近畿大学 法学部 3回生
川崎 志織
※2011年度までは、旧JICA大阪と旧JICA兵庫が、別々に業務を行っていました。以下の記事は、当時のものをそのまま掲載していますので、ご了承ください。
私は高校生の時に、母の勧めで『ホテル・ルワンダ』というルワンダ内戦についての実話をもとにした映画を観ました。同じ国で暮らす違う民族が争い、昨日まで仲が良かった隣人が、今日には敵となり殺しあうという恐怖におびえながら、友達や兄弟、親までも理不尽に奪われていく子供たち。この映画の中には、何度も目を覆いたくなるような光景がありました。このルワンダ内戦が起こった1990年から1994年の間、私は日本で生まれ、紛争の恐怖など感じることもなく生きていました。では、私が日本に生まれていなかったらどうなっていたのだろう?日本に生まれたからこそ、今、現在でさえも祖国を出て難民として生活している彼らに何かできることはないのだろうか?そう考えたのが、私が今、国際協力に携わりたいと思った動機です。
JICA大阪でのインターンシップを志望したのは、大学で国際協力論を学ぶなかでODAの担い手であるJICAがどのような仕事を行っているのか、教科書や講義だけじゃわからない「現場」を知りたいと思ったからです。これから就職について考えていかなければいけない時期に入るので、国際協力の現場で働くのがどういうことなのかを学ぶ、いい機会にしたいと思いました。
JICA大阪では9月5日から9月16日までのインターン期間中、主に「英語圏サブサハラアフリカ理科授業評価改善」という研修に携わらせて頂きました。アフリカ諸国の研修員と共に、研修委託先である大阪教育大学での研修員と教授とのディスカッションに出席したり、小・中学校での理科の授業の見学に同行したりして、研修のお手伝いをしました。研修員が自国の理科授業の現場での問題をプレゼンテーションし、大阪教育大学の教授とディスカッションを行ったのですが、その内容はどれも深刻で私の想像以上のものでした。
まず、実験器具や教科書の不足などが多く、さらには1クラスに実際は80人も生徒がいるということや、教員のレベルの低さが問題となっていました。このような問題を抱えながら、研修員はいかに授業を「生徒主体」、先生からの一方的な授業ではなく生徒が自ら進んで学ぶ生徒中心の授業にするか、ということをこの研修で学んでいました。アフリカ諸国の教員の国家指導員が研修員として来日しているので、授業見学の際は皆さん厳しく生徒や教員、授業の進め方をチェックしていました。しかし、ある小学校で、児童と一緒に給食をご馳走になったときに、研修員は児童に「将来は何になりたいか。」を問い、1人の児童が「物理学者。」と答えたときは、とても嬉しそうな様子でした。実は、アフリカでは理科に対して「魔術」のようなマイナスのイメージが根強く残っており、理科を好きな子供が少ないのが現状だそうです。彼らは「生徒主体」の授業がアフリカで実現して、理科を好きになる子供が増えることを目標にこの研修に参加しているのが伺えました。
研修員に同行しない日は、JICA大阪でのデスクワークを行っていました。研修員から集めたWeekly Reportという週ごとのアンケートを作ったり、回収したアンケートの翻訳を行ったりするのが主な業務でした。JICA大阪の職員の方々はとても親切で、困っているときはいつもいろんな方が助けてくださって、本当に楽しく業務を行うことができました。
今回、このJICA大阪インターンシップで学んだことは本当にたくさんありました。研修員に2週間同行して、彼らの国の教育現場の現状をよりリアルに知ることができましたし、何より彼らの国にある難民キャンプについての話は、私の将来の目標に関わることだったのでとても勉強になりました。また、自分の欠点も見つけることができたので、これから就職活動に向けて改善しなければいけないとも思いました。担当の方から、「川崎さんだから、何ができるのか」を考えること、とご指摘いただいて、結局インターンシップ期間中に見つけることはできませんでした。国際協力の現場では「専門性」が問われます。私はこれから国際協力の現場で働くことを目標に、「私だから、何ができるのか」をはっきりさせてそれを強みに活動できるようになろうと思いました。
まだ、大学卒業後の進路については模索中ですが、専門としている国際法の知識をより深めて自らの「専門」にしたいと思っています。今回、アフリカ諸国からの研修員とルワンダについて話す機会がありました。難民はまだ大勢いるし、問題も多く残っているとのことでした。これから卒業までに難民について研修員から教わったことを活かしつつ研究していきたいと思います。また、英語や他言語についての語学力、パソコンの知識など、インターンシップで発見できた自分の欠点を埋めていきたいと思っています。
JICA大阪でインターンシップをさせて頂けたこの2週間は、私にとって本当に実りあるものであったと思います。大学の講義だけじゃわからなかった国際協力の現場を学べて、より将来の夢への想いが強くなりました。また、JICA大阪の職員の方々に対する憧れもより一層強くなりました。お昼休みに貴重な体験を話してくださったり、多忙な中勉強会やプレゼンテーションをして頂いたり、至らぬところをご指摘して頂き、本当にありがとうございました。この経験を必ず活かして、国際協力の仕事をするに足る一人前の社会人になれるよう精一杯努力します。2週間という短い期間でしたが本当にお世話になりました。
インターン初日から研修員へのアンケートを作成し、研修への質問や生活で困ったことがないか積極的に聞き取りを行ってくれました。単に研修に同行するだけでなく、研修員1人1人の声を聞こうとする姿勢は大変素晴らしく、また、これは国際協力の仕事をする上で不可欠な要素です。どうかいつまでも変わらぬ姿勢で、ご自身の夢を実現されることを心から願っています。