アフリカ留学生、ソーラーパネル製作をとおして見つめる自国の発展(株式会社オーエスエム)

2017年10月20日

2017年9月、映像用スクリーンメーカーの株式会社オーエスエム(兵庫県・宍粟市)が、ABEイニシアティブ留学生6人のインターンシップを受入れ、企業精神や事業内容を紹介するとともに、同社のクリーンエネルギー事業製品であるソーラーシートの製作実習を行いました。日照時間が長いアフリカからの留学生と、ソーラーシートとバッテリーのセットで新たな市場に乗り出そうとする日本企業、双方の想いと共に、期間中行われた様々な交流イベントを通して、「技術」「文化」の両側面から多くを学ぶアフリカ留学生たちの様子をお届けします。

アフリカ留学生・受入れ企業 双方の熱視線

1.ソーラーシート

2.実習風景

3.プレゼン風景

JICAの「ABEイニシアティブ」では、優秀で熱意に満ち溢れたアフリカの若手産業人材に、日本の大学院での研究に加え、日本企業でのインターンシップ(実習)の機会を提供しています。ABEイニシアティブ留学生は、日本の高度技術や職場での働き方に対する理解を深め、アフリカ諸国に帰国後、現地に進出したい日本企業にとっての「水先案内人」となることが期待されています。

今夏、株式会社オーエスエム(兵庫県・宍粟市)にて2回に渡り、アフリカ留学生合計12名がインターンシップを行いました。同社は創業60年を誇る映像用スクリーンの老舗、株式会社オーエスのマザーファクトリーとして、世界初の巻き取り式ソーラー発電機を開発。東日本大震災の際には、ソーラー商品を宮城県、岩手県、福島県に寄贈し、宮城県知事から感謝状が贈られる等、社会貢献度の高い企業です。アフリカ留学生たちは、手で巻くことができるくらい、薄く柔らかいソーラーシートを製作(写真1、2)。蓄電池と電灯につながっており、5時間ほど日に当てると、電灯を一晩中、もしくは携帯電話を1台充電できるほどの発電量になります。第2回目の受入となる今回、実習最終日には留学生一人ひとりが、オーエスグループの奥村代表や、指導担当従業員の方々の前で、自国でのソーラーシートの活用方法について、プレゼンテーションをしました。(写真3)

留学生たちの母国であるケニア・ザンビア・ナイジェリアなどのアフリカ諸国は、日照時間が長い一方、電気の供給は都市部を中心とした一部に限られ、都市部でも頻繁に停電があるそうです。「学校にノートパソコンがあっても、充電できる場所が離れていて使われていない。」と話すのはザンビア出身のウィリックさん(愛媛大学・理工学研究科)。民間企業・政府省庁出身など、様々なバックグラウンドを持った彼らが口を揃えて言う「ソーラーシートのメリット」は、「持ち運びのしやすさ」です。時間のかかる工事が必要なく、日中、農作業の傍ら蓄電し、夜は家の中で照明・電子機器の充電に使える。そして、夜間誰かに盗まれることもない。機動力を併せ持つソーラーシートの用途は、地方部での電力供給のみならず、政府施設・病院など重要施設でも利用価値があると発表していました。南アフリカ出身のノブラリさん(法政大学・イノベーションマネジメント研究科)は、「移動式ショールームや、教育関連キャンペーンやエネルギー会社と連携しては。」と、提案していました。

そんな彼らのプレゼンテーションに、地図やその国の経済状況を調べながら、奥村代表は一人ひとりに丁寧にコメントをされ、アフリカの中では再生可能エネルギー産業を推奨している国があり、税金などの優遇があることなど、留学生からの現地情報に関心を寄せていました。すでに香港にもグループ会社を構えるオーエスグループが、次なる市場として見据えているのがアフリカです。早くも中国製品が出回り出している中、日本ならではの技術の高さ・品質の維持力をもって、自社製品の市場参入の可能性を模索していました。自国でのキャリアがあるアフリカ留学生たちとのネットワークを足掛かりに、次のフィールドへと踏み出すべく、従業員の方たちも熱心に留学生たちに質問をされていました。

あたたかな手作りのおもてなしを通じて

4.甲冑の会

5.酒造見学

6.広場の国旗

アフリカ進出の足掛かりとしたい一方、インターンシップ受入れにはもう一つの理由がある、とおっしゃる奥村代表。それは、「地元宍粟市との連携」です。山間部に位置し、揖保川など豊かな自然がある一方、人の出入りが少ないため、「様々な人に来てもらいたい」という想いから、受入れを決めたとのこと。宍粟市とも連携し、ウェルカムパーティーでの市長挨拶や、週末は甲冑の会(写真4)での交流、酒蔵見学(写真5)、流しそうめんなど、たくさんのイベントが行われました。事務所の入り口や工場内の広場には、従業員の方が手作りで用意された、留学生たちの母国の旗が飾ってありました。(写真6)これらの心温まる歓迎を受け、アフリカ留学生たちは皆「とても感動した。これが初めてのインターンシップだが、ナンバーワンのインターシップだ」と話していました。また、工場内が清潔に保たれ、用具類が整理整頓されていることに驚いていた留学生もいました。「朝礼の時に、みんなでラジオ体操をするのはとても面白い」と話すガンビア出身のサホさん(国際大学・国際経営学研究科)は、従業員の方が「作業中けがをしないように、体をほぐしておくため」と説明すると、感心していました。技術だけではなく、現場で働く人々の習慣やおもてなしの心からも、アフリカ留学生にとっては学ぶものが多かったインターンシップでした。

JICA関西では、ABEイニシアティブにおいて、職場体験を希望するアフリカ留学生と、アフリカへの市場展開に興味のある中小企業のために、今後もインターンシップのマッチングをより強化し、事業を実施していきます。

業務第二課 河野由紀子