○技術協力に関する日本国政府とヴィエトナム社会主義共和国政府との間の協定
(平成11年1月8日外務省告示第31号)
日本国政府及びヴィエトナム社会主義共和国政府は、技術協力の促進により両国間に存在する友好関係を一層強化することを希望し、また、両国の経済的及び社会的発展を促進することがもたらす相互の利益を考慮して、次のとおり協定した。
第1条 両政府は、両国間の技術協力を促進するよう努力する。
第2条 両政府は、この協定に基づき、両政府間で合意する個別の技術協力計画を実施するための別途の取極を文書により行う。
第3条 日本国政府は、日本国の現行法令に従い、かつ、前条にいう取極に基づき、自己の負担で次の形態による技術協力を行う。
(a) 日本国における技術訓練のためにヴィエトナム国民を受け入れること。
(b) 日本人専門家(以下「専門家」という。)をヴィエトナム社会主義共和国に派遣すること。
(c) ヴィエトナム社会主義共和国の経済開発及び社会開発に係る計画の調査を行うため、日本の調査団(以下「調査団」という。)をヴィエトナム社会主義共和国に派遣すること。
(d) 設備、機械及び資材をヴィエトナム社会主義共和国政府に供与すること。
(e) 両政府間で相互に合意することのあるその他の形態の技術協力をヴィエトナム社会主義共和国政府に対し行うこと。
第4条 ヴィエトナム社会主義共和国政府は、前条に規定する日本の技術協力の結果としてヴィエトナム国民が取得した技術及び知識がヴィエトナム社会主義共和国の経済的及び社会的発展に寄与し、かつ、軍事目的に使用されないことを確保する。
第5条 日本国政府が専門家及び調査団を派遣する場合には、ヴィエトナム社会主義共和国政府は、自己の負担で次の措置をとる。
(a) 専門家及び調査団の任務遂行に必要な適当な事務所及びその他の施設(電話及びファクシミリの役務を含む。)を提供し、かつ、それらの運営費及び維持費を負担すること。
(b) 専門家及び調査団の任務遂行に必要な現地要員(必要な場合には、適当な通訳を含む。)並びに専門家及び調査団の相手方となるヴィエトナムの要員を提供すること。
(c) 現地の条件及びヴィエトナム社会主義共和国政府の関係当局の財政事情が許す限り、専門家に係る次の諸経費を負担すること。
 (i) 通勤費
 (ii) ヴィエトナム社会主義共和国内の公用出張旅費
 (iii) 公用通信費
(d) 現地の条件及びヴィエトナム社会主義共和国政府の関係当局の財政事情が許す限り、専門家及びその家族に対し無料の住居を提供すること。
(e) 現地の条件及びヴィエトナム社会主義共和国政府の関係当局の財政事情が許す限り、専門家及びその家族並びに調査団の構成員に対し無料の医療上の便宜を与えること。
第6条 
1(1) ヴィエトナム社会主義共和国政府は、次のことを行う。
 (a) 専門家及び調査団の構成員に対し、海外から送金される給与及び手当に対し又はこれらに関連して課される所得税その他の課徴金を免除すること。
 (b) 専門家及びその家族並びに調査団の構成員に対し、次のものの輸入に関し、領事手数料、関税、租税その他類似の課徴金(保管、運搬及び類似の役務に関するものを除く。)並びに輸入許可証及び為替証明書の取得義務を免除すること。
  (i) 両政府の関係当局の間で合意される身回品、家財及び消費財
  (ii) ヴィエトナム社会主義共和国に183日以上の期間派遣される専門家1名につき自動車1台
 (c) ヴィエトナム社会主義共和国に183日以上の期間派遣される専門家であってヴィエトナム社会主義共和国に自動車を輸入しないものに対し、当該専門家が自動車を現地購入する場合には、専門家1名につき自動車1台に対して課される特別消費税及び付加価値税を免除すること。
 (d) 専門家に対し、(b)及び(c)にいう自動車の登録料を免除すること。
(2) 1にいう自動車がその後ヴィエトナム社会主義共和国内において関税及び租税の免除又は同様の特権を有しない個人又は団体に売却又は譲渡される場合には、当該自動車に係る関税及び租税は支払わなければならない。
2 ヴィエトナム社会主義共和国政府は、次の措置をとる。
 (a) 専門家及びその家族並びに調査団の構成員に対し、その任期中、ヴィエトナム社会主義共和国に入国し、同国から出国し及び同国に滞在することを許可し、外国人登録義務の手続に関し便宜を与え及び領事手数料を免除すること。
 (b) 専門家及び調査団の任務遂行に必要とされるすべての政府機関の協力を確保するために、専門家及びその家族並びに調査団の構成員に対し身分証明書を交付すること。
 (c) 専門家に対し、自動車運転免許証の取得のための便宜を与えること。
 (d) 専門家及び調査団に対し、その任務遂行上必要なその他の措置をとること。
3 ヴィエトナム社会主義共和国政府は、専門家及びその家族並びに調査団の構成員に対し、ヴィエトナム社会主義共和国において同様の任務を遂行している第三国又は国際機関の専門家及びその家族並びに調査団の構成員に与えられているものより不利でない特権、免除及び便宜を与える。
第7条 ヴィエトナム社会主義共和国政府は、専門家及び調査団の構成員の任務の遂行に起因し、その遂行中に発生し、又はその遂行に関連して専門家及び調査団の構成員に対する請求が生じた場合には、その請求に関する責任を負う。ただし、両政府の関係当局がその請求が専門家又は調査団の構成員の重大な過失又は故意から生じたことにつき合意する場合は、この限りでない。
第8条 
1 日本国政府がヴィエトナム社会主義共和国政府に設備、機械及び資材を供与する場合には、これらの設備、機械及び資材は、陸揚港においてc・i・f建てでヴィエトナム社会主義共和国政府の関係当局に引き渡された時にヴィエトナム社会主義共和国政府の財産となる。これらの設備、機械及び資材は、別途の合意がない限り供与された目的のために使用されるものとし、かつ、軍事目的に使用されない。
  日本国政府は、第10条にいう実施機関に対し、2及び3に規定するヴィエトナム社会主義共和国内における手続を容易にするため、設備、機械及び資材の到着に先立ち、これらの設備、機械及び資材のリストをヴィエトナムの関係実施機関に提出するよう指示する。
2 ヴィエトナム社会主義共和国政府は、1にいう設備、機械及び資材に関して、領事手数料、関税、租税その他類似の課徴金並びに輸入許可証及び為替証明書の取得義務を免除する。
3 1にいう設備、機械及び資材のヴィエトナム社会主義共和国内における輸送のための費用並びにそれらの補充、維持及び修理のための費用は、ヴィエトナム社会主義共和国政府が負担する。
4 専門家及び調査団の構成員がその任務を遂行するために携行する設備、機械及び資材は、別途の合意がない限り日本国政府の財産としてとどまる。
  専門家及び調査団の構成員は、それらの設備、機械及び資材の輸入に関し、領事手数料、関税、租税その他類似の課徴金並びに輸入許可証及び為替証明書の取得義務を免除される。
第9条 専門家及び調査団の構成員は、ヴィエトナム社会主義共和国政府が指定する機関を通じ、同政府と緊密に連絡を保つものとする。
第10条 
1 ヴィエトナム社会主義共和国政府は、日本国政府による技術協力の実施機関である国際協力事業団(以下「JICA」という。)が、ヴィエトナム社会主義共和国においてJICAの海外事務所(以下「事務所」という。)を維持することを認め、また、日本国から派遣されこの協定に基づく技術協力計画に関連してJICAにより与えられる任務をヴィエトナム社会主義共和国において遂行する駐在員及び職員(以下「駐在員等」という。)を受け入れる。
2 ヴィエトナム社会主義共和国政府は、駐在員等及びその家族並びに事務所に対し、以下の特権、免除及び便宜を与える。
 (1) 駐在員等及びその家族に対し
  (a) 海外から送金される給与及び手当に対し又はこれらに関連して課される所得税その他の課徴金の免除
  (b) 駐在員等の身回品及び家財(駐在員等それぞれ1人につき自動車1台及び個人使用のみに供される他の品目を含む。)の輸入に関して、領事手数料、関税、租税その他類似の課徴金(保管、運搬及び類似の役務に関するものを除く。)並びに輸入許可証及び為替証明書の取得義務の免除
  (c) ヴィエトナム社会主義共和国に自動車を輸入しない駐在員等が現地購入する場合には、駐在員等それぞれ1人につき自動車1台に対して課される特別消費税及び付加価値税の免除
  (d) (b)及び(c)にいう自動車の登録料の免除
  (e) 駐在員等に対し、その任期中ヴィエトナム社会主義共和国に入国し、同国から出国し及び同国に滞在することに対する許可、外国人登録義務手続のための便宜の供与並びに領事手数料の免除
  (f) 身分証明書並びにJICAの専門家及び調査団の構成員を送迎するために空港及び海港に出国手続地点を越えて入るための特別通行証の発行
  (g) 自動車運転免許証の取得のための便宜の提供
 (2) 事務所に対し
  (a) 事務所の活動に必要な事務設備及び他の物品(通信機械を含む。)の輸入に関して、関税、租税その他類似の課徴金(保管、運搬及び類似の役務を除く。)並びに輸入許可証及び為替証明書の取得義務の免除
  (b) 事務所の活動に必要な自動車の両政府の関係当局間で合意される台数分の無税での輸入又はヴィエトナム社会主義共和国内にある保税倉庫からの購入
  (c) 事務所の経費であって海外から送金されるものに対し又はこれに関連して課される所得税及びその他の課徴金の免除
3 2にいう自動車は、ヴィエトナム社会主義共和国内において関税及び租税の免除又は同様の特権を有しない個人又は団体に売却又は譲渡される場合には、当該自動車に係る関税及び租税が支払われなければならない。
4 駐在員等及びその家族並びに事務所は、2(1)(b)並びに2(2)(a)及び(b)の規定に従って関税、租税その他類似の課徴金を免除されて物品を輸入する場合には、ヴィエトナム社会主義共和国政府の関係部局に対しこれら物品の輸入及び再輸出証明を入手するために、当該物品の明細書を提示する。
5 駐在員等及びその家族並びに事務所は、関税、租税その他類似の課徴金を課されずに輸入された物品については、ヴィエトナム社会主義共和国の法令に従って、再輸出し、ヴィエトナム社会主義共和国の領域内において売却し又はヴィエトナム社会主義共和国政府の承認を得て当該政府に寄贈する。
6 ヴィエトナム社会主義共和国政府は、駐在員等及びその家族並びに事務所に対して、ヴィエトナム社会主義共和国において同様の任務を遂行している第三国又は国際機関の実施機関の駐在員及び職員並びにその家族並びに当該実施機関の事務所に与えられているものより不利でない特権、免除及び便宜を与える。
第11条 日本国政府及びヴィエトナム社会主義共和国政府は、この協定から又はそれに関連して生ずることがあるいかなる事項についても相互に協議する。
第12条 
1 この協定の規定は、この協定が効力を生ずる前に両政府間で実施されている個別の技術協力計画にも適用され、また、当該計画を実施するためにヴィエトナム社会主義共和国に滞在中の専門家及びその家族、調査団の構成員並びに当該計画を実施するためにヴィエトナム社会主義共和国に持ち込まれる設備、機械及び資材にも適用される。
2 この協定の終了は、両政府が明示的に別途の合意をしない限り、実施中の個別の技術協力計画の完了の日まで当該計画に影響を与えるものではなく、また、当該計画に関する任務を遂行するためにヴィエトナム社会主義共和国に滞在中の専門家及びその家族、調査団の構成員並びに駐在員等及びその家族に与えられる特権、免除及び便宜に影響を与えるものではない。
第13条 
1 この協定は、署名の日に効力を生ずる。
2 この協定は、1年間効力を有するものとし、いずれかの一方の政府が他方の政府に対し少なくとも6箇月の予告をもって協定を終了させる意思を書面により通告しない限り、毎年自動的に1年ずつ更新される。
以上の証拠として、下名は、正当に委任を受けてこの協定に署名した。
1998年10月20日にハノイで、英語により本書2通を作成した。
日本国政府のために ヴィエトナム社会主義共和国政府のために
鈴木勝也 チャン・スアン・ザー