Mr. Daniel Gjorgjievski (ダニエル)
所属:マケドニア国立危機管理センター
参加研修コース名:コミュニティ防災
研修期間:2014年6月30日から8月9日まで
神戸市の自主防災組織「防災福祉コミュニティ」の事例を中心に、災害時の自助・共助の重要性を学ぶ「コミュニティ防災」研修に参加したマケドニアのダニエルさん。日本での研修成果を自国で活用しているという、嬉しい報告が届きました。
マケドニア(正式名:マケドニア旧ユーゴスラビア共和国)は東ヨーロッパ・バルカン半島にある国で、九州の約2/3の面積と約211万人の人口を有します。日本人にはあまり馴染みのない国かもしれませんが、有名なマザーテレサやアレクサンダー大王の出身国であり、また実は日本との関わりがとても深い国でもあります。1963年、首都スコピエにて死者1000名余りを出す大地震が発生した際、震災後のスコピエ都市計画の大部分は、東京都庁の建築等も手掛けた日本人都市計画家・丹下健三氏によって策定されました。現地でスコピエは「丹下の町」とも言われているそうで、多くの地元の方々はマケドニアの震災復興に協力した国・日本に親しみを抱いているといいます。そんなスコピエで、日本を身近に感じながら育ったダニエルさんは、JICA研修で初来日を果たしました。6週間の日本滞在中、日本の自然や人、文化を経験し、益々日本に親しみを抱くようになったそうです。
講師として地震発生時の対応を説明するダニエルさん
ダニエルさんが作成した教材一式
教材を手に、記念撮影!
ダニエルさんは研修中に作成するアクションプラン(帰国後の活動計画)のテーマを「小学校における防災能力強化」を作成し、帰国後、早速活動を開始しました。入念な準備を経て、2016年2月、スコピエ市内4つの小学校を対象に防災教育のモデル授業を実施。モデル授業は小学校2-4年生生徒・教員・保護者を対象に1日セミナー形式で実施され、内容は地震の発生メカニズム、地震・火事の際の身の守り方、毛布を用いた怪我人運搬方法の実演など多岐に渡るもので、4校で延べ500名が参加し、防災に関する知識を深めました。
また、今回の授業はダニエルさんが所属する危機管理センター主催で行われましたが、今後は各学校の教師だけでも同様の授業を行えるようにしたいと考えたダニエルさんは、JICA発行の防災教材「BOKOMIガイドブック」のマケドニア語版を作成し、学校への配布を行いました。この「BOKOMIガイドブック」はJICA関西が神戸市消防局の協力を得て作成した研修員向け教材であり、実際に神戸市職員の方が地域や学校で防災訓練・教育を指導する際のマニュアルとして利用しているもので、防災活動を行うにあたって非常に参考になる内容が盛り込まれています。このマケドニア語版ガイドブックはスコピエ市内・オフリド聖クリメント国立大学付属図書館にも教本として登録され、今後も充実した防災教育の実践のため、広くマケドニアで活用される予定です。
ダニエルさんは、JICA研修で学んだ日本の防災の「自助」、「災害理解」、「助け合い(繋がり)」の3つの考えをマケドニアでも広めたいという思いを込めて、このプロジェクトを「S.U.N」と名付けています。
「S」は自助のself-help,「U」は理解のunderstanding,「N」は繋がりのnetworkを指します。
「諦めずに根気強く頑張った結果、ようやく一つの成果を上げる事が出来ました。まだまだ小さな一歩ですが、より良い社会に向けて、今後も努力は惜しまないつもりです。」ダニエルさんは今回のモデル授業を振り返り、こう語ってくださいました。次なる前進に向けて、マケドニアでの活動はこれからも続きます。
業務第二課 後藤田 蕗子
防災分野の帰国研修員の活動はここからも見られます!