JICA関西職員が「人と防災未来センター」で防災研修

2018年7月19日

6月18日に発生した大阪府北部を震源とする地震から1か月後の7月18日、JICA関西職員20名が、「人と防災未来センター」を訪れました。西日本を襲った集中豪雨、米原市で起こった竜巻、日本列島を襲う連日の猛暑、そしてたびたび上陸し各地で猛威を振るう台風など、自然災害の脅威が私たちの生活を不安にさせる中、防災の取り組みや備えの大切さを学び、日ごろの業務に役立てるための防災研修を行いました。

「人と防災未来センター」の機能とJICA関西

【画像】阪神・淡路大震災の経験と教訓を、展示や映像で分かりやすく伝えるための同センターには、国内外から年間約50万人が見学に訪れます。また、展示や資料収集、保存だけでなく、主に社会学的視点からの防災研究や、その最新の研究成果を踏まえた実践的・体系的な研修を行政の防災担当者などを対象に行っています。防災に関するミュージアムとしてだけでなく、研究や研修など多角的な機能を持つ、世界でも他に類のないセンターです。これらの機能やネットワークをいかし、日本国内に限らず海外で起こった災害時の緊急援助や、その後の復旧・復興対策や再発防止のためのインフラ整備の支援なども行なっています。被災した途上国の防災対策の強化や減災への取り組み経験も豊富なことから、途上国で防災に携わる行政官、技術者、研究者、行政官などを対象にしたJICA研修員受け入れ事業の研修先としてもご協力いただいています。

多様化する自然災害、進化する防災対策

市民から寄せられた震災当時の写真と、その写真にまつわるエピソードを紹介

センターの矢野敏隆次長から同センター設立の経緯や役割などについて説明を受けた後、矢野次長の案内で館内をまわりました。途中、参加者からの突然の質問にも丁寧に答えていただきました。2002年に同センターが設立された当初は、自然災害の中でも「震災」をテーマにした施設でしたが、近年災害の多様化が進んでいることもあり、センターに求められる役割は大きく変化しています。そこで東西2ケ所に分かれている展示館のうち西館は「震災」に特化し、東館は洪水や津波などの「水災」に焦点を当てた展示を充実させるよう、7月末の展示開始を目指して、現在準備を進めているそうです。「震災」と「水災」に関するの最新の防災研究成果や取り組みの違いを比較しながら学ぶことができる施設として、今後ますます期待が寄せられています。

被災地のコミュニティの再構築

阪神・淡路大震災から現在までの復興過程の様子はジオラマで紹介されています。震災から約3か月後、次々に建設された仮設住宅は、弱者救済の観点から避難所生活を送っていた高齢者と障がい者に優先的に提供されました。ところが、地域社会で様々なサポートを受けて暮らしていた高齢者や障がい者の方たちが、その地域の方達の理解や支援を離れ、仮設住宅という新しいコミュニティの中で再び人間関係を築いていくのは相当なご苦労と時間が必要だったそうです。この経験はその後各地で起こった災害後、行政が策定する復興計画に大きく役立てられました。現在、高齢化が進む仮設住宅はコレクティブハウスとして生まれ変わり、見守り機能を備えた共同住宅として、新たな役割を担ってきているという事例も紹介されました。

経験と記憶の継承が今後の課題

震災後20年以上、語り部の活動を続けておられる水田さん

館内では、阪神・淡路大震災をご経験された方々が、当時の体験談を来場者に話し伝える「語り部」としてボランティア活動を続けておられます。60歳の時に被災し今年83歳を迎える語り部の一人、水口福弘さんのお話を伺いました。地震当日、自宅1階の寝室で寝ていた水口さんは家屋の下敷きになりながらも、外で聞こえる、家族の「お父さん、がんばって!」という声に支えられ必死に痛みと苦しさに耐えながら救助を待ち続けたそうです。その後、近隣の方たちの手で奇跡的に救出されたものの、治療を受けた後の避難所生活はプライバシーのない空間で大変だったそうです。でもそういう時だからこそ人の優しさや助け合いの大切さが身に沁みたと言います。周りと協力し合える関係を常日頃から築いておくことが、個人でできる「防災」の原点なのだと気付かされた水口さんのお話でした。語り部の高齢化が進む中、直接震災を体験していない世代に当時の状況をどのように伝え、それを各自の防災意識につなげていくことができるかどうかが、今後の課題だそうです。

研修を終えて

「防災」と聞くとインフラやシステムなど行政の取り組みを思い浮かべがちですが、防災の主役は私たち自身。人とのつながりを大切にし、一人一人が日ごろから防災にしっかり向き合い、そして未来を築いていくことの重要性を、展示、研究、研修などを通して世界に発信し続ける「人と防災未来センター」が担う役割は大きいです。日本の国土は世界の国土のわずか1パーセント。しかし世界中で起こる地震の10パーセントの影響を日本は受け、被災していると言います。そのような地理的環境にある日本が「防災」について真剣に取り組み、その知見を海外の国の人々と共有して、ともに語り学んでいく意義を改めて感じる研修でした。

企業連携課 脇田智恵


【人と防災未来センター】
阪神・淡路大震災(1995年1月17日)から7年後の2002年4月に、兵庫県が国の支援を得て設置した施設。阪神・淡路大震災の経験を語り継ぎ、その教訓を未来に生かすことを通じて、災害文化の形成、地域防災力の向上、防災政策の開発支援を図り、安全・安心な市民協働・減災社会の実現に貢献することをミッションとしています。展示物や各種データ、語り部の方のお話や3D映像などを通じて、子どもから大人まで防災・減災意識が醸成されるよう工夫を凝らした展示が特徴です。
〒651-0073
神戸市中央区脇浜海岸通1-5-2(HAT神戸内)
●開館時間 9:30~18:00(7-9月)※入館は17:00まで
●休館日 毎週月曜日