青年海外協力隊の活動を振り返って〜帰国後の任国との繋がり〜

【画像】平成15年度2次隊
任国:ハンガリー
職種:剣道
氏名:木部 篤生

平成15年から平成18年までの3年間、青年海外協力隊のハンガリー国剣道連盟の剣道指導コーチとして、地域での剣道普及、首都での剣道普及・強化および事務局アシスタントの活動をしました。帰国からはや9年2か月が経とうとしています。帰国後、公益社団法人(当時「社団法人」)大阪府剣道連盟に勤め、現在は事務局長として勤務しております。帰国後もハンガリー剣士達とのお付き合いが続いており、その一部をご紹介させていただき、現在の心境も記したいと思います。

今もハンガリー剣士でにぎわう我が家

隊員時代の木部さん

隊員仲間たちと

ハンガリー剣士達の大阪滞在中、我が家はウィークリーマンションと化しています。現在までの間、大阪大学外国語学部(前大阪外語大学)に2名が留学。この二人、週末に我が家にやって来て栄養をつけて寮に戻るという生活をしておりました。剣道修行・居合道修行の為に数日滞在する剣士も多数で、共に稽古して、その後は、「第2道場」・「反省会」と名付けて、酒を酌み交わしたりしております。剣士達にはJR天満駅界隈の「立ち飲み屋」が好評で、そこでは「半身の構え」を学んでいきます。また、日本への観光旅行で家族と共に来日する剣士も我が家へ立ち寄ります。彼らが滞在するお蔭で、私の料理のレパートリーも増え、剣道よりも料理の方が上手になったかもです。彼らの好みメニューは、キムチ鍋、お好み焼き、焼きそば、焼き豚、焼き餃子、ポテトサラダ、酢漬けのサラダ、カキフライ、唐揚げなど結構しっかり味が付いたものです。もちろん、刺身・寿司・豆腐・納豆・ラーメンなど日本食には大きな興味を持っています。

教え子の成長を実感

2015年世界剣道選手権大会で(後列右から2人目が木部さん)

2015年5月に日本武道館で世界剣道選手権大会(3年に一度)が開催された際、私はハンガリー国剣道連盟のコーチとして招聘され、ハンガリー剣士達の活躍を目の前で観戦し、震えるような感覚・涙が出る感動がそこにありました。準決勝で惜しくも日本に敗れましたが、この大会で、欧州としては初めて、男子団体の部において2大会連続の3位入賞を獲得しました。自国では指導者としての活動もしながら、この大舞台で選手として正々堂々と試合をしている教え子の姿はとても立派で、試合態度やその精神力の安定と強さ、背中の大きさ、技術力・技能力の高さは、この大会後、剣道界では大きな話題となりました。
大会前々日のミーティングで「俺たち、あなたから学んだものをこの大会でちゃんと出すから、しっかり見てくれ!」との言葉。彼らと共に剣道ができたこと、彼らに追い抜かれたかなぁ〜と感じたこと、それに、彼らはこれからももっともっと強くなるなぁ〜と感じたことが、この震えと涙となって、大きな幸せを感じました。彼らはきっと選手としての誇りと指導者としての自信をお土産に帰国したことと思います。もちろん、私にとっても彼らは大きな誇りです。ハンガリー剣士の今後の益々の活躍・同国での剣道の普及発展を期待しているところです。

第二の祖国、ハンガリーに感謝

2006年台北での世界大会

「先生、ハンガリーに遊びにおいでよ〜」と皆が嬉しいことを言ってくれるのですが、平成22年5月にハンガリー国デブレツェン市で行われた欧州剣道大会の折に一週間ほど訪れた(ハンガリー国剣道連盟の招聘により、大会アシスタントとして)だけで、なかなか行くことができないのが非常に残念です。
彼らの度々の来日により、今でも何とかハンガリーで生活できるであろうと思うくらいのハンガリー語は話せていますし、偶にハンガリー語で夢を見たりもします。
私の人生、今年で半世紀になりますが、楽しみ・価値観等々の幅を大きく広げてくれた、そして、色々なこと学ばせていただいた、育ててくれたハンガリー国の人々・剣士達・風土に感謝!感謝!で一杯です。いつか第二の祖国でゆっくりと・・・。

願い

世界では、紛争・テロ等悲しい出来事がたくさん起きており、ニュースで聞かない日はありません。なぜこんなことが、なぜこんなことに・・・?と思い、悲しくなるばかりです。複雑な状況を理解しないままですが、複雑に絡み合った事柄を解いて、平和で楽しい世界となることを祈りたいと思います。人と人が素敵に繋がれば、国と国とも繋がり、争いや悲しみのない世界を実現できるはずと信じてやみません。