「シンプルが一番」日本のライフスタイルは、Calm(静)

【画像】研修コース名:自然災害からの事前復興計画
研修期間:2013年1月6日から3月2日まで
トルコ 開発省社会分野調整総局 専門官
Mr. Hasan Coban (ハッサン コバン)

熱帯地域や亜熱帯地域から来日する多くの研修員にとって、寒い冬の野外活動は、おそらく暖かい屋内での活動ほど魅力あるものではないでしょう。しかし、寒さに負けず毎週末山歩きなどの課外活動に積極的に参加している研修員が、JICA関西にいます。トルコから2013年1月6日に来日し、「自然災害からの事前復興計画コース」に参加しているハッサンさんにお話しを伺いました。

Q.週末毎に関西の山に登っていると伺いましたが、普段から山登りをしているのですか?

健康のために早朝ジョギングを20年ほど行っています。7年ほど前から月に1、2度ハイキングを始め、2012年の8月にはアララト山(Mt. Agri 5,165メートル)に友人と一緒に登頂しました。日本で研修に参加することになり、機会があれば登山がしたいと思っていました。

Q.来日してから、野外活動を楽しんでいますか?

勝尾寺のだるま

はい。様々な登山グループと一緒に山歩きをしました。JICA職員から登山グループを紹介してもらい、週末に六甲山へ登りました。ロックガーデンを経て、途中で出会った人たちや神社仏閣、お地蔵さんなど、たくさんの写真を撮りました。約13キロの行程を歩いた後、有馬温泉に寄り、足湯を楽しみました。その後、仲間と一緒に神戸市内の炉端焼で「なべ」料理を囲みました。

1月20日は、様々な国籍や職業の人たち約25人と共に、箕面の滝まで歩き、持ち寄った食材で暖かい「なべ」料理を囲み、おかずを分け合って和やかな野外ランチを楽しんだ後、さらに勝尾寺まで登りました。このお寺の境内には、たくさん頭の部分だけの人形(だるま)がありました。参加者から、この寺には多くの政治家が参拝するという話を聞きました。その後、箕面の地ビールで喉を潤しました。

Q.楽しそうですね。その後もどこかに行きましたか?

はい、2月3日に、地元の山歩き会の皆さんと一緒に、地滑り資料館を訪れました。私が「ここへは数週間前に来たことがある。」というと、「私たちだって初めて来たのに、なぜ外国人のあなたが?」と不思議がられました。そこで、JICAの自然災害に関する研修に参加することが私の来日目的であると説明すると、とても驚いていました。この日、ハイカーたちは、みな煎り大豆を持っていて、辺りに撒いたり食べたりしていました。私もいくつか貰って食べました。

Q.その日は、ちょうど節分という季節の変わり目を祝う日だったからですね。日本に来てとてもいい経験をしたのですね。ところで、日本の山を歩いてみて、何か気づいたことはありますか?

「阪神淡路大震災1.17のつどい」追悼式典に参加したハッサンさん

はい、六甲山の植林にとても興味を持ちました。研修の中の講義で、六甲山が100年前は禿山だったことを学びました。その後、砂防植林を進めて、今のような緑の山になったということでした。植林は、とても効果的な方法だと思います。現在の六甲山を実際に歩いてみて、日本の人々の継続的な植林活動に尊敬の念を抱きました。トルコの首都であるアンカラの周辺の山は、禿山です。人々はそこでの植林は難しいと思っていますが、六甲山を見て、どんな山でも植林は可能なのだと認識を新たにしました。日本で成し遂げたことをトルコでもできればと思います。私が登る山は、アンカラからバスで2〜3時間の距離にあります。多くは人の手の入っていない自然林で、公共交通によるアクセスはありません。登山グループのリーダーはGPSと地図・コンパスを携帯して入山しますが、どこを登っているのかがわからなければ頂上までたどり着くことはできません。一方、大阪や神戸近郊の山は、交通機関からのアクセスが良く、道標や登山道が整備されていて、人々は手軽にハイキングを楽しむことができていいなと思います。

Q.最後に、研修に参加して印象に残ったことはありますか?

若栃集落に向かう研修員

研修の一環として東北の被災地である宮城県と新潟県を訪れ、また、新潟県の若栃集落でホームステイを体験しました。3メートルくらいの雪が積もる、静かな集落のお宅で温かいおもてなしを受けました。リラックスでき、ゆったりと流れる時間を体感できる貴重な経験でした。集落の人々はとてもフレンドリーでした。寒い気候が人々をより友好的にするのでしょう。トルコでの私の仕事は緊張を強いられる場面も多く、ストレスを抱えています。自分自身で物事を難しくして、よりストレスを強めている部分もあるのではないかと感じます。雪国での静かなひと時は、先のことに思い煩わされることなく、「シンプルに生きること」の大切さを私に改めて気づかせてくれました。

※「自然災害からの事前復興計画」研修とは?
近年、アジア諸国を中心に自然災害が多発し、被災国にとって災害復興が課題となっていますが、世界的にも復興の取組み方についてまとまった考え方は存在していません。本研修は、研修員が阪神・淡路大震災から復興した神戸市において、震災当時、現場で実務を担当した方々の経験から得られた教訓・反省を共有し、その教訓が東日本大震災においてどのように活かされたのかを学ぶことを目的としています。
2012年度は、8か国14人の防災に携わる行政官が研修員として参加し、JICA関西を拠点に、講義や視察などに積極的に取組み、日本が得た教訓を熱心に学んでいます。