【元JICA研修員】食の安全で母国モンゴルに貢献

【画像】研修コース名:食品安全のためのマイコトキシン検査技術コース
研修期間:2013年1月28日から4月20日まで
研修協力機関:神戸市環境保健研究所、名古屋市衛生研究所他
モンゴル監査庁総合中央研究所 微生物検査ラボ分析官
Ms. DORJGOTOV Sainjargal (ドルジゴトフ サインジャルガル)

皆さんは、「マイコトキシン」という言葉を耳にしたことがありますか?
「マイコトキシン」という言葉に、なじみのない方が多いのではないかと思います。「マイコトキシン」とは、カビが作る毒素のことです。落花生、豆類、香辛料、木の実類だけではなく、小麦、米などの穀類を含む多くの農産物を汚染する有害な物質で、代表的なカビ毒であるアフラトキシンは、強力な発ガン性物質です。

JICA関西は、2013年の1月下旬から4月中旬まで「食品安全のためのマイコトキシン検査技術コース」を実施しました。研修の参加者は主に、各国の食品検査機関のスタッフです。

多くの研修コースにおいて、参加研修員は帰国後の活動をまとめたアクションプランを作成します。今回、同コースに参加したモンゴルの女性から、アクションプランの実施についての活動報告が送られてきましたので、ここにその一部をご紹介します。

研修コースの印象とアクションプラン実施経験

JICA関西での閉講式後の記念写真(後列右から3人目が筆者)

セミナー風景

パンフレット

研究会議後に同僚と(右端が筆者)

研究会議で発表した報告

最高優秀賞のトロフィー

私は、「食品安全のためのマイコトキシン検査技術」コースに参加し、3か月間、JICA関西に滞在しました。スタッフ、研修監理員、講師陣は皆、私たちに親切に対応してくださいました。また、JICA関西が位置する神戸は、海や山の自然に恵まれているため、環境の違いによるストレスを感じることもなく、毎日、快適に研修に専念することができました。日本人は大変礼儀正しく、また友好的です。平和で互いに尊重しあう社会であり、私は、またぜひ日本に戻ってきたいと切望しています。この研修コースを通じて多くの経験を積み、新しい知識を得ることができました。ご指導下さった芳澤先生、中島先生、高橋先生、杉浦先生・・関係者の方々すべてにこの場を借りて御礼申し上げます。

さて、帰国後すぐに、私は研究所長に対して分析技術能力向上を目指すアクションプランを提出し、同僚にも内容を説明しました。幸いなことに、私のプランは所属機関内でも高い評価を得て、上部機関の了承もあり、実施が決定しました。研究所長の指示のもとワーキングチームが発足し、プランの予定表に従って必要な試薬・検査キット等も購入しました。分析に不可欠である高感度かつ高性能の分析機器やエンジニアも到着し、機器の操作開始に向けて準備作業が開始されました。私は、この準備期間を利用して、日本で学んだ検査法や技術を同僚達と共有し、2013年の9月には、主要なカビ毒のモンゴルにおける残留基準値を定めるための分析業務をスタートすることができました。
また、モンゴル国立大学の教授、厚生省の専門家、そして私たちの総合中央研究所ワーキングチームが中心となって、個人・組織・産業界・食品検査施設という幅広い人材を対象とし、「毒性の高いマイコトキシン汚染防止のために」と銘打ったセミナーを2日にわたり実施しました。これには、各分野から64人の参加者がありました。そして、9月26・27日には、総合中央研究所主催で、モンゴル国内で食品・飼料・環境検査機関を対象とする研究会議が開催され、私はそこで「食品や飼料中のマイコトキシンとそのリスク」というタイトルで発表する機会を得ました。14人の発表者のなかで、最高優秀賞を得ることができました。この講演の内容は、過去5年間のカビやカビ毒の分析結果、同じく過去5年間の癌研究所の公衆衛生報告、そしてJICA研修で得た知見からモンゴルの今後の分析法についての考えをまとめたものです。この会議には21の地域の検査所と6つの国境・都市検査所から管理職級の人々が参加しました。
次回は、地方の検査所の検査担当者に対象を広げて、カビ毒の現状と今後の分析法に関する知識や技術を伝播したいと考えています。このため、JICAモンゴル事務所には、引き続き協力を要請しています。

このように、モンゴルのマイコトキシン汚染防止のために検査の対象を広げ、精度も上げていきたいと考え、目標に向かって日々努力しています。多くのモンゴルの検査官がマイコトキシン検査技術を習得し、改善された検査方法によって被害を未然に防ぎ、人々が安心して農産品を口にできるよう、自分のできることを着実にやっていくほかありません。いろいろ困難もありますが、前向きに取り組んでいます。