家庭用燃料電池や太陽光パネルを搭載した家屋を見学
関西には太陽光パネル製造会社や、住宅に太陽光発電装置を設置するハウスメーカーが多数存在します。日本における「太陽光発電ビジネス」の拠点ともいえるこの地で、JICA大阪は「太陽光発電導入のための基礎研修」を実施しました。日本の経験を参考に、自国に適した太陽光発電導入・普及の施策を検討することを目的としたこの研修は、2月1日から約1ヵ月間行われ、アジア地域9カ国(インドネシア、スリランカ、ネパール、パキスタン、東ティモール、フィリピン、ベトナム、モンゴル、ラオス)から計18人の行政官が参加しました。
研修コース:アジア地域太陽光発電導入のための基礎研修
受入期間:2010年2月1日〜2月27日
熱心にパネルを見学する研修員
パネル製作メーカーの展示を熱心にチェック
近年、気候変動対策の一環として世界的に注目を集めている「再生可能エネルギー」。中でも太陽光は、発電時にほとんど二酸化炭素を排出しないクリーンなエネルギーとして、その可能性に大きな期待が寄せられています。
インフラ整備が不十分な開発途上国では、主に電力網が整備されていない地域で太陽光発電による電力供給が行われています。また、近年は電力会社などが供給する電力と太陽光発電による電力を連系させる「系統連系技術」に対するニーズも高まってきています。しかし、初期投資に大きなコストがかかるため割高感があること、適正な知識と経験を持つ技術者やスペアパーツ確保が必須で維持管理が難しいことなど、太陽光発電の導入と普及にあたっては、課題も抱えています。
講師(手前)と対話しつつ、自国での太陽光発電普及についてシミュレーションを行った
アジア地域9カ国から参加した18人の研修員は、企業訪問などを通じて、太陽光発電産業が、日本で政策に呼応してどのように発展してきたかを学びました。また、演習によって、それぞれ自国で太陽光発電を普及させる上での課題をどのように解決していくべきか、さまざまな検討も行いました。「日本の技術力はもちろん、経営管理など、企業の努力が素晴らしい」「日本政府の政策が産業とのリンクにより成り立っている点が今後のヒントになった」。研修員たちは、最新技術を活用した日本の現況を一つの未来像としてイメージしながら、どのようにそこへ近づいていくかを考察したようです。
企業を訪問し担当者から直接レクチャーを受ける
この研修では、「アジア環境・省エネビジネス人材育成・交流プログラム」を提唱する、社団法人関西経済連合会と連携して、企画段階から協働で研修プログラムを作成。これにより、主要な太陽光パネル製造会社や関連企業の現場を視察し、それぞれの取り組みを研修員に直接紹介してもらうことが可能になりました。
また、研修の導入段階で行ったワークショップ(自国のエネルギー事情と太陽光発電導入状況を紹介)と、最終日に実施した成果報告会(日本で学んだことを自国でどのように生かしていきたいかを発表)は一般公開され、日本国内の企業関係者と意見を交換する場が設けられました。日本企業にとっても、こうした機会を通じて、開発途上国の太陽光発電導入の最新事情や今後のニーズが把握でき、途上国におけるビジネスチャンス発掘につながります。
JICAがこれまでに実施あるいは今年度中に予定している太陽光発電に関する協力は、53ヵ国を対象に計76件(注)。JICA大阪では、ソフト面からの支援として、今回の「基礎研修」をさらに充実させ、次年度以降は対象国を拡大して同様の研修を継続していきたいと考えています。
(注)協力内容の一部として太陽光発電を行う案件を含む。
この研修事業の受入機関は以下の通りです。