JICA研修員の帰国後レポート(マリリアさん/ブラジル)

【画像】役職名:環境分析官、ブラジル環境省
名前:Mrs. VIOTTI, Marilia Moreira
研修コース名:廃棄物管理技術(基本、技術編)
研修期間:2014年5月12日から2014年7月5日

本邦研修で作成したアクション・プランが、政府の新たな制度の施行という形で実現した、というお知らせが、帰国した研修員から届きました。

リバース・ロジスティクスを活かしたブラジルの廃棄物対策

ブラジルの廃棄物政策は、2010年8月に発効した法番号12.308/2010で、理念、目的、方法などが定められおり、この法律に基づいて、有害廃棄物の取り扱いやゴミを出す側の責任に関する条例なども定められています。
その中心は「製品ライフサイクルでの責任分担」の原則です。この原則には、製造、貿易、流通、小売、消費者および公共清掃・廃棄物管理サービス供給者が、製品ライフサイクルにおける適切な廃棄物の管理責任を分担するというものです。
また実施面では「リバース・ロジスティクス・システム」つまり製造者側がゴミの収集、運搬までを視野に入れ、サプライ・チェーンの中でリサイクル/リユースするメカニズムを取り入れています。
ブラジルの廃棄物政策では、法規、セクター合意、協定の3段階でリバース・ロジスティクスを徹底しようとしています。
特に、ブラジルにおける蛍光灯のリバース・ロジスティクスは、製造、貿易、流通の製品サイクルに沿って責任分担ができるよう、政府がセクター合意を促進しました。
都市化に伴うゴミの増加に加え、電力需要と水銀蛍光灯の増加がその動きを後押ししました。ブラジルで普及している水銀を含む蛍光灯は、取扱や廃棄が難しく、環境汚染や健康被害を引き起こす恐れがあり、もっと安全/長寿命で経済的な照明灯への切り替えが叫ばれています。

環境分析官として

少女のときから、ブラジルのすばらしい生物多様性、伝説的なアマゾン流域の熱帯雨林などに魅せられた私は、環境分野で働くと決めていました。 大学では森林利用学、大学院では環境汚染制御を学び、その後、アマゾン流域での伐採と製材から出る廃棄物の量を予測する政府プロジェクトでコンサルタントとして働きました。そのプロジェクトで廃棄物の増加がブラジルで今後大きな問題となると感じ、廃棄物管理に従事する決意をしました。 現在、私はブラジル政府環境省の分析担当官として働いています。政府のリバース・ロジスティクス推進チームのメンバーでもあります。

日本での忘れがたい経験

研修コースで私は得難い経験をしました。主な研修地は大阪でしたが、幸運にも、東京、京都、広島、福岡、北九州、神戸、美しい北海道にある北見などの土地を訪問し、廃棄物処理、リサイクル、最終処分施設などを訪問できました。
日本に来た当初から、驚きの連続でした。日本人の礼儀正しさ、やさしさに日本に到着した直後数時間のうちに惹きつけられました。自らの文化、組織への敬意、街と公共施設の清潔さを羨ましく感じたものです。
自由時間には、宿舎の周りをウオーキングしました。日本語がほとんど話せなかったにもかかわらず、何かを聞きたいときや道を尋ねるときにも多くの人々と交流できたのは神様のお恵みかと思いました。
ある日、神戸で電車の隣に座った女性のことは忘れられません。電車を乗り間違えた私を、自分が電車を降りて、駅に戻る別の電車に乗せてくれたのです。その人は英語もポルトガル語も話せず、私も怖くてどういう風に道に迷ったと伝えたか覚えていません。ただ私が言えたのは降車する駅の名前「NADA(灘)」だけでした。彼女は優しく私に話しかけ、思慮深く聞き取ろうとし、私は何とか落ち着きを取り戻しました。彼女は私を勇気づけてくれ、すべてが順調だと思わせてくれました。そしてついにわたしは目的地に安全にたどり着きました。
もし作家の才能があったら、日本での経験がどれほど意義深かったか小説がかけたかもしれません。確かなことは、私の心には永遠に、日本、日本人、先生方、JICAの人々、そして7か国からあつまった素晴らしい仲間の思い出が残ってるということです。

研修の成果・アクションプランが実現

セクター合意署名式の様子
写真提供:ブラジル環境省Martim Garcia / MMA

写真提供:ブラジル環境省Martim Garcia / MMA

私は日本での研修で貴重な知見を得ました。日本が効果的な収集、運搬、処理、処分システムをどのように構築してきたかを現場、プラント、施設等の見学を通して知ることが出来ました。焼却施設のような中間処分場、周辺の人口集中地帯に環境影響を与えないように運営されている埋立地が特に印象に残りました。
日本社会は徐々に、ゴミ発生を抑え、再利用し、量を減らす、原材料リサイクル社会への道を歩んでいます。私は本当にたくさんのことを学んだと思います。
コースでは「ブラジルにおけるリバース・ロジスティクス実践のための啓発、水銀蛍光灯の適切な管理とリサイクル」という表題でアクション・プランを作成しました。
そして、政府と民間企業の代表から結成されたグループの努力の結果、これらのリバース・ロジスティクスを施行するセクター合意が2015年3月12日に発効しました。
先に述べたように、今や、消費者、製造業者、貿易業者、流通業者は、蛍光灯廃棄物の適切な管理に責任を負っています。ブラジルは貴重な原材料のゴミからのリサイクル技術を更に強化する必要があります。
ブラジルの廃棄物管理にはまだまだ遠い道のりがありますが、我々は廃棄物全般のリサイクルのレベルを上げるためにたゆまず働いています。