廃棄物管理研修コース、本邦研修の前にブラジルで補完研修を実施 ~現地からのレポート~

2019年8月30日

廃棄物管理能力向上(応用、計画・政策編)Cコース研修員が来日前にブラジルに参集

JICAの研修は英語で「ナレッジ(知見を)コ・クリエーション(いっしょに創造する)プログラム」と呼ばれ、日本が開発途上国を教えるという従来の一方通行な方法を見直し、日本も含めた参加国がそれぞれの知見を持ち寄って、解決するべき課題に対する持続可能な対応策をともに考えることで、新たな知見や価値を創造することを目指しています。廃棄物管理能力向上(応用、計画・政策編)Cコースは、そのような考え方や『アフリカのきれいな街プラットフォーム』※の取り組みに基づき、参加国がポルトガル語圏アフリカ諸国とブラジルに設定されており、2019年8月下旬から約2か月間、ブラジル、アンゴラ、モザンビーク、サントメプリンシペの4か国8名が公益財団法人 京都市環境保全活動推進協会(KEAA)のご協力のもと主に京都市で研修を行います。
このコースでは研修効果をより高めるため、来日前に全員がブラジルに集まり、ブラジリアとサンパウロの廃棄物管理を視察する在外補完研修を実施しました。
このたび、その補完研修に日本から派遣されたKEAA 新堀 春輔 事業第一課長からレポートが届きました。
 ※第6回アフリカ開発会議(TICAD VI)のフォローアップの一環として、都市の廃棄物に関する各国の知見・経験の共有、官民の資金動員促進、持続可能な開発目標(SDGs)の推進を目的とし、研修やセミナー、データ収集整備、情報発信などの活動を通じ、SDGsの目標年である2030年に「きれいな街と健康な暮らし」がアフリカで実現することを目指すもの

<現地からの報告>補完研修を通して見たブラジルのごみ対策事情 ~アフリカへの示唆、ウェストピッカー対策~

ブラジリア衛生埋立場

コンポスト自動分別工場(ブラジリア)

ウェストピッカー組合

自動資源分別工場(サンパウロ)

8月19日から23日の5日間、ブラジル連邦共和国のブラジリア連邦直轄区及びサンパウロ市内において、それぞれの廃棄物管理にかかる政策、取組についての研修を行いました。この在外補完研修でのねらいは、都市の規模や開発状況に応じた、実施可能でかつ持続的な廃棄物管理システムを考察することです。
<主な研修先>
●ブラジル首都清掃サービス公社(SLU)
  廃棄物回収拠点、リサイクル分別工場、がれき破砕処理場
 (旧Estrutural埋立場)、コンポスト自動分別工場、
  ブラジリア衛生埋立場
 ●サンパウロ市都市清掃機構(AMLUEB)
  Caieiras埋立処分場、エコポント(資源ごみ持込ステーション)、
  ごみ積替え場、Lapaコンポストヤード、自動資源分別工場、
  ウェストピッカー組合

ブラジルの大都市(ブラジリアは人口300万人、サンパウロ市は人口1200万人)における廃棄物管理では、すでに先進的なリサイクルのための自動分別工場等が導入されていたり、衛生的な最終埋め立て処分場が整備されていたりと、技術そのものの水準は非常に高いと言えます。しかしながら、分別工場のキャパシティをはるかに下回る量のリサイクル可能な廃棄物しか工場には入ってこないそうです。家庭での分別(こちらでは、埋め立てるものと、リサイクル可能なものの2分別)が十分にされないために、先進的な分別工場があるにもかかわらず、リサイクル可能なもののほとんどが埋め立てられている状況であるといいます。ブラジルでは技術的な課題よりもむしろ、いかに市民の理解と協力を得るのかという部分で、現在様々な取組を検討し、進めつつあります。

この在外補完研修での重要な研修内容として、カタドール(ウェストピッカー)の社会包摂の取組があります。日本ではなかなか想像しにくいですが、今回の研修の参加国であるアフリカの国々では、ごみ捨て場から有価物を拾ってその日の生計を立てる人々がいます。その環境は決してよいものではなく、病気になったり、事故に巻き込まれて亡くなったりするケースもあります。ブラジルの2都市では、このカタドールがごみの埋立場で無秩序に有価物を拾うのではなく、組合を組織し、廃棄物管理のパートナーとして連携しています。現在の状況になるまでのプロセスは決して簡単なものではなく、段階的に、多くの協議や研修の機会を設け、互いに信頼を築きながら進めてこられたものです。このような取組は、同じカタドールの問題に悩むアフリカの研修員にとって非常に参考になったようで、活発に意見交換や質疑応答がなされていました。

懐かしい再会 ~ブラジルの帰国研修員が講師として登壇~

エコポント(講師は帰国研修員)

帰国研修員と一緒に

最後に、本研修をポルトガル語圏で実施するようになり4年目になりますが、これまでに研修員として日本に研修に来られた方々が、今回の在外補完研修では視察先の解説や講義の講師を担ってくださいました。これまでの研修員の皆さんが活躍され、それぞれが研修中に学んだことを活かしつつ、活動を発展させている姿をみて、とてもうれしく、また頼もしく感じました。本年度の研修員も、同じコースに参加した先輩に色々と質問をすることで、これからの訪日研修への期待を膨らませていました。