【特別編】国際協力の経験を東日本大震災被災地支援へ! —世界で培ったノウハウを日本で活用—(NICCO)

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折居NICCO事務局長

今回は、関西の底力(特別編)として、国際協力の経験を活かして東日本大震災の被災地支援を行っている国際協力NGO「公益社団法人 日本国際民間協力会(NICCO)」の折居事務局長にお話を伺いました。どのような被災地支援を行っておられるのか、国際協力の経験が、国内での協力である東日本大震災の被災地支援にどのように活かされたのかなど、とても興味深いお話でした。

発生から支援決定までの経緯を教えてください。

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医療団を派遣しての巡回診療

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仮設住宅入居者を対象とした心理社会的ケアプログラム

地震発生時(3月11日(金))は京都でも大きな揺れを感じましたが、震源が東北だと聞いて只事ではないと認識しました。30分後くらいにはジャパン・プラットフォーム(JPF)(注1)から緊急支援の招集がかかり、事務局で対応を検討した結果、午後6時ごろには支援の実施を組織決定しました。

また、検討と並行して、JPFやこれまで一緒に仕事をしていた桑山紀彦医師(注2)などとも連絡をとり、どのように現地入りして活動するのか、ニーズはどこにあるのか、などの確認を行いました。個人的に国内での支援活動は初めてでしたが、海外の経験をあてはめながら動いていていました。たとえば、海外の支援でも最初の段階では医療と物資なので、今回もそのような内容で問題ないか確認したところ、大方そのとおりでした。

これらを踏まえ、情報収集を目的にまずは調査団を派遣することとし、私(折居)を含む職員3名が現地入りすることになりました。

12日(土)は装備点検、情報収集、13日(日)は山形までの移動、山形での打ち合わせ(桑山医師が名取より来訪)を行い、現地入りしたのは14日(月)の早朝でした。名取よりニーズ調査を開始。16日(水)には自衛隊により道路が通行可能となったと聞き、翌17日(木)は陸前高田でも調査を実施しました。これらを踏まえ、名取では医療支援を、陸前高田では医療に加えて物資配布を実施することとしました。

(注1)JPF
ジャパン・プラットフォーム(Japan Platform)。自然災害、国際緊急援助、復興支援等を迅速、効果的に実施する、国際人道支援システム。NGO、経済界、政府のパートナーシップにて運営。
(注2)桑山紀彦医師
宮城県名取市にある東北国際クリニック院長。世界各地での医療活動の経験などを基に、映像と歌で世界各地の様子をつづる「地球のステージ」も開催。

支援内容は?

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学生ボランティアによる清掃作業

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子どもを対象とした心理社会的ケアプログラム

18日(金)には看護師が名取に入り活動を開始しました。20日以降は陸前高田にも医師を派遣し診療活動を行い、5月以降は心理社会的ケアに順次移行していきました。物資については20日(日)から配布を開始しました。物資はJPFを通じて企業から寄付された発電機、洗濯機、衛生用品等や、ソーラーパネル付きのLEDなどを配布しまた。海外支援でJPFの知名度があったため、企業もJPFを通じてなら寄付しやすかったのではないでしょうか。

反省点や課題はあったのでしょうか?

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専門技術者によるペストコントロール(害虫対策)

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避難所での炊き出し

行政とNGO間でのコミュニケーションが十分でなかった点は反省点。現場レベルでは情報交換を行って事業は実施していたし、今回は支援ニーズが膨大だったため、できる団体ができることをやることで重複などが起こることはありませんでした。ただ優先順位の高いところからきちんと支援ができていたのかは不安がありました。

行政との関係では、NGOが何か(行政がやるような)サービスを提供するという制度が、行政側に存在していなかった点が課題でした。被災時にも行政がサービスを提供する前提で、そこに個人ボランティアがお手伝いする程度の想定しかされていませんでした。

今回の教訓を踏まえ、他のNGOとも連携して、NGOも交えた災害支援調整の場や制度を設けるよう提言していければと考えています。

そのほかに海外で活動をしていたことのメリットはありましたか?

海外の支援団体からもJPFなどに支援の申し出がありましたが、このような申し出を受けて活動を実施することもできました。英語で手続きを行ったり、プロジェクトの評価を行う必要があったりといろいろとあるのですが、海外支援団体から資金を得て活動をすることは、これまでも海外の活動でしてきたので、支援先が海外から日本に変わっただけで特別なことはありませんでした。

また、これは海外で活動していたから、ということではないですが、我々のような外部者が活動することの必要性を感じられることもあります。東北地方は伝統的なコミュニティーが残っているところで、相互に助け合うことで津波の被害を乗り切ることが出来たと思うのですが、同時に人間関係がお互いに非常に深いため、例えば誰かに何かを話すとすぐにその噂が広がってしまうようで、被災者が周囲の人には悩みを打ち明けにくい状況があるようです。そこは外部者である我々が専門家を送って話を聞き、被災者の方の心の重荷の軽減に寄与できるところがあるのではないかと思います。

今後の活動について教えてください。

経済的な復興の手助けのため、ソウルオブ東北(注3)の活動にも協力しています。これは食を通じて東北の復興を助けるものですが、豊かな食文化を有し、またいろいろな食材の生産地である東北において食は重要な視点だと考えています。さらに田んぼの復興の支援も行なって行く予定です。

また、復興支援活動については、東北の人たちが主体的に復興するのを、外部者である我々が助けるというのがスタンスです。今後は現地をベースとしたNPOのサポートができればと考えています。海外活動で得たノウハウ、たとえば、FundRaisingや組織運営などのノウハウを、そのようなNGOに伝えていければと考えています。このようなノウハウを現地のNGOが吸収してくれれば、各地で集まる募金の受け皿にもなれ、より現地に根差した復興を、加速して進められるのではないかと思っています。

ありがとうございました。

※NICCOはこれまでの海外での活動が認められ2011年度の読売国際協力賞を受賞されました。(関連リンクを参照ください)

(注3)ソウルオブ東北
東北の食や文化の復興をめざし全国の料理人、生産者が活動を実施。

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