ここがすごい!関西の中小企業 胡麻で世界平和を

−株式会社わだまんサイエンス 深堀社長に聞く−

「ごまで世界平和」を目指す、株式会社わだまんサイエンス社長 深堀 勝謙(ふかほり かつのり)さん。京都に本社を構える、従業員約20人のこの会社が、JICAの中小企業海外展開支援制度を利用して、胡麻で世界を変えることを実現しようとしています。舞台に選んだのは、中南米、パラグアイ。彼は、パラグアイの胡麻生産者が、より付加価値の高い胡麻製品を生産できるようにし、それを販売することを通じて、パラグアイの農民と日本をつなごうとしています。

縁と出会いの後に

深堀社長

 もともとサラリーマンとして、会社を転々としていたんです。その頃、常に「本当にこれでよいのか、将来的にずっとやり続けて良いのか」という疑問がつきまとっていました。そんな時に、美味しくて健康に良い「胡麻」という存在に出会って、「これだ」と確信を持ったのです。

そして、サラリーマンをしながら、胡麻ビジネスを始めました。海外への興味は当時からあったのですが、進出を考えるにはお金がなかった。そんな時、東日本大震災が起き、いてもたってもいられず、被災地に駆け付けました。そこで出会ったボリビア人が、偶然にもJICAで青年海外協力隊の派遣前の語学研修を担当している先生だったんです。彼と話をするうちに、「ボリビアが胡麻の生産地であるにも関わらず、胡麻を食べる文化がないこと」と「JICAが中南米連携調査団を募集していること」を知り、「現地で胡麻を加工して、美味しく食べる文化を作りたい。」という思いから、申請をしました。実は中南米連携調査団の対象国にボリビアは無く、隣国のパラグアイに行くことになったんですけれどね。

JICAとの協同

 ご縁を信じてJICAと協同することになりましたが、その選択は大正解でした。理由は3つあります。
第一に、公的機関であるJICAと一緒に動くことで、物事の進みが格段に早くなりました。相手国の政府高官など、民間企業が単独で乗り込んでもお話しする機会がないような人々に、最初からお会することができたのです。
 第二に、JICA職員が非常に親切にアドバイスをくれたり、一緒に考えてくれることです。職員の方々の国際協力への志と、私の理念も重なるところが大きく、良きパートナーとなれました。また、制度の細かいところが分からず、混乱してしまったとき、書類の書き方や、訪問順序について何度もアドバイスをいただきました。
 第三に、金銭面です。民間の中小企業が海外に展開するにあたって、一つの大きなネックとなるものが、渡航費です。それを負担していただけることで、民間中小企業にとって海外がぐっと近いものになります。

先進国に振り回されるパラグアイ

ラノルテーニャ農協さんにて焙煎指導をしているところ

 日本の胡麻自給率は0.1%もなく、ほとんどを輸入に頼っています。パラグアイは世界的な胡麻の産地。日本も多くの胡麻を輸入しています。しかし、現地の農家に胡麻を食べるという習慣はほとんどないんですよね。彼らは胡麻をどうすれば美味しく食べられるのかを知らない。しかも、日本向けに胡麻を製造しても、「これは日本の安全基準に合わない」と言われ、買い取ってもらえず、借金まみれになってしまう農家の方もいる。そのことを知って、現地の胡麻農家さんが、自立できるようにならねば、と強く思いました。
そこで、「現地の農家の方自身が生産した胡麻に付加価値を付けて、先進国に出荷できる」ことを目指し始めました。それぞれの農家さんに、「メーカー」になってもらうわけです。それには、まず彼らに、胡麻を「美味しい」と思ってもらう必要がある。これは一つの文化を変えることなので、非常にチャレンジングです。しかし、私たちの「胡麻への愛」を伝えていくことができれば、決して不可能なことではないと思います。

途上国ビジネスのコツ

ラノルテーニャ農協さんの胡麻講習会にて

 途上国でビジネスをするコツは何か、と聞かれると、「途上国と共に歩んでいくこと」だと答えています。途上国の人々からお金をとるのではなく、途上国の人たちにノウハウをプレゼントして、ともに歩んでゆく。例えば、私の事業では、初めに現地の農家に、「あなた自身がメーカーになってください」と伝え、焙煎機をプレゼントしたり、胡麻に関する知見を伝えたりします。その上で現地の方の口に合うレシピを考えてもらうなどして、彼らが自立できるようにするのです。最初からお金を儲けようとしてはいけません。現地の人からお金を取るのではなく、現地で作った製品を先進国で買ってもらう。このことによって、現地の人々の生活も、私たちのビジネスも、持続可能になるんです。 

夢をつくる

 パラグアイに対しては、本当に貧しく困っている人まで手を伸ばせている、という実感があります。胡麻ビジネスを通じて、農家さんの生活が潤い、「自分たちはこんなこともできるのだ」という自信を持ってもらえればいいな、と思います。
 一方で、今の日本に対しては、「夢が持てる社会」を作りたい。今の日本では、最初から「儲け」を意識しすぎる節がある。本当は、現地の方々にプレゼントして、彼らが自立できるようになって、そこで初めて私の儲けが出る。愛の種をまいてから、花が咲き、身を収穫できるようになるまでには時間がかかるんです。
 私が「胡麻で世界を平和にする」ことを達成することで、「それなら自分は、○○で世界を良くしていけるんじゃないか」と思ってもらえるような、ロールモデルになりたい。このように、日本に対しては、「夢をもつ」ことを伝えていきたいですね。


深堀社長のように、熱い思いを持って、途上国にビジネスを展開したいと考えている皆様をJICA は応援しています。
ビジネスを通じて、JICAと共に、世界をより良くしていきませんか?

JICA本部
金田 端希、伊藤 大介、宇佐見 幹、山城 舜太郎