研修コース名:廃棄物管理能力向上(応用、計画・政策編)(A)
研修期間:2015年6月15日から2015年7月11日
役職名:講師、ソロモン諸島国立大学
名前:Ms. Mary Margarita Tahu
南半球のソロモン諸島から、日本での研修成果をさっそく活用したとの報告がありましたのでご紹介します。
Mary Margarita Tahu(以下「マリー」)先生はソロモン唯一の大学の講師として環境を教えるかたわら、同時に日本のNGOこども環境活動支援協会(LEAF)(兵庫県西宮市)がJICAと同国で実施している草の根技術協力「New3R(リデュース、リユース、リサイクル+リターン)の理念を踏まえた官民協働による家庭ごみの分別収集システム構築プロジェクト」の 協力メンバーでもあります。
同草の根プロジェクトは、首都ホニアラ市役所と一緒に、マリー先生のような各界のキーパーソンの協力を得ながら、市民の間に3Rを普及させ、ゴミ問題を改善するため様々な活動を行っています。
マリー先生のソロモン諸島国立大学は草の根プロジェクトに学術的知見を提供するのみではなく、学生の教育を通じて、将来を担う人材に新しい知識を紹介する場にもなっています。
講義を行うマリー先生(写真提供:LEAF)
我がソロモン諸島でも、ゴミは、量の増加とそこから発生する環境汚染という点から大きな問題になっています。統計によると現在出るごみの40-50パーセントは生ゴミです。しかし、都市化が進む今後18年のうちには、それ以外のゴミが現在の2倍の量になると言われています。
ソロモン環境・気候変動・災害管理気象省(The Ministry of Environment, Climate Change, Disaster Management and Meteorology ,MECDM)が1998年に制定された環境法に則り、法律の整備や政策の実施を担ってきました。
日本での研修は、私にとって刺激になるもので、大きな影響を残しました。主な研修地は西宮でしたが、大阪、神戸、京都、広島、美しい宮島などでも、廃棄物管理、リサイクル、有機農法等の施設訪問や、学校、コミュニティでの交流を体験できました。
研修を通してたくさんの貴重な情報や技術、更に、日本がどのように効果的な収集・運搬・処理システムを発展させてきたかを学ぶことが出来ました。
特に興味深かったのは、生ゴミを用いたコンポスト、ゴミの分別が、小学校、保育所、大学など様々な場所で教えらえていたことでした。
また、日本の人々の日常のマナーの良さ、上手な時間の使い方に感心しました。講義が始まる前には講師も含めて全員がそろっていることや、清潔に美しく保たれている街並み、これらは特に印象に残っています。
草の根プロジェクト岸本マネージャーによるプロジェクト紹介(写真提供:Mary Tahu)
浅利先生の講義の様子(写真提供:Mary Tahu,LEAF)
私が日本での研修の最後にまとめたアクション・プランのテーマは「ソロモン諸島国立大学での教育啓発を通じたコンポスト技術を活用した廃棄物管理の普及」です。
同プランで私は、学生にゴミの分別を定着させ、また浅利博士(LEAF理事)の講義を受けさせて廃棄物管理に関するさらなる知識の習得を促したいと思いました。
そして、そのプランの第一歩は、草の根プロジェクト現地マネージャー岸本さんの協力のもと、9月29日に1、2年生65名が浅利先生の講義を受けたことで達成できました。
講義では、浅利先生が教鞭をとる日本の京都大学の学生が行ったゴミ種別調査が紹介されたのですが、学生たちは研究の一環として、自治体と大学が協働で行う家庭ごみ細組成調査に参加したのだそうです。また、浅利先生はソロモン、特にホニアラ市のゴミ組成についても言及されました。
この講義を通じて、学生たちは、なぜゴミ問題が重要であり、個々人の緊急の行動が求められているかを理解したと感じられました。講義後のアンケートでは高い評価とともに多くの質問が提起され、自分たちもボランティアとして廃棄物管理活動に参加したい、というコメントが出されました。
さっそく10月15日の大学オープンデーでは、学生ボランティア5グループがゴミ分別、収集に参加。それぞれの担当場所で3種類のゴミ袋(1:プラスチック、ペットボトル、2:紙、3:瓶、アルミ缶)を使い、1日がかりの任務を完遂しました。
ゴミ拾いをする学生ボランティア達(写真提供:LEAF)
今後は、School of Natural Resources and Applied Sciences (SNRAS)の学部学生たちがキャンパス全体のゴミ管理に主体的に取り組み、大学全体に影響を与える存在になってもらいたいと思っています。
また、コミュニティや学校での教育・啓発プログラムの立案にも携わることが出来るようになれば、と期待しています。
我が国のゴミ問題改善のためには、リサイクル施設などのハード整備だけでは限界があります。しかし、今回開始したような、ハード整備と連携したかたちでの、大学を含めた学校やコミュニティでの生ごみコンポスト活動はその改善への効果的な第一歩となることでしょう。