長期研修員が琵琶湖をめぐる開発の歴史と教訓を学びました!

2019年11月16日(土)JICA関西は琵琶湖をめぐる開発の歴史と教訓を学ぶ地域理解プログラムを実施し、関西地域の大学院で学ぶJICA長期研修員(留学生)20人が参加しました。

2019年12月19日

関西特有の地域開発を学ぶ

「JICA開発大学院連携」は、開発途上国の未来と発展を支えるリーダーとなる人材を日本に招き、欧米とは異なる日本の近代の開発経験と、戦後の援助実施国(ドナー)としての知見の両面を学ぶ機会を提供します。

JICA開発大学院連携の一環として地域理解プログラムは、日本の各地で行われてきたその地域特有の開発事例について紹介し、研修員の理解を深めるために各地に所在するJICA国内機関が実施しています。
JICA関西が実施した今回の地域理解プログラムは、関西特有の開発事例の一つとして琵琶湖に焦点をあて、研修員は以下のような内容についての講義を受けました。

 1. 琵琶湖は日本一大きな湖というだけでなく、琵琶湖から流れる川の流域は関西地域の広範囲に及び、京阪神地域約1,400万人の水がめとして、非常に重大な役割を担っている。
 2. 日本の近代化の過程では、琵琶湖疎水の建設(1885年)が京都市の産業振興に寄与した。疎水は飲料水の供給だけでなく、水運による流通、水力発電により路面電車や街灯など生活の電化、織物工場の工業化等、経済的な発展をもたらした。(当時としては非常に大規模な一大事業の主任技術者には、当時大学を卒業したての若干21歳のエンジニア、田辺朔郎技師が起用された。)
 3. 戦後、高度経済成長期には東西の交通インフラ(名神高速道路や東海道新幹線)の整備などに伴い、滋賀県に進出する企業が増え始めた。1972年には利水・治水・水質保全のための琵琶湖総合開発事業が開始された。この開発事業は上流と下流の自治体が調整したことが画期的であり、水資源開発と地域整備事業を一体化した総合開発プロジェクトとして1997年まで実施された。このように社会基盤の整備ができたことで滋賀県(琵琶湖湖畔)の都市化と工業化が進んだ。他方で開発が進む中、琵琶湖の水質汚染問題や従来の生態系を乱す等自然環境への影響も報告されるようになった。
 4. 中でも合成洗剤に含まれているリンが湖に流入することで淡水赤潮が発生した。そして1970年代には、地域の主婦層がこの問題に立ち向かい、石鹸運動(無リンの洗剤の利用促進運動)が開始された。
 5. 石鹸運動は地域の多くの人を感化し、1979年、滋賀県はリンを含有した合成洗剤の使用、販売、贈答を禁止する条例を制定した。この事例は全国の行政と住民の協働による環境保全の先駆的モデルとなった。また、滋賀県では小学生を対象にした環境学習船「うみのこ」など琵琶湖を活用した環境教育にも取り組んでいる。

以上のような、開発による環境悪化、それに対する琵琶湖が現在に至るまでの開発の歴史と教訓を研修員は学びました。

その後、講義内容をより具体的に体感するために、研修員は琵琶湖博物館の展示を見学しました。

最後に一日のまとめとして、ラップアップセッションを2グループに分けて行いました。今回はアフリカ、南アジア、東南アジア、中央アジア11か国出身の研修員が参加し、日本だけではなく様々な国の事情や背景を踏まえながら意見交換が行われました。

参加した研修員のコメント

参加した研修員と紅葉を背景に集合写真

琵琶湖も背景に

・このプログラムに参加する前は琵琶湖というのは「日本で一番大きな湖で自分の大学から近い場所にある」という事しか知らなかった。しかし講義を受け、一番大きな湖という事だけではなく地元の方を含め関西の幅広い人々の生活に欠かせない役割を担っているという事に気づくことができた。

・滋賀県や周辺地域の発展において琵琶湖が如何に重要な役割を果たしてきたのか学ぶことができた。また、地域の発展が日本全体の発展に繋がった経験については自国においても参考にしたい。

・琵琶湖の基本情報の説明があったことで歴史・環境等をより理解することができた。地域開発や日本全体の開発経験について学ぶ上で、このプログラムはとても有意義であった。