京野菜ブランド化の取り組みを世界に—関西の自治体の取り組みを通して途上国の地方自治体の強化を支援—(龍谷大学)

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「地方自治体行政強化研修」コース

最近、各地の自治体は、地域の特性を活かした地域活性化に元気に取り組んでいます。JICA大阪は、京都をはじめとした関西の自治体の地域活性化の様々な取り組みを紹介しながら、途上国の地方自治体強化を目指す参加型開発の研修を実施しています。この研修には、アジア(カンボジア、タイ、ラオス、東ティモール)、アフリカ(ウガンダ、タンザニア、ガーナ、スーダン)、中南米(ニカラグア、アルゼンチン)、大洋州(モルジブ、ソロモン)から15人の研修員が参加しています。

  • 研修コース:地方自治体行政強化(参加型開発)
  • 受入期間:2010月7月5日〜2010年8月28日

視察の様子と研修員の声

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京都府農林水産技術センター視察

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南丹農業改良普及センターで講義を受ける研修員

この日は35度を超える猛暑の中、京都府農林水産技術センター(亀岡市)と京都府南丹広域振興局 南丹農業改良普及センター(南丹市)を訪問しました。農林水産技術センターは、安全で高品質の畜産物生産や環境対策技術に関する研究と技術支援を通じて、周辺農家の経営改善や地域活性化、また、畜産物の安全性の確保に努めています。同センターでは、京野菜のブランド性保持のための研究を行っており、研究成果は周辺農家に還元しているそうです。研修員のスマニ・ハルナさん(ガーナ)は、「自国では昔ながらの食材は存在するが、それを新たに改善したり保護したりするという動きはない。昔ながらの食材は、外国から入ってきた食材を好む食生活のため失われていく一方だ。伝統野菜を復活させたり、保護しようという京都の活動を見習い、地域の活性化につなげたい」と語っていました。

次の訪問先、南丹農業改良普及センターは、高齢化地域の活性化、次世代の農業の担い手育成、ブランド京野菜の販売促進、直売所による安定・安心商品の提供、環境負荷の少ない農作などに取り組んでいます。南丹市の農家の現状についてお話を聞き、直売所を地域活性の手段として取り入れようと考えているアルゼンチンからの研修員ゴンサロ・マルティンさんは、「京都の直売所の成功例を自国の参考にしたい。小規模直販所を中規模にするための流通の流れや、生産者の顔が見える商品について学んでみたい」と語っていました。

市民の国際協力への貢献

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松埼さん(写真:左から2番目)のお話を聞く研修員

視察の最後に、京野菜、水菜の栽培に取り組む農家の松崎忠嗣(まつざき ただし)さんの農地を訪れ、高齢化と若い担い手の不足に悩む農家の実情についてお話を聞きました。猛暑の中、ご自身の農地で研修員からの畳み掛けるような質問に快く答えてくれた松崎さんは、「日本の農家のことを知って、ここで話したことをそれぞれの国で役立ててもらえればとても嬉しい。一回で終わるのではなく、継続して研修員に来てもらうことで日本の農家についての理解を深めてもらえると思う」と、笑顔で答えてくれました。

京都の底力

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コースリーダーの河村能夫教授(写真:右から4番目)、南丹農業改良普及センターの轟さん(写真:右)

本研修のコースリーダーとして視察を引率してくれた龍谷大学経済学部の河村能夫教授は、「京都の素晴らしいところは、蓄積された知識や技術を放っておくのではなく、新しい考えとともに発展させている点だ。京都は農家と市場をリンクさせたり、研究成果を還元したりすることによって、よい方向に動いている」と話してくれました。研修員の皆さん一人ひとりが今日学んだ京都の取り組みから得た知見をそれぞれの国に持ち帰り、近い将来、自国の地域活性化の担い手として活躍されることを期待しています。