。)をパキスタン・イスラム共和国に派遣すること。 |
(d) | パキスタン・イスラム共和国の経済及び社会開発計画の調査を行うため、日本国の調査団(以下「調査団」という。)をパキスタン・イスラム共和国に派遣すること。 |
(e) | 設備、機械及び資材をパキスタン・イスラム共和国政府に供与すること。 |
(f) | 両政府間で相互の同意により決定するその他の形態の技術協力をパキスタン・イスラム共和国政府に対して行うこと。 |
第4条 パキスタン・イスラム共和国政府は、前条に規定する日本国の技術協力の結果としてパキスタン国民が取得した技術及び知識並びに供与された設備、機械及び資材がパキスタン・イスラム共和国の経済的及び社会的発展に寄与し、かつ、軍事目的に使用されないことを確保する。
第5条 JICAが専門家、シニア海外ボランティア及び調査団を派遣する場合には、パキスタン・イスラム共和国政府は、次の措置をとる。
1(1)(a) | 専門家、シニア海外ボランティア及び調査団の構成員に対し、国外から送金される給与及び手当に対して又はこれらの給与及び手当に関連して課される所得税を含む租税及び課徴金を免除すること。 | |
(b) | 専門家、シニア海外ボランティア、調査団の構成員及びそれらの家族に対し、次のものの輸入に関し、租税(関税を含む。)及び課徴金を免除すること。 | |
(i) | 身回品、家財及び消費財 | |
(ii) | パキスタン・イスラム共和国に派遣される専門家1名につき1台及びシニア海外ボランティア1名につき1台の自動車 | |
(c) | パキスタン・イスラム共和国に自動車を輸入しない専門家及びシニア海外ボランティアに対し、当該専門家及びシニア海外ボランティアが自動車を現地購入する場合には、専門家1名につき1台及びシニア海外ボランティア1名につき1台の自動車に対して課されるすべての間接税を含む租税及び課徴金を免除すること。 | |
(d) | 専門家、シニア海外ボランティアに対し、(b)(ii)及び(c)に規定する自動車の登録料を免除すること。 | |
(2)(a) | 専門家、シニア海外ボランティア及び調査団による任務の遂行に必要な適当な事務所その他の施設(電話及びファクシミリの役務を含む。)を自己の負担で提供し、かつ、それらの運営費及び維持費を負担すること。 | |
(b) | 専門家、シニア海外ボランティア及び調査団の任務の遂行に必要な現地要員(必要な場合には、適当な通訳を含む。)並びに専門家、シニア海外ボランティア及び調査団の相手方となる当該任務の遂行に必要なパキスタン人の要員を自己の負担で提供すること。 | |
(c) | 専門家及びシニア海外ボランティアに係る次の諸経費を負担すること。 | |
(i) | 通勤費 | |
(ii) | 現地の条件及びパキスタン・イスラム共和国の関係当局の財政事情が許す限りのパキスタン・イスラム共和国内の公用出張旅費 | |
(iii) | 公用通信費 | |
(d) | 専門家、シニア海外ボランティア及びそれらの家族に対し、適当な住宅の確保につき支援を提供すること。 | |
(e) | 専門家、シニア海外ボランティア、調査団の構成員及びそれらの家族に対し、医療上の支援を提供すること。 | |
(3)(a) | 専門家、シニア海外ボランティア、調査団の構成員及びそれらの家族に対し、その任期中、パキスタン・イスラム共和国に入国し、同国から出国し及び同国に滞在することを許可し、外国人登録要件に係る手続を完了するための支援を提供し、並びに領事手数料を免除すること。 | |
(b) | 専門家、シニア海外ボランティア及び調査団の構成員の任務の遂行に必要なすべての政府機関の協力を確保するために、専門家、シニア海外ボランティア及び調査団の構成員に対し、身分証明書を交付すること。 | |
(c) | 専門家、シニア海外ボランティア及びそれらの家族に対し、自動車運転免許証の取得のための支援を提供すること。 | |
(d) | 専門家、シニア海外ボランティア及び調査団の任務の遂行に必要なその他の措置をとること。 | |
2 | 1に規定する自動車が、その後パキスタン・イスラム共和国内において、租税(関税を含む。)の免除又は同様の特権を有しない個人又は団体に売却され又は譲渡される場合には、当該自動車に係るそれらの租税(関税を含む。)は支払われなければならない。 | |
3 | パキスタン・イスラム共和国政府は、専門家、シニア海外ボランティア、調査団の構成員及びそれらの家族に対し、パキスタン・イスラム共和国において同様の任務を遂行しているいかなる第三国又は国際機関の専門家、シニア海外ボランティア、調査団の構成員及びそれらの家族に与えられているものよりも不利でない特権、免除及び便宜を与える。 |
第6条 パキスタン・イスラム共和国政府は、専門家、シニア海外ボランティア及び調査団の構成員の任務の遂行に起因し、その任務の遂行中に発生し、又はその任務の遂行に関連する当該専門家、シニア海外ボランティア及び調査団の構成員に対する請求について責任を負う。ただし、そのような請求が専門家、シニア海外ボランティア又は調査団の構成員の重大な過失又は故意から生じたことについて両政府が合意する場合には、この限りでない。
第7条
1(1) | JICAがパキスタン・イスラム共和国政府に設備、機械及び資材を供与する場合には、パキスタン・イスラム共和国政府は、それらの設備、機械及び資材の輸入に関し、租税(関税を含む。)及び課徴金を免除する。これらの設備、機械及び資材は、陸揚港において保険料及び運賃込みの条件でパキスタン・イスラム共和国政府の権限のある当局に引き渡された時にパキスタン・イスラム共和国政府の財産となる。 |
(2) | JICAがパキスタン・イスラム共和国政府に設備、機械及び資材を供与する場合には、パキスタン・イスラム共和国政府は、それらの設備、機械及び資材の現地購入に関し、すべての間接税を含む租税及び課徴金を免除する。 |
(3) | (1)及び(2)に規定する設備、機械及び資材は、両政府の権限のある当局間の別途の合意がない限り、第2条に規定する取決めに定める目的のために使用される。 |
(4) | (1)及び(2)に規定する設備、機械及び資材のパキスタン・イスラム共和国内における輸送のための費用並びにそれらの交換、維持及び修理のための費用は、パキスタン・イスラム共和国政府が負担する。 |
2(1) | 専門家、シニア海外ボランティア及び調査団の構成員による任務の遂行に必要な設備、機械及び資材であってJICAが用意するものは、両政府の権限のある当局間の別途の合意がない限り、JICAの財産である。 |
(2) | パキスタン・イスラム共和国政府は、専門家、シニア海外ボランティア及び調査団の構成員に対し、(1)に規定する設備、機械及び資材の輸入に関し、租税(関税を含む。)及び課徴金を免除する。 |
(3) | パキスタン・イスラム共和国政府は、専門家、シニア海外ボランティア及び調査団の構成員に対し、(1)に規定する設備、機械及び資材の現地購入に関し、すべての間接税を含む租税及び課徴金を免除する。 |
[第2条]
第8条 パキスタン・イスラム共和国政府は、その指定する機関を通じ、専門家、シニア海外ボランティア及び調査団の構成員と緊密に連絡を保つものとする。
第9条
1 | 日本国から派遣されてこの協定に基づく技術協力計画に関連してJICAにより与えられる任務をパキスタン・イスラム共和国において遂行する駐在員及び職員(以下、それぞれ「駐在員」及び「職員」という。)を置く海外事務所(以下「事務所」という。)をJICAがパキスタン・イスラム共和国において維持することができることが確認される。 | ||
2 | パキスタン・イスラム共和国政府は、次の措置をとる。 | ||
(1)(a) | 駐在員、職員及びそれらの家族に対し、国外から送金される給与及び手当に対して又はこれらの給与及び手当に関連して課される所得税を含む租税及び課徴金を免除すること。 | ||
(b) | 駐在員、職員及びそれらの家族に対し、次のものの輸入に関し、租税(関税を含む。)及び課徴金を免除すること。 | ||
(i) | 身回品、家財及び消費財 | ||
(ii) | パキスタン・イスラム共和国に派遣される駐在員1名につき一台及び職員1名につき1台の自動車 | ||
(c) | パキスタン・イスラム共和国に自動車を輸入しない駐在員及び職員に対し、当該駐在員及び職員が自動車を現地購入する場合には、駐在員1名につき1台及び職員1名につき1台の自動車に対して課されるすべての間接税を含む租税及び課徴金を免除すること。 | ||
(d) | 駐在員及び職員に対し、(b)(ii)及び(c)に規定する自動車の登録料を免除すること。 | ||
(e) | 駐在員、職員及びそれらの家族に対し、その任期中、パキスタン・イスラム共和国に入国し、同国から出国し及び同国に滞在することを許可し、外国人登録要件に係る手続を完了するための支援を提供し、並びに領事手数料を免除すること。 | ||
(f) | 駐在員及び職員に対し、身分証明書並びに専門家、シニア海外ボランティア及び調査団の構成員を送迎するために空港及び海港に出入国手続地点を越えて入るための特別通行証を発行すること。 | ||
(g) | 駐在員、職員及びそれらの家族に対し、自動車運転免許証の取得のための支援を提供すること。 | ||
(h) | 駐在員及び職員による任務の遂行に必要なその他の措置をとること。 | ||
(2)(a) | 事務所に対し、事務所の活動に必要な設備、機械、自動車及び資材の輸入に関し、租税(関税を含む。)及び課徴金を免除すること。 | ||
(b) | 事務所に対し、事務所の任務に必要な設備、機械、自動車及び資材の現地購入に関し、すべての間接税を含む租税及び課徴金を免除すること。 | ||
(c) | 事務所に対し、事務所の経費であって国外から送金されるものに対して又はこれに関連して課される所得税を含む租税及び課徴金を免除すること。 | ||
3 | 2に規定する自動車が、その後パキスタン・イスラム共和国内において、租税(関税を含む。)の免除又は同様の特権を有しない個人又は団体に売却され又は譲渡される場合には、当該自動車に係るそれらの租税(関税を含む。)は支払われなければならない。 | ||
4 | パキスタン・イスラム共和国政府は、駐在員、職員及びそれらの家族並びに事務所に対し、パキスタン・イスラム共和国において同様の任務を遂行しているいかなる第三国又は国際機関の駐在員、職員及びそれらの家族並びに事務所に与えられているものよりも不利でない特権、免除及び便宜を与える。 |
第10条 パキスタン・イスラム共和国政府は、パキスタン・イスラム共和国に滞在する専門家、シニア海外ボランティア、調査団の構成員、駐在員、職員及びそれらの家族の安全を確保するために必要な措置をとる。
第11条 日本国政府及びパキスタン・イスラム共和国政府は、この協定から又はそれに関連して生ずることのあるいかなる事項についても相互に協議する。
第12条
1 | この協定の規定は、この協定が効力を生じた後、この協定が効力を生ずる前に開始した個別の技術協力計画にも適用され、また、当該計画に関連するパキスタン・イスラム共和国に滞在中の専門家、シニア海外ボランティア、調査団の構成員、駐在員、職員及びそれらの家族並びに設備、機械及び資材にも適用される。 |
2 | この協定の終了は、両政府間の相互の同意により別段の決定が行われる場合を除くほか、実施中の個別の技術協力計画が完了する日までの間当該計画に影響を与えるものではなく、また、当該計画に関連する任務を遂行するためにパキスタン・イスラム共和国に滞在中の専門家、シニア海外ボランティア、調査団の構成員、駐在員、職員及びそれらの家族に対して与えられる特権、免除及び便宜に影響を与えるものではない。 |
第13条
1 | この協定は、署名の日に効力を生ずる。 |
2 | この協定は、1年間効力を有するものとし、いずれか一方の政府が他方の政府に対し少なくとも6箇月の予告をもって協定を終了させる意思を書面により通告しない限り、毎年自動的に1年ずつ更新される。 |
第14条 附属書は、この協定の不可分の一部を成すものとし、「協定」というときは、附属書を含むものとする。
以上の証拠として、下名は、正当に委任を受けてこの協定に署名した。 | |
2005年4月30日にイスラマバードで、ひとしく正文である日本語及び英語により本書2通を作成した。 | |
日本国政府のために | パキスタン・イスラム共和国政府のために |
田中信明 | シュジャー・シャー |
附属書 |
パキスタン・イスラム共和国政府が、将来において、物資の輸入に関し領事手数料を課す場合又は輸入許可証若しくは為替証明書の取得を要件とする場合には、専門家、シニア海外ボランティア、調査団の構成員、駐在員、職員及びそれらの家族並びに事務所は、第5条1(1)(b)、第7条1(1)及び2(2)並びに第9条2(1)(b)及び2(2)(a)に規定する物資の輸入に関し、当該領事手数料又は当該要件を免除される。 |