ブラジル日系3世の松江さんが関西医療大学で日本鍼灸を学びました!

関西医療大学の先生方と松江さん(真ん中が松江さん)

研修コース名:鍼灸学
研修期間:2013年5月12日から2014年2月20日まで
国籍:ブラジル 
職業: 鍼灸師、薬剤師
名前:松江 カルラ まゆみ
技術研修実施機関:関西医療大学

日系研修員のおばあちゃんからのお手紙

おばあちゃん(松江 ウタ子さん)と松江カルラ まゆみさん

日系研修員の松江さんは、2013年5月に来日し、JICA横浜でオリエンテーションや日本語研修を受けた後、関西医療大学で鍼灸学の研修を受けるために大阪に移動して来ました。JICA関西の日系研修担当者が新大阪駅に松江さんを迎えに行き、滞在先の国際交流基金関西国際センターまで一緒に移動する途中に、松江さんが「おばあちゃんからの手紙があります。」と言って、1通のお手紙を手渡してくれました。日本鍼灸を学ぶために来日したお孫さんに対する思いやりに満ちたおばあちゃんからのお手紙でした。

松江さんのおばあちゃんの松江 ウタ子さんは、熊本県ご出身の日系一世です。第二次世界大戦後初めて出航した移民船「あめりか丸」に横浜港から乗船し、42日間の航海を経て1953年8月11日に日本人38家族と一緒にブラジルに上陸しました。2013年は、ブラジルに移民して60年目で、90歳になられたそうです。ブラジルでは日本語を書く機会がないのに、お孫さんのためにお手紙を書いてくれたおばあちゃん。お孫さんの松江さんは、とても明るい性格で、優しいおばあちゃんや暖かい家庭で育てられたのだとお手紙を読んで感じました。みなさんもおばあちゃんのお手紙を読んでみて下さい。

関西医療大学での日系研修

関西医療大学前で

研修中に鍼灸治療を体験している松江さん

日系研修員の2014年度年間受入計画人数は、全国で約120人です。JICA関西では、研修実施機関から提案を受けて、毎年数名の日系研修員の受入れをしています。特に、関西医療大学は、平成10年度以来継続的に日系研修員を受け入れ、松江さんは関西医療大学が受け入れした25人目の日系研修員です。「日系研修員は、人によって日本語能力や専門知識のレベルに差があり、研修員が希望する研修内容も異なるので、できるだけ研修員の要望に合うように工夫して研修プログラムを実施しています。松江さんは、たくさんの友達を作って、熱心に勉強していました。細かいところまで説明を聞き取って研修ノートにまとめていて、その研修ノートの絵や図が分かりやすいので、日本人学生が松江さんの研修ノートを写真に撮って参考にしていました。また、『患者さんになって実際に鍼灸治療を受けないと効果が分からないから』と、鍼灸治療を体験していました。今まで受け入れた日系研修員の中でも一番性格が明るくコミュニケーション力があり、大学では灸道部に参加するなどしてたくさんの日本人学生と仲良くなって人気者でした。」と、関西医療大学で日系研修員を指導していただいている楳田先生と中吉先生からお聞きしました。 

鍼灸学の日系研修員は、中南米諸国の専門学校や大学で主に中国鍼灸を学んでから来日します。日系研修員は、「中国鍼灸と比べて日本鍼灸は鍼が細く、浅く刺して痛くないうえに治療効果が高い。中南米では日本鍼灸を勉強する機会が少ないが、関西医療大学で有益な日本鍼灸の技術や治療方法が学べた。」と、関西医療大学での研修を高く評価しています。 関西医療大学で日本鍼灸を学んだ帰国研修員は中南米各地で日本鍼灸の普及に努めています。

日系研修の必要性と今までの成果

『独立行政法人国際協力機構(JICA)は、中南米地域への日本人の海外移住の援助を実施し、JICA の関わる移住者として中南米地域に計約73,000 人が移住しました。さらに、日本政府による日本人の海外移住は、1868 年のハワイ移住に始まり、現在、中南米地域の日系人人口は150 万人を超えるものと推定されます。
JICA の前身である海外移住事業団(JEMIS)は、農業移住者の後継者育成を主目的として1971年に移住研修員受入事業を開始しました。1974 年の海外技術協力事業団(OTCA)とJEMIS の統合により、移住研修員受入事業はJICA が担うこととなり、1997 年には日系研修事業に改編しました。日系研修事業は、中南米地域への日本人移住者子弟である日系人への技術協力を通じ、移住先国の国造りに貢献することを目的としています。
移住研修員受入事業及び日系研修事業により、JICA は2011 年度までに計15カ国から計4,697名の日系人の受入を行ってきています。日系研修事業は、医学、福祉、継承日本教育、農業、電気・通信等、幅広い分野で日系研修員を受入れ、日系人の能力向上を図ることをもって、移住先国の国造りに貢献してきています。
2000年に外務省海外移住審議会により公表された「海外日系人社会との協力に関する今後の政策」において、今後の具体的対応策としてODA を通じて日系人の人材育成を推進することが提言されました。また、外交青書(2013年)において、わが国は「勤勉さや経済発展への貢献を高く評価されている日系人の存在は、日本にとり重要な外交資産」としています。日本企業の海外展開が進み、中南米地域との経済関係は増々深まる中、両国の懸け橋である日系人の人材育成を図る日系研修事業は引き続き重要な事業の一つです。』
(上記『』内の文章は平成26年度日系研修員受入事業提案募集要項より引用)

松江さんの帰国後の計画

研修中に鍼灸治療を体験している松江さん

鍼灸学の研修を修了した松江さんは、帰国後の計画について、「今回の研修で習得した日本鍼灸の技術と知識を活かします。ブラジルでは、鍼灸は病気やけがの予防のための技術と認識されています。日本では、伝統的な薬の知識とEBM(Evidence-Based Medicine: 実証的医療)を組み合わせながら鍼灸治療を実践していることが素晴らしいと思います。ブラジル帰国後は、鍼灸学を教えている学校に就職し、関西医療学で学んだ日本鍼灸を生徒に教え、ブラジルに普及させたいと考えています。また、将来的には、クリニックでEBMを基にした鍼灸治療を患者へしたいと思います。」と述べていました。

日系研修は、原則日本語で実施されます。関西医療大学での鍼灸学の研修では、一般の日本人でも難しい漢字の専門用語を理解して読み書きできるようになる必要があります。松江さんは、専門の勉強だけでなく、日本語の習得にも熱心でした。帰国後は、昼間は専門学校などで鍼灸を教えて、夜間は大学で更に日本語を勉強する計画があり、将来は鍼灸と日本語の知識を活かして、日本語の鍼灸学の本をポルトガル語に翻訳したり、日本の先生がブラジルで鍼灸の講義やセミナーを開催するときに専門通訳として活躍するなど、鍼灸と日本語に関する仕事に就きたいという将来の目標があります。松江さんは研修を修了し、2月にたくさんの思い出と一緒にブラジル パラナ州クリチバ市に帰国しました。きっと、松江さんの無事の帰国を待ちわびていたおばあちゃんやご家族にたくさんの日本のお土産話をしていることでしょう。将来は目標を達成して、日本鍼灸を日系人やブラジルの方々の健康のために役立てていくことが期待されます。

神戸と海外移住の歴史

JICA関西のある神戸市には、日本で唯一現存する海外移住の歴史に関連する建物「海外移住と文化の交流センター」があります。「海外移住と文化の交流センター」は、JR元町駅から徒歩で北へ坂道を約15分上ったところに建っています。1928年に神戸移住センター(当時の名称:国立移民収容所)として設立され、1971年に閉鎖されるまで、日本における海外移住の基地として、南米を中心に多くの移住者を海外に送り出した歴史のある建物で、1995年の阪神淡路大震災でも倒壊せずに残りました。その建物が保存・整備されて、2009年に「海外移住と文化の交流センター」として再開館しました。現在、建物内には財団法人日伯協会やNPO関西ブラジル人コミュニティの事務所があり、ポルトガル語講座や国際交流イベントなどが開催されています。また、神戸に関連する海外移住資料の展示・移住ミュージアムがあり、海外移住の歴史や当時の街並みを写真や映像で紹介しています。日系人の歴史に興味のある方は、訪れてみてはいかがでしょうか?

JICA関西 研修監理課 松野淳子