遷都1300年歴史ある奈良から、観光ノウハウを中東地域へ(社団法人 平城遷都1300年事業協会)

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プレゼンに耳を傾け、意欲的に質問する研修員

奈良県は世界的に有名な日本の観光都市として栄え、毎年海外からも多くの観光客が訪れます。その奈良県が来年開催する、世界遺産をテーマとした大型イベントの運営方法や観光ノウハウが今、中東地域における地域活性化に向けた観光振興に活用されようとしています。財団法人太平洋人材交流センターの実施のもと中東地域の行政官を対象に以下の研修が実施されました。

  • 研修コース:中東地域観光開発
  • 受入期間:2009年10月26日〜2009年11月21日

平城遷都1300年祭

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林さん(左)にパレスチナの国旗をお土産に手渡すハレッドさん(右)

平城京が誕生してから1300年を迎えることを記念し、2010年1月1日〜12月31日まで開催される『平城遷都1300年祭』。日本の歴史・文化が連綿と続いたことを“祝い、感謝する”とともに、「“日本のはじまり奈良”を素材に、過去・現在・未来の日本を“考える”」ことをテーマに、記念式典や「平城京なりきり体験館」、遣唐使船復元展示のほか、県内各地50社寺での秘宝秘仏特別公開、ウォーキングイベント、各種フォーラムなど様々な催しが予定されています。

今回は、同祭に向けて現在準備を進めている平城遷都1300年記念事業協会の林 成光さんについてお話を聞きました。

訪問した研修員は…

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奈良の歴史文化遺産事例見学として訪れた東大寺

紛争やテロの報道が多くなりがちな中東地域。日本ではなかなか知られる機会が少ないですが、実は、中東地域は遺跡などの観光資源が豊富に存在しています。中東地域の観光振興に関わる人々は地域経済の活性化に向けた観光開発の重要性を認識しています。

しかし、魅力的なツアーの開発やマーケティングの手法の改善などにはまだまだ多くの課題があります。例えば、「観光資源をどのようにプロモーションしていくか」「地域の特色を活かした観光開発を行うにはどうしたらよいか」など…。これらの課題に取り組むために今回奈良県を訪れたのは、エジプト・パレスチナ・シリア・イエメンの中東4カ国の観光振興に携わる行政官5名です。

研修の様子

今回の研修の目的は、日本での研修をもとに彼らの国に必要な組織体制について現状と課題が整理されることです。

研修員達は大阪・徳島・東京でのハードなスケジュールを終えたばかりでしたが、疲れた顔も見せずに意欲的に研修に臨んでいました。

研修中たくさんの質問や意見交換が交わされました。平城遷都1300年祭開催にあたり、たくさんの人々が奈良を訪れることが予想されます。林さんは、奈良の景観を守りながら宿泊施設の質・量、交通整備の充実を目指し、準備することの難しさ、歴史都市奈良の永遠のテーマである「保存と開発の調和」についてもお話されました。しかしこれは、いずれ彼らの国も発展すると共に出てくる課題ともいえるのではないでしょうか。

今回平城遷都1300年祭では、こういった課題に取り組むべく、歴史都市という共通の絆で結ばれた都市の代表者が抱える課題の解決に向けて情報交換を図るなど、望ましい未来の構想に役立てる「東アジア未来会議 奈良2010」を開催されるそうです。

奈良と中東

シリア出身のハザールさんとエジプト出身のリミさんは、シルクロードを通じてシリア、エジプトと奈良が深く関係している点など、熱心に語ってくれました。

奈良県は以前から、文化財の保存・修復のための技術研修員を受け入れ、奈良の特徴を活かした技術を伝えることで、シリア・パルミラ遺跡の発掘・復元に協力しています。また、昨年度に同じコースで来日したパレスチナの研修員は、奈良の取り組みは、世界最古の都市であるジェリコ市での1万年祭(2010年開催予定)の実施に役立つと言っていました。2009年7月にはパレスチナの観光遺跡庁次官補も奈良県を訪問し、知事表敬も行いました。奈良県と中東地域の関わりというと、なかなかイメージしにくいですが、実は、古代の遺跡が現在に渡り双方を深く結びつけています。

関連リンク

この研修受入れ事業の受入機関は以下の通りです。