国際協力推進員 大阪府担当
上野 貴子(うえの たかこ)
大阪府の国際協力推進員に就任しました上野貴子です。大学では国際文化学科に所属し、文化人類学の研究のためネパールに留学していました。その経験がきっかけとなり、卒業後、青年海外協力隊・村落開発普及員として、マラウイ共和国に2003年12月から2年間、北部の農業普及所にて女性グループを対象に換金作物の栽培や手芸や食品加工の指導などの所得向上活動を行いました。その後、2006年には大学での研究の経験を生かし、ネパールに渡り、小学校の就学率の改善に取り組む初等教育向上のプロジェクトの立ち上げに携わりました。帰国後は、東京の日本財団で主に開発途上国の障害者支援を目的として活動するNGOへの助成金事業を取扱う仕事を行いました。協力隊活動では人材や技術力だけでなく資金源の重要性を痛感したからです。その後、現地でNGOを助成する仕事ができないかと考え、在インド日本大使館の草の根無償資金協力担当に応募し、社会開発を目指すインドNGOに対する資金供与の後方支援を行いました。
マラウイ共和国や南アジアでのこれまでの海外経験を生かし、国際協力発信に携わる仕事を地元の大阪に戻ってやりたいと考えたからです。これまで仕事をした国ではJICAのプレゼンスもあり、海外に関心が高い若者もたくさんいました。特に経済時発展の目覚しいインドでは人々は自国に誇りを持ち、前を向いて生きていくエネルギーに満ち溢れていました。一方、帰国した日本では海外に関心も薄く、情報もテレビだけで十分という人も多く、世界との関わりや国際協力に対する関心の薄さに気づきました。そこで、関西の人々に発展途上国の現状や日本人の役割についてもっと知ってもらいたいと思いました。
私が派遣されていたマラウイ北部の村落では、私が初代の協力隊員だったため、人々は日本人や東洋人のことをほとんど知らなく、日本人の私に対してどのように対応していいのかわからないようでした。私もアフリカは初めてだったので、言葉の壁にぶつかりながら手探りで事を進めていきました。もっとも印象的だったのがマラウイの人々の素朴な人柄でした。マラウイの人々には、東洋人とは違う「はつらつさ」と言ったようなものがありました。特にマラウイの女性たちはパワフルでたくましかったです。家事においても、畑仕事でもひと際目立っていたのは女性たちの活躍でした。価値観の違いなどが原因で悩んだこともありましたが、私はそんな女性たちの生き生きとした姿に励まされました。
国際推進員の仕事を通じて、より多くの人に世界を知ってもらうためのきっかけ作りをしたいです。発展途上国の現状やそこでの日本人の活躍を知ってもらいたいです。今回の震災へは諸外国から多くの支援を受けましたが、とりわけ発展途上国からの心温まる対応には、これまでのJICAの地道な支援活動が反映されていたと思います。なかなかメディアで取り上げられることが少ない日本の支援ですが、こういった場面でつながりを認識することができるかと思います。テレビでは知り得ない断片的ではない世界の情報を伝えたいと思います。そして、将来的にはBOP(注1)やCSR(注2)分野に関心があるので、これから焦点を当てて勉強していきたいと思っています。
有用性だけにこだわったり、失敗を恐れたりせず、どんどん自分が関心の持てることを見つけてください。無駄な事は何一つなく、特に学生時代は人生の種まきの時間だと思います。多様な人、価値観や文化に触れ、よき人脈を作って自分の可能性を最大限に広げてください。後にたっぷり水をやれば大きく花が咲くことでしょう。
(注1)
BOPとはbottom of the pyramid(ピラミッドの底)の略。開発途上地域にいる低所得者層を意味する。所得別人口構成をグラフ化した時に、下から低所得者層(BOP層)、中間層、富裕層を積み上げたような三角形が出来上がるため、ピラミッドという表現を用いる。最近BOPをターゲットにしたビジネスが注目されておりJICAでも支援している。
(注2)
CSRとは企業が社会的存在として、最低限の法令遵守や利益貢献といった責任を果たすだけではなく、市民や地域、社会の顕在的・潜在的な要請に応え、より高次の社会貢献や配慮、情報公開や対話を自主的に行うべきであるという考えのこと。
インド:地方出張で申請者団体と案件調査を実施
ブータン:外務省の国民総幸福委員会の方々と
ネパール:シニアボランティア企画「ナマステ体操」
タイ:東南アジアの障害者支援事業で