研修コース名:残留農薬分析研修
研修期間:2015年8月16日から2015年10月17日
役職名:エチオピア農業省 残留農薬検査所 残留農薬分析官
名前(呼び名):Ms. GELETA Haymanot Derese (ハイミー)
研修実施機関:日本エコテック株式会社 大阪分析センター
Ms. GELETA Haymanot Dereseさん(以下、ハイミーさん)は、エチオピア政府が農業省内に新設した残留農薬検査所に所属しています。エチオピアの主な農産物輸出品はコーヒー、家畜、皮革、ゴマですが、これらの輸出促進による外貨獲得は国民の生活向上のためにも重要な課題です。
ハイミーさんの所属する検査所は、2008年に輸出用コーヒーから検出された残留農薬の問題に対応し、食品の安全性を確保するために設立されました。しかしながら、農薬分析経験を持つ人材が乏しいため、導入された分析機器も使いこなせず、検査も農薬汚染経路特定についても何もできない状態が続いていました。この問題解決のため、「農産物残留農薬検査体制・能力強化支援プロジェクト」(関連リンク参照)が開始されました。残留農薬検査機能を強化するには、いうまでもなく検査を行う人材を育成しなければなりません。現地でカバーできない技術を補い、また、数多くの試料分析経験を蓄積するため、日本での研修が行われるようになりました。
2か月にわたる研修を終え、帰国したハイミーさんから日本での経験を記した報告が届きましたので、その一部をご紹介します。
分析実習中のハイミーさん
日本エコテックの研修現場—お世話になった大坪さんと
私にとって、今回の研修は、2013年に続いて第二回目の研修でした。前回は、自宅から遠く離れることが初めての経験でしたのでとても緊張しましたが、今回は懐かしい人々に再会し、懐かしい場所も訪ねることができるため、幸せな気分で来日しました。エチオピアのアジスアベバ空港から関西空港まではドバイ経由で23時間の空の旅でした。研修員は、私一人だけの個別研修で、誇り高い日本の人々から学び、またくつろいだ気分にしてくれる、この日本での滞在を楽しむということはすばらしい経験といえます。
私の研修は日本農薬株式会社の研究センター内に位置する日本エコテック株式会社で行われました。堺市のホテルから河内長野まで毎日電車とバスで通い、コーヒー豆、ゴマ、はちみつ、果実や野菜などの農産物中の残留農薬分析についての研修を受けました。
また、ガスクロマトグラフ・タンデム型質量分析計(GC/MS/MS)や液体クロマトグラフータンデム型質量分析計(LC/MS/MS)などの様々な高性能分析機器を操作するという貴重な経験もできました。指導いただいた皆さんには心から御礼申し上げます。
日本人の特徴については、様々に表現することができます。親切、礼儀正しい、勤勉、相手を尊重、時間厳守、頼りがいがある、秩序立てて物事に行う、そして内気です。この中でもとりわけ印象的なのは、時間厳守であるということです。私は、日本でこの時間厳守を経験しましたので、生涯忘れることはありません。日本人が8時57分と言ったら、それは8時57分を指し、けっして8時55分や9時を意味しないということには、本当にいつも驚かされました。それまで何事も時間どおりには、始まらないものと思っていましたが、日本では1分や2分が大きな意味を持つということを知りました。時間は非常に重要であると考えられている日本だからこそ、日本人は世界で最も時間を厳守するのだと思います。
研修内容についての討議
成果発表
今、私はコーヒー豆に残留する農薬の分析を行っています。職場の研究室で、日本で得た知識を同僚たちに共有していますが、現在扱っている試料はコーヒー豆だけですので、新しく習得した技術や知識は次の段階で適用することになっています。2か月後には、ゴマ、果実、野菜のサンプルの残留農薬分析が始まりますので、その時には新しい技術や手法を直接に適用することができます。とても楽しみですが、今は学んだ技術レベルの精度を上げるよう、分析に精を出しています。
私の希望は、この研究室が、試料数と検査精度に関してナンバー1になり、そしてエチオピアのみならず東アフリカの検査研究室の手本であるモデル研究室になることです。そのためにも、より正確な分析ができるよう、一層努力したいと考えています。
JICA関西 研修監理課 横谷 貴美絵