発表中のティラックさん
スリランカ民主的ガバナンス、地方自治と行政省 シニア副秘書官
ティラック ナンダナ へチアラクチ
研修コース名:紛争解決と共生社会づくりのための実践的参加型コミュニティ開発手法
研修期間:2015年10月26日から12月19日まで
研修に参加し、昨年12月に帰国したティラックさんから、素敵なメッセージが届きました。
研修中に遭遇した様々な体験に感動し、立ち止まり、考えながら過ごした日々を振り返り強く心に残った出来事をつづってくださいました。行政官として働きながら、劇団の劇作家としての顔も持つティラックさんにとって、日本のヒーローは世界的に有名な作家の川端康成と映画監督の黒沢明だそうです。伝統的な日本社会のイメージから、現代の日本社会の姿と課題を学び、多くのことを吸収して帰国し、これからの自身の仕事の意義を見つけたというティラックさん、研修中の経験をシナリオ作りに活かした聴衆を魅了する劇の披露も待ち遠しい限りです。
グループディスカッション
2015年10月25日の夜日本に到着した時、そこから始まる新しい経験の数々を誰が予想したでしょうか。人生の新しいページが開かれる期待のなかで、これから進んでいく巨大な世界を照らす光が、ほんのわずかに見えていました。
この研修は、参加型学習手法に基づいたデザインで、コースのテーマである紛争解決と共生社会づくりという目的を達成しやすくしています。研修プログラムでは、参加している研修員間のディスカッションや経験の発表と共有に重きがおかれ、チームスピリットが芽生えます。研修員は全員、何らかの紛争の影響を受けた社会の代表で、様々な価値体系を超えた社会づくりを夢見る探検家のようなものです。特にこの研修プログラムは、参加者が互いに自身の考えや経験を自由に共有し、分析し、考えを戦わせるといったプロセスを踏みます。それぞれの所属する社会の構造、文化、考え方、紛争のマネジメントにも違いがあり、それらの違いを乗り越えて、対話するために様々な「窓」が用意されています。別の表現をすれば、この研修は、現在の社会に生きる、多文化で多様な視点を持つ11か国の国々の代表によって構成されるプログラムと言えます。
広島の民家を訪問
研修で過ごした55日間は、プログラムに組み込まれた組織や団体が多岐にわたっていましたので、疲れや退屈を感じることは一度もありませんでした。研修プログラムでは、多くのフィールドビジット(研修旅行、現場体験)が組み込まれ、それらは大切な活動でした。広島訪問では、人類の発展の中で一番恐ろしい悲劇について語られ、その場にいた全員、涙が溢れそうなひと時となりました。国家や宗教や言語や文化など様々な違いを超えて、皆が同じように激しく心を揺さぶられる体験は、人生でもめったにあるものではありません。広島研修旅行中の学習は、生涯忘れられない体験になるとともに、非常に感銘深いものとなりました。また、広島では、山間の村に位置する和風の家に宿泊し、日本の伝統に彩られた文化体験と一般の日本人の暮らしを体験し、その夜の山で見た星空の輝きは私たち研修員の心も輝かせることになりました。
大阪市西成区釜ヶ崎では、資本主義社会における日雇い労働者の現実と向き合い、厳しい現状と生きる権利の獲得、普通に生活していくための戦いに涙する一コマもありました。
その後、東北復興支援の現場も訪問し、地震、津波といった自然災害に直面しつつも強い意志で生活の再建に進んでいる方々に出会い、それらの方々の復興にかける強い思いと忍耐力に触れ、人々の悲しみを和らげ、前に進む力をつけていくための、多彩なアプローチを学ぶことができました。日本の行政機関、NGO/NPO、市民の方々がそれぞれに違った形でできる最良の方法を以て、復興への貢献をされています。
過去の経験から学ぶための手段を学ぶことができたことが一番の収穫でした。
大阪釜ヶ崎紙芝居グループ・むすび
研修に参加している間中、不思議な気持ちにとらわれていました。
劇作家として、世界人類の一人として、政治的に地形的にひかれた境界線に沿って分けられた
違う国の人々が、同じ経験をする中で、同じ気持ちになり、涙し、笑う、その共通の感情の存在を心に感じるとき、
とても大きな感動を覚えました。人種も肌の違いも宗教や国籍の違いも、すべての境界が消えて、人々の心に隠された共通の感情に触れることができた、その経験をすることができたことにこの上もない幸運を感じています。
小さな子供が、生まれて初めて列車を見た時に感じる感動と同じ感情を持つことができました。
この、同じ感情の共有という、人間の持つ共通の資質というものは、この世界の不思議です。
私は、日本での研修に参加している間、自分自身の思いを紙に書いておくことを忘れたことはありません。日本を離れる時、さようならを言う瞬間が訪れた時に、私は2つの脚本を手にしていました。それは私が、これから、スリランカの観客を楽しませる次の人生のステージに向かっていくための証とも言えるでしょう。
研修最後のアクションプラン発表では、帰国後の計画として「住民組織と地方行政組織の連携強化をめざした様々な活動の実施」を提案しました。そして、スリランカに帰国後は、省内の上司や同僚に対して、研修参加で得られたファシリテーションの手法や様々な経験を通じた学びを共有する機会を得ました。また、私の研修報告に対して、上司である省の秘書官からも応援の言葉をいただき、大変励みになりました。
最後になりましたが、この研修プログラムの企画、準備、実施を担当し、研修に参加する機会を与えてくださった、JICA及び関西NGO協議会の皆様に心より感謝いたします。