アジア、アフリカ、中南米から来日した17人の研修員が、灼熱の京都で龍谷大学深草キャンパスを拠点に行われた「地方自治体行政強化(参加型地域開発)Aコース」に参加しました。講義、見学、ワークショップなど盛りだくさんのプログラムの運営と、暑さで体調をくずす研修員のフォローにと、新人コーディネーター米倉佳江さんがベテランの森孝夫コーディネーターのリードで初めての集団研修コースの研修監理員としての仕事に果敢にチャレンジしました。以下、米倉さんのレポートです。
龍谷大学で記念撮影
ひと・まち交流館京都で町屋模型を見学
座学の通訳をする米倉さん
平成25年7月から9月にかけて2か月間研修監理員の業務を行いました。研修員に日本の印象を聞いたところ、日本人は親切、時間を厳守する、街が清潔など、コメントはおよそ共通していましたが、誰もが「日本は暑い。」と言っていました。記録的な暑さの中、研修に通い、研修員は暑い日本の夏を実感しました。
今回は地方自治体行政強化の研修でしたが、その中で様々な質問が出ました。”What is community?” これを直訳すると「地域社会とは何ですか?」となります。ところが、大先輩の森コーディネーターは、「地域社会はどのような役割を果たしていますか?」と見事に訳されました。ご本人は気づいていないかもしれませんが、言葉に込められた研修員の思いまで瞬時に汲み取って的確に表現するのは経験のなせる技でしょうか。言葉どおりに訳す以上に、研修員のメッセージを酌み取る努力が必要であると感じました。
現地視察では京都北部の農村地域を訪問しました。 研修員は、「これは村ではなく都市だ。」と口々に言い、「上水道・電気・道路が整備されているのは村ではない。こんなに素晴らしい地域になぜ若者が住まないのか?」と不思議な様子でした。
多くの講義で伝えられた日本の課題「少子高齢化、農村地域の過疎化」は、若年層が多い途上国にとって、理解することは難しかったように見受けられましたが、高齢者が農村で頑張っている姿には感銘を受けたようでした。
研修員が支障なく研修を受けられるよう気配りするのがコーディネーターの仕事です。体調を崩す研修員もいて、病院にも同行しました。遅刻、講義中の私語、パソコンで映像を見るなど、目に余る時は注意を促しましたが、森さんと共に、研修員からFather(お父さん)、Mother(お母さん) と呼ばれ、何でも相談できる頼れる存在になれたことは大変嬉しいことでした。
研修員は、受入れ先の大学教授やスタッフ、訪問先でも温かい心遣いを感じながら、日本の良い思い出を一杯持ち帰ったことと思います。コーディネーターの仕事はいわば「橋渡し役」ですが、研修では日本の実態を再認識し、研修員からはそれぞれの国の持つ価値観など多くを学ぶことができるやりがいのある仕事と感じました。
*研修監理員とは
JICAは発足当初から国内で研修員受入事業を行っています。これは、国づくりの担い手となる開発途上国の人材を「研修員」として受入れ、技術や知識の習得、制度構築等をバックアップするものです。英語をはじめ、様々な言語で研修に参加する各国からの研修員と日本側関係者の間でコミュニケーションを円滑に行う、高い調整能力と語学力の要求される研修監理員(Training Coordinator)は、研修現場に欠かせない存在です。