○技術協力及び無償資金協力に関する日本国政府とウクライナ政府との間の協定
(平成16年11月18日外務省告示第743号)
 日本国政府及びウクライナ政府は、技術協力及び無償資金協力の促進により両国間に存在する友好関係を一層強化することを希望し、また、両国の経済的及び社会的発展並びに文化活動の促進によりもたらされる相互の利益を考慮して、次のとおり協定した。
第1部
第1条
 両政府は、両国間の技術協力を促進するよう努力する。
   
第2条
 この協定の下で実施される個別の技術協力計画を規律する別途の取決めが、両政府の権限のある当局間で合意される。日本国政府の権限のある当局は外務省であり、ウクライナ政府の権限のある当局は経済・欧州統合省である。
   
第3条
 次の形態による技術協力が、独立行政法人国際協力機構(以下「JICA」という。)により、日本国の現行法令に従い、かつ、前条に規定する取決めに基づき、自己負担で行われることになる。
 (a) ウクライナ国民へ技術訓練を提供すること。
 (b) 専門家をウクライナに派遣すること(以下、派遣された専門家を「専門家」という。)。
 (c) 幅広い技術と豊かな経験を有する日本人ボランティア(以下「シニア海外ボランティア」という。)をウクライナに派遣すること。
 (d) ウクライナの開発に関する基礎的な調査を行うため、日本国の調査団(以下「調査団」という。)をウクライナに派遣すること。
 (e) 設備、機械及び資材をウクライナ政府に供与すること。
 (f) 両政府間で相互の同意により決定されるその他の形態の技術協力をウクライナ政府に対して行うこと。
   
第4条
 ウクライナ政府は、前条に規定する日本国の技術協力の結果としてウクライナ国民が取得した技術及び知識並びに供与された設備、機械及び資材がウクライナの経済的及び社会的発展に寄与し、かつ、軍事目的に使用されないことを確保する。
   
第5条
 JICAが専門家、シニア海外ボランティア及び調査団を派遣する場合には、ウクライナ政府は、次の措置をとる。
1(1)(a) 専門家、シニア海外ボランティア及び調査団の構成員に対し、この協定の下での任務の遂行に関連して国外から送金される給与及び手当に対して又はこれらの給与及び手当に関連して課される所得税を含む租税及び課徴金を免除すること。
(b) 専門家、シニア海外ボランティア、調査団の構成員及びそれらの家族の構成員に対し、次のものの輸入に関し、領事手数料、租税(関税を含む。)及び課徴金を免除すること。
 (i) 個人的用途のために輸入された身回品、家財及び消費財
 (ii) ウクライナに派遣される専門家1名につき1台、専門家の家族につき1台、シニア海外ボランティア1名につき1台及びシニア海外ボランティアの家族につき1台の自動車
(c) ウクライナに自動車を輸入しない専門家、シニア海外ボランティア及びそれらの家族の構成員に対し、当該専門家、シニア海外ボランティア及びそれらの家族の構成員が自動車を現地購入する場合には、専門家1名につき1台、専門家の家族につき1台、シニア海外ボランティア1名につき1台及びシニア海外ボランティアの家族につき1台の自動車に対して課される付加価値税を含む租税及び課徴金を免除すること。
(2) 専門家、シニア海外ボランティア及び調査団の受入機関に対し、次のことについて支援すること。
(a) 専門家、シニア海外ボランティア及び調査団の任務の遂行に必要な適当な事務所その他の施設(電話及びファクシミリの役務を含む。)を当該受入機関の負担で提供し、かつ、それらの運営費及び維持費を負担すること。
(b) 専門家、シニア海外ボランティア及び調査団の任務の遂行に必要な現地要員(必要な場合には、適当な通訳を含む。)並びに専門家、シニア海外ボランティア及び調査団の相手方となるウクライナ人の要員を当該受入機関の負担で提供すること。
(c) 専門家及びシニア海外ボランティアに係る次の諸経費を負担すること。
 (i) 通勤費
 (ii) ウクライナ国内の公用出張旅費
 (iii) 公用通信費
(d) 専門家、シニア海外ボランティア及びそれらの家族の構成員に対し、適当な住宅の確保につき便宜を提供すること。
(e) 専門家、シニア海外ボランティア、調査団の構成員及びそれらの家族の構成員に対し、医療上の便宜を提供すること。
(3)(a) 専門家、シニア海外ボランティア、調査団の構成員及びそれらの家族の構成員に対し、その任期中、ウクライナに入国し、同国から出国し及び同国に滞在することを許可し、外国人登録要件に係る手続に関し便宜を与え、かつ、領事手数料を免除すること。
(b) 専門家、シニア海外ボランティア及び調査団の構成員の任務の遂行に必要なすべての政府機関の協力を確保するために、専門家、シニア海外ボランティア及び調査団の構成員に対し、身分証明書を交付すること。
(c) 専門家、シニア海外ボランティア及び調査団の任務の遂行に必要なその他の措置をとること。
2 1に規定する身回品、家財、消費財及び自動車が、その後ウクライナ国内において、租税(関税を含む。)の免除又は同様の特権を有しない自然人又は法人に売却又は譲渡される場合には、当該身回品、家財、消費財及び自動車に係るそれらの租税は支払われなければならない。
3 ウクライナ政府は、専門家、シニア海外ボランティア、調査団の構成員及びそれらの家族の構成員に対し、ウクライナにおいて同様の任務を遂行している第三国又は国際機関の専門家、シニア海外ボランティア、調査団の構成員及びそれらの家族の構成員に与えられているものより不利でない特権、免除及び便宜を与える。
   
第6条
 専門家、シニア海外ボランティア及び調査団の構成員は、専門家、シニア海外ボランティア及び調査団の構成員の個別の技術協力計画の枠内の任務の遂行に起因し、その遂行中に発生し、又はその遂行に関連して専門家、シニア海外ボランティア及び調査団の構成員に対する請求が生じた場合には、その請求に関する責任を免除される。ただし、その請求が専門家、シニア海外ボランティア又は調査団の構成員の重大な過失又は故意から生じたことが両政府間の協議の後に確認された場合には、この限りでない。
   
第7条
1(1) JICAがウクライナ政府に設備、機械及び資材を供与する場合には、ウクライナ政府は、それらの設備、機械及び資材の輸入に関し、租税(関税を含む。)及び課徴金を免除する。これらの設備、機械及び資材は、陸揚港においてc・i・f建てでウクライナ政府の権限のある当局に引き渡された時にウクライナ政府の財産となる。
(2) JICAがウクライナ政府に設備、機械及び資材を供与する場合には、ウクライナ政府は、それらの設備、機械及び資材の現地購入に関し、付加価値税を含む租税及び課徴金を免除する。
(3) (1)及び(2)に規定する設備、機械及び資材は、両政府の権限のある当局間の別途の合意がない限り、第2条に規定する取決めに定める目的のために使用される。
(4) (1)及び(2)に規定する設備、機械及び資材のウクライナにおける輸送のための費用並びにそれらの補充、維持及び修理のための費用は、ウクライナ政府が負担する。
2(1) 専門家、シニア海外ボランティア及び調査団の構成員の任務の遂行に必要な設備、機械及び資材であってJICAが用意するものは、両政府の権限のある当局間の別途の合意がない限り、JICAの財産である。
(2) ウクライナ政府は、専門家、シニア海外ボランティア及び調査団の構成員に対し、(1)に規定する設備、機械及び資材の輸入に関し、租税(関税を含む。)及び課徴金を免除する。
(3) ウクライナ政府は、専門家、シニア海外ボランティア及び調査団の構成員に対し、(1)に規定する設備、機械及び資材の現地購入に関し、付加価値税を含む租税及び課徴金を免除する。
   
第8条
 ウクライナ政府は、その指定する機関を通じ、専門家、シニア海外ボランティア及び調査団の構成員と緊密に連絡を保つものとする。
第9条
1 ウクライナ政府は、JICAが、ウクライナにおいてJICAの海外事務所(以下「事務所」という。)を開設し及び維持することを認め、また、日本国から派遣されてこの協定に基づく技術協力計画の事業に関連してJICAにより与えられる任務をウクライナにおいて遂行する駐在員及び職員(以下、それぞれ「駐在員」及び「職員」という。)を受け入れる。
2 ウクライナ政府は、次の措置をとる。
 (1)(a) 駐在員、職員及びそれらの家族の構成員に対し、この協定の下での任務の遂行に関連して国外から送金される給与及び手当に対して又はこれらの給与及び手当に関連して課される所得税を含む租税及び課徴金を免除すること。
 (b) 駐在員、職員及びそれらの家族の構成員に対し、次のものの輸入に関し、租税(関税を含む。)及び課徴金を免除すること。
  (i) 個人的用途のために輸入された身回品、家財及び消費財
  (ii) ウクライナに派遣される駐在員1名につき1台、職員につき1台、駐在員の家族につき1台及び職員の家族につき1台の自動車
 (c) ウクライナに自動車を輸入しない駐在員、職員及びそれらの家族の構成員に対し、当該駐在員、職員及びそれらの家族の構成員が自動車を現地購入する場合には、駐在員1名につき1台、職員1名につき1台、駐在員の家族につき1台及び職員の家族につき1台の自動車に対して課される付加価値税を含む租税及び課徴金を免除すること。
 (d) 駐在員、職員及びそれらの家族の構成員に対し、その任期中、ウクライナに入国し、同国から出国し及び同国に滞在することを許可し、外国人登録要件に係る手続に関し便宜を与え、かつ、領事手数料を免除すること。
 (e) 駐在員及び職員に対し、身分証明書を交付すること。
 (f) 駐在員及び職員の任務の遂行に必要なその他の措置をとること。
 (2)(a) 事務所に対し、事務所の活動に必要な設備、機械、自動車及び資材の輸入に関し、租税(関税を含む。)及び課徴金を免除すること。
 (b) 事務所に対し、事務所の任務に必要な設備、機械、自動車及び資材の現地購入に関し、付加価値税を含む租税及び課徴金を免除すること。
 (c) 事務所に対し、事務所の経費であって国外から送金されるものに対して又はこれに関連して課される所得税を含む租税及び課徴金を免除すること。
3 2に規定する身回品、家財、消費財及び自動車が、その後ウクライナ国内において、租税(関税を含む。)の免除又は同様の特権を有しない自然人又は法人に売却又は譲渡される場合には、当該身回品、家財、消費財及び自動車に係るそれらの租税は支払われなければならない。
4 ウクライナ政府は、駐在員、職員及びそれらの家族の構成員並びに事務所に対し、ウクライナにおいて同様の任務を遂行している第三国又は国際機関の駐在員、職員及びそれらの家族の構成員並びに事務所に与えられているものより不利でない特権、免除及び便宜を与える。
  
第10条
 ウクライナ政府は、ウクライナに滞在する専門家、シニア海外ボランティア、調査団の構成員、駐在員、職員及びそれらの家族の構成員の安全を確保するために必要な措置をとる。
  
第11条
1 この部の規定は、この協定が効力を生じた後、この協定が効力を生ずる前に開始した個別の技術協力計画にも適用され、また、当該計画に関連するウクライナに滞在中の専門家、シニア海外ボランティア、調査団の構成員、駐在員、職員及びそれらの家族の構成員並びに設備、機械及び資材にも適用される。
2 この協定の終了は、両政府間の相互の同意により別段の決定が行われる場合を除くほか、実施中の個別の技術協力計画が完了する日までの間当該計画に影響を与えるものではなく、また、当該計画に関する任務を遂行するためにウクライナに滞在中の専門家、シニア海外ボランティア、調査団の構成員、駐在員、職員及びそれらの家族の構成員に対して与えられる特権、免除及び便宜に影響を与えるものではない。
  
第2部
第12条
 両政府は、両国間の無償資金協力を促進するよう努力する。
 日本国政府は、日本国の現行法令に従い、かつ、次条に規定する取極に従い、ウクライナ政府に対し、無償資金協力案件の実施に必要な財又は役務を購入するための無償資金協力を実施する。
  
第13条
 この協定の下で実施される個別の無償資金協力案件を規律する別途の取極が、交換公文の形式で両政府間で合意される。
  
第14条
1 日本国政府がウクライナ政府に対して無償資金協力を行う場合には、ウクライナ政府は、無償資金協力に基づく財又は役務の供与に関し、ウクライナにおいて課される租税(関税を含む。)及び課徴金を日本国民に対して免除する。(日本国民という語は、日本国の自然人又はその支配する日本国の法人を意味する。)
2 無償資金協力に基づく日本国政府からウクライナ政府に対して供与される財又は役務に関し、ウクライナ政府は、租税(関税を含む。)及び課徴金を免除する。
  
第15条
 この協定の終了は、両政府間の相互の同意により別段の決定が行われる場合を除くほか、実施中の個別の無償資金協力案件が完了する日までの間当該案件に影響を与えるものではなく、また、当該案件に関して与えられる免除に影響を与えるものではない。
  
第3部
第16条
 日本国政府及びウクライナ政府は、この協定から又はそれに関連して生ずることのあるいかなる事項についても相互に協議する。
  
第17条
1 この協定は、日本国政府がウクライナ政府からこの協定の効力発生のために必要な国内手続を完了した旨の書面による通告を受領した日に効力を生ずる。
2 この協定は、1年間効力を有するものとし、いずれか一方の政府が他方の政府に対し少なくとも6箇月の予告をもって協定を終了させる意思を書面により通告しない限り、毎年自動的に1年ずつ更新される。
 以上の証拠として、下名は、正当に委任を受けてこの協定に署名した。
 2004年6月10日に東京で、英語により本書2通を作成した。
 日本国政府のために ウクライナ政府のために
 川口順子 コスチャンティン・グリシチェンコ