【スタッフ紹介】和歌山の人々に「自分には何ができるのか」を考えるきっかけを作っていきたい

【画像】野村 実里(のむら みさと)

国際協力推進員 和歌山県担当
野村 実里(のむら みさと)

簡単に自己紹介をお願いします。

和歌山県担当の国際協力推進員に就任しました野村実里です。私は、和歌山県の御坊市出身で、高校卒業まで同市で育ち、兵庫県の大学(国際商学科)に進学しました。そして、大学在学中に、1年間の交換留学で中国の広州で勉強しました。留学中は、中国各地や東南アジアへ旅する機会もあり、色々興味深い経験をしました。大学卒業後は、大阪で中国系の商社に就職し、2年ほど働きました。しかし、その頃、もう一度海外に渡りたいと思い、青年海外協力隊に参加することを決意し、村落開発普及員としてキルギス共和国に派遣されることとなりました。キルギスでは、女性の地位・収入向上などを目的に現地の女性たちと一緒に石鹸作りに励みました。

この仕事を志望した動機は何ですか?

一番の理由は、和歌山県のためになる仕事がしたかったからです。私は、和歌山県民なのに和歌山で一度も働いたことがありませんでした。「キルギスから帰国した今こそ、自分を育ててくれた和歌山、大事な家族や友達のいる地元に、自分の経験を還元しないで何をする!」そういう思いが湧いてきたからです。

また、キルギスでの経験から、小さな村で地元の人たちと協力しながら働くことの楽しさを学びました。そして、そんな僻地でも、そこでの活動には国境を越えた大きな意味があると感じました。自分の経験を直接生かすことができる仕事、それがJICAの国際協力推進員だったのです。私がキルギスで行った活動と同じように、地元和歌山で世界へ発信することができるのはこの仕事しかありませんでした。

印象に残った海外での経験について教えてください。

村落開発普及員としての私の第一の目標は、日本から来たボランティアという立場ではなく、村の一員として受入れられることでした。そのために、自分だけの時間が全くなくなっても、村人とのコミュニケーションをとる時間を大事にし、できるだけ一緒に食事も取るようにしました。そういう生活を続けて1年目ぐらいの時でした。一緒に働いていた村の女性たちが、私にちゃんちゃんこ(ベスト状のもの)を作ってくれました。その村では、冬になるとみんな手作りのちゃんちゃんこを着ていて、私にはそれがキルギス人の目印のように思えて、とても羨ましかったんです。それを口にしたことはなかったのですが、秋に差し掛かってきた頃、「ミサ、あんたも、もうこっちに来て1年になるんだから。村の冬は寒いんだよ。」と言われ、手作りのちゃんちゃんこをプレゼントされました。その瞬間、村人の一員として認められたように思えて、嬉しくて嬉しくて涙をこらえきれませんでした。嬉しくて泣くということがキルギス人には理解できなかったらしく、「なんで泣くんだ!?気に入らなかったのか!?」とたいそうなだめられました(笑)。これが一番印象に残っている大切な思い出です。

それから、私の配属先の村には街への公共交通機関が乏しく、街へ出る時と村に帰る時は、車を持っている人に一緒に乗せて行ってもらわなければなりませんでした。ある日、私が街から村へ帰る際、隣村へ帰る人に乗せてもらい、家の前まで送ってもらいました。その夜、その車の中に自分のパソコンを忘れたことに気付きました。運転手の名前もわからず、隣村の人だということしか知らなかったので、あわててホームステイの家族に相談したところ、ホームステイ先のパパはすぐさま隣村まで車を出してくれ、心当たりの人の家をあたってくれました。「盗まれていたらどうしよう…。」「知らないと言われたらおしまいだ…。」など、悪い想像が頭をよぎって仕方がありませんでした。しかし、その思いとは裏腹に、運転手は私のパソコンを大事に保管していてくれたのです。その時「なんて素敵な民族なんだろう!」と感激しました。私は、この土地で思いやりの心を学びました。

今後の目標は何ですか?

和歌山県民に一番近い距離からJICAの活動や海外ボランティアの実態を知ってもらえる活動をしていこうと思います。英語がしゃべれなくても、海外にボランティアに行けなくても、和歌山県にいながらできる国際協力があるということを知ってもらいたい。地域にいる周りの人へ親切にするだけで、その思いやりの輪が広がり、世界にまで達すると、私はそう信じています。この仕事を通じて、国籍や人種など関係なく、人を思いやる心を育てていきたいと思います。そして、和歌山の人々に「自分には何ができるのか」を考えるきっかけを作っていきたいと思います。

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石けん作りの主要メンバー。母として、仕事人として、女性として、彼女たちは本当に強い。

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石けん作りに欠かせない薬草の刈り取り作業。家族総出の夏の一大イベントです。

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冬になると-25℃にもなるキルギス。真っ白できれいです。