環境問題をチャンスに変える-株式会社フクナガエンジニアリング

乾さん(左)と福永社長(右)

「黒字だけでは事業の意義は見出せなかった」- ベトナムの金属屑の再資源化技術は、日本の半世紀以上前の水準。70年の歴史で培ったリサイクルのノウハウで何とかできないかと立ち上がったのが、株式会社フクナガエンジニアリングの福永政弘社長です。

 大阪市・城東区に本社を構える同社は、2013年度JICA中小企業海外展開支援事業(ベトナム)で海外展開をすすめ、2014年4月にベトナム現地法人を設立されました。さらに、この度2017年度JICA中小企業海外展開支援事業(エチオピア)にて、見事採択されました。
今回は福永社長、そして一時帰国されていたベトナムフクナガエンジニアリング・乾晃一郎代表に、途上国進出の経緯、現場精神に溢れた金属リサイクル事業、開発課題解決への熱意を伺いました。

フクナガエンジニアリングってどんな会社?

【画像】前身の会社と併せて創業およそ70年、国内外でフレキシブルコンテナバッグ (通称:フレコンバッグ)とノーパンクタイヤを企画・販売している会社です。ベトナムでは金属リサイクル事業を展開しており、この「フレコンバッグ・ノーパンクタイヤ・金属リサイクル」の3本柱で途上国の環境問題に挑み、市場拡大を目指しています。
1つ目のフレコンバッグは、資材の大量輸送を可能とする大変丈夫な袋です。当社は、顧客の現場のニーズに寄り添ったバッグを提供することで作業効率の大幅アップに繋げ、人件費削減や物流改善に貢献します。
2つ目のノーパンクタイヤは、全てゴムで作られた「パンクしないタイヤ」のことで、主に産業車両で用いられます。金属片などが地面に落ちている作業現場等でもパンクを防ぐことができます。また、廃棄されるタイヤに新しいゴムを貼り付けるリサイクルタイヤ「エコソフトタイヤ THE PRO」も取り扱っています。
3つ目の金属リサイクル事業は、アルミリサイクルから、金属廃棄物処理・リサイクルのコンサルティングなど非常に幅広いサービスを展開しています。

海外展開のきっかけは?

 ベトナムで事業を開始した理由は2つあります。1つは、既に中国へOEM生産を委託していて海外進出の実績はあったのですが、価格高騰等に伴い中国ビジネスはこれまで通りに立ち行かなくなるだろうと思ったからです。新たな市場を開拓する必要があったことに加え、以前から「海外へ事業を拡大したい、国際色豊かな会社にしたい」という強い意志も持っておりまして、海外拠点設立は8年ほど前からずっと考えておりました。
もう1つの理由は、新たなビジネスモデル構築の必要があると感じたからです。長年続けてきた商売がビジネスモデルとして近年弱くなってきたと感じて、「革新的な何かをやりたい。じゃあフレコンバッグのOEMだけでなく、海外で新しいことをやろう」と一念発起しました。

金属リサイクルで循環型社会を

金属製造業の需要の高まりが見込まれるベトナム

皆さんもご存じの通り、ベトナムではバイク産業が盛んで、金属製造業の需要は高まるばかりです。また、日系企業もベトナムへ数多く進出しており、日本の大手バイクメーカー2社のベトナムでの生産台数シェア率は80%を越えているのですが、品質の低さからベトナム産の金属原料を使うことができず、中国やロシアから原料を輸入していました。一方で、ベトナム国内で発生する膨大な金属廃棄物は、ベトナムの環境問題をより深刻化させていました。そこで当社の技術を生かして、ベトナムローカルのリサイクル企業の技術を向上させることができれば、ベトナム国内で金属を循環させることができるのではないか、と考えました。この取り組みは、ベトナムローカル企業だけでなく、ベトナムへ進出している日系企業にも大きなお役立ちができると感じました。
すなわち、日本を含めた海外企業が納得する日本品質を、ベトナムのローカル企業から提供することができれば、ベトナム企業の国際市場での競争力を高めることができます。「ベトナムのローカル企業のリサイクル技術向上を支援することで、(1)ベトナム企業・(2)日系企業・(3)当社の三者にとって有益な事業を創ろう」と決意しまして、「ベトナム国アルミリサイクル事業調査(基礎調査)」でJICA中小企業海外展開支援へ応募しました。
当社の事業は、単に工場を現地に持っていくというものではありません。日本の技術者がベトナムの金属リサイクル企業の現場に立ち、どうすれば金属製造業者にリサイクル原料を取り扱ってもらえるか、ニーズにマッチした高品質な金属を提供する方法を一緒に考え、技術向上を図ります。金属リサイクル企業が金属製造業と取引を開始することが可能になった後も、当社がリサイクルフローの運営管理をすることで、取引の透明性を保ちます。
“フクナガ”が、金属製品製造業とベトナム金属リサイクル企業の「架け橋」となることで、ベトナムの環境問題を解決に貢献することが、私たちのミッションです。

進出国と社風のマッチング

現地企業の方と指導専門家とベトナム法人社員

 当社はモノづくりの会社ではなく、モノを動かす商社的な会社ですから、人こそが財産です。そのため、事業を進めていくにあたっては、社員の人材育成の方向性に適った道であるかを考えています。ベトナムは、国民性が日本に近かったこと、検討していた頃にベトナム人を雇用していたこと、何より社員が「ベトナムが好きだな、なんとなく合うな」と感じたことも、ベトナムで事業をすすめた理由の一つでした。

ベトナムでの事業は、法人としては3年目、調査を含めると8年になりますが、数えきれないほど失敗もしましたし、まだ「成功」と言えるものではありません。正直に申し上げまして、ベトナムでの事業はまだ黒字ではありません。ですが、社員自身がベトナムでの金属リサイクル事業を推し進めていて、やりたがっているんです。それは、社員が「ベトナムに貢献できている」という実感を持てていること、そしてベトナム人の「自国をもっと豊かにしたい、国際舞台で活躍できるようになりたい」という強い祖国愛に応えたい、という気持ちに起因しているからだと思います。そんな儲けがない段階を、JICAを含めた政府が支えて下さっているのは有難いですし、ビジネスとしてもっと効率的に進めていこうと思います。
現在は、方向性も固まったと実感しており、ベトナム法人の資本金を1.5倍増額しまして、人員も増やす予定です。また、9月から日系企業向けの広告も開始した影響で新規顧客も増えており、ベトナムでの事業はますます大きくなると信じています。

次は、エチオピアへ!

ABE留学生との交流会

 今、新たに採択されたJICA事業「リサイクル技術導入を通じた輸入代替製造業振興に関する案件化調査」では、エチオピアで金属リサイクル事業とリサイクルタイヤの事業を始動しようとしています。2年後には、現地法人の設立も計画しています。その準備の一環で、ABEイニシアティブ(※)のアフリカ留学生に当社でインターンシップを経験していただいて、ゆくゆくは当社の一員になっていただければ良いな、と構想しています。留学生の滞在費や交通費をJICAが負担して下さるこの制度は、企業にとって魅力的ですね。
 私たちの強みは、どんどん海外へ飛び出すことができる勢いとフットワークの軽さ。保守的な部分をなくし、ますます人材を変化させていくことで“社内改革”を起こして、勢いを増していくつもりです。活性化のために、帰国したJICA青年海外協力隊員も雇ってみたいと思っています。この勢いと、そして当社だけが提供できる付加価値をもって、関わる全ての人たちの“幸せ”につながる事業を創っていこうと思います。

※「アフリカの若者のための産業人材育成イニシアティブ(ABEイニシアティブ)」とは、優秀なアフリカの若手の行政官や企業人などを留学生(修士課程)として日本に受入れ、日本の水先案内人を育成するJICAのプロジェクト。

・・・インタビュー後の小話・・・

——乾さんは、冷静で落ち着いた印象を受けたのですが、「もう無理!」と思うことはあるんですか?
乾さん:今考えてみたのですが、そもそも「もう無理」と思うことがありません。社長からのプレッシャーはすごく感じますが(笑)。自分の作りたい像を忘れなければ、谷に落ちてもまた這い上がれますよ。

——福永社長は、反対にとてもエネルギッシュな印象を受けましたが、仕事の原動力は何でしょうか?
福永社長:やはり“ワクワク”ですね!限られた残りの人生をどう生きるかを考えたら、道は続きます。そして安全ばかりを取らない事です。安全を取ると、その場は良くても後が続きませんし、面白みがないでしょう。リスクを取って挑戦し、未来に思いを馳せる“ワクワク”が私の原動力です。

今回のインタビューで最も印象的だったのは、「黒字だけでは事業の意義は見出せなかったんです。でも自分たちの事業が、必ず途上国や日本企業の人のためになると思った時、絶対にやらなければならないと思いました。」というお二人の言葉でした。人と人をつなげるフクナガエンジニアリングの事業は、製造業を通して途上国と日本をつなげる大事な架け橋を作っていくのだと思います。

(JICA関西 企業連携課 中井光佐)