「SDGs時代のビジネス: 企業の社会的責任と調達ビジネスチャンスを逃さないための責任ある調達セミナー」を開催しました

2018年8月10日

【画像】2018年7月19日、SDGsの達成、特にSDGsのゴール12「つくる責任、つかう責任」や、ゴール8「働きがいも、経済成長も」の達成に向けて、関西SDGsプラットフォーム*1(事務局JICA関西)はグローバル・コンパクト・ネットワーク・ジャパンと共催で、社会的責任に配慮した調達に関するセミナーを開催しました。調達物品の提供過程(サプライチェーン)の適正管理(CSR調達)に焦点を当て、企業・団体が事業展開する中で、原材料や部品を調達する際、調達先の生産現場での労働者の人権や環境が守られているかということを考慮する視点について考えました。

SDGsと企業の役割:「選ぶ時代」から「選ばれる」時代へ

2030年を達成の目標としてすべての国連加盟国が合意した「国連持続可能な開発目標(SDGs)」。17の目標を達成する上で企業は重要なパートナーであり、企業が“中核的事業”を通じてこれに貢献することが期待されています。国際分業体制が発展した今、事業は国内だけでは完結しません。1次調達先、2次調達先などは外国であることが多く、このようなグローバル・バリューチェーンを統括する立場にある発注元の日本企業は、すべての調達先で持続可能性(SDGs)への配慮、つまり社会的責任・CSRの実践が行われているか責任を持つ必要性が高まっています。今までは日本企業が独自の基準で事業決定し行ってきましたが、これからはSDGsが世界普遍的な基準として適用され、その基準を満たしているか否かによって企業が評価される時代になります。まさに「選ぶ時代」から「選ばれる」時代の到来です。逆に企業にとっては、リスク回避と同時に、企業の競争力強化のための主要なツールとなり、中核的事業を発展させるビジネスチャンスにもなり得ます。

SDGsやCSRといえば、寄付や植樹といったチャリティー・ボランティア活動であると印象を持たれがちです。もちろんこういった社会貢献活動も大切ではありますが、これからのSDGs時代では、経営の中にCSRの視点を組み込んだ事業、経営へのCSRの統合・主流化が重要になってきます。とはいえ既に「事業を通して社会貢献をする」と経営理念を掲げている企業もたくさんあります。そのような企業は、その取り組み実例をSDGsの切り口で整理・蓄積していくことが大切です。

社会的責任(CSR)を考慮した調達実例:事業のプロセスにSDGs配慮の視点を組み込む

【画像】スポーツシューズの株式会社アシックスCSR担当者様、住宅設備機器で風呂給湯器の株式会社ノーリツCSR調達担当者様に、自社の調達についてお話いただきました。両社共、自社事業の調達というプロセスにCSR(SDGsへの配慮)を組み込むことによって、社会的責任を果たす企業であり続けるための努力を行っておられます。社会的責任を考えた調達(CSR調達)が必要だと認識したきっかけは、両社とも組織外からの働きかけでした。アシックスの場合、アテネ・オリンピックの際に国際NGO主体で実施された「Play Fair Olympic Campaign(プレイ・フェア・オリンピック・キャンペーン)」によってスポーツ用品を下請け製造する途上国の工場で過酷な労働環境を強いていると指摘され、オリンピックという公平な競技を支えるスポーツシューズも公正な環境で製造される必要があると世界にメッセージが発出されました。以降、アシックスは労働環境や労働条件、環境配慮などが一定の基準に達するように製造委託先に求めています。株式会社ノーリツの場合は、取引先からの紛争鉱物に関する調査依頼、サプライヤー自己評価アンケート依頼等がきっかけでした。その結果、自社のサプライチェーンへの働きかけが弱いことが判明し、以降社内横断的にCSR調達ワーキンググループを構築し、自社CSR調達ガイドラインを作成、サプライヤーにその遵守要請を行っています。また2017年にはCSR配慮のKPI(重要業績評価指標)を設定することで、CSRを経営に融合されました。

消費者と企業の「緊張感のあるコミュニケーション」

SDGsゴール12「つくる責任、つかう責任」とは、持続可能な生産消費形態を確保することです。その実現のためには、意識改革と教育を通じて消費者を巻き込むことが大切です。値段・デザイン・品質といった私たちが普段買い物をする時に考慮する項目に、環境配慮・公正・倫理・平和・人権などの視点が取り入れられれば(これを「エシカル消費」といいます)、それらに配慮した商品が売れ、その企業の利益が上がり、事業が持続可能になります。

消費者意識調査によれば、7割以上の人はどんなエシカル商品がどこにあるのか知らないだけで、情報さえあればエシカル商品を買いたいと思っています。エシカル商品が製造され、それが売れるという正の回転を維持するには、消費者と企業間のコミュニケーションが必須です。環境市民は、消費から持続可能な社会をつくる市民ネットワークを設立し、「企業のエシカル通信簿」やエコでエシカルな商品を紹介し、販売場所も調べることができるアプリ「ぐりちょ(Green & Ethical Choices)*2」を立ち上げています。企業のSDGsへ配慮した取組みがうまく消費者に届き、消費者がそれを評価するという消費者・企業間の「緊張感あるコミュニケーション」によってお互いが成長できれば、企業・消費者・地球に良いですね。

東京オリンピック・パラリンピック組織委員会の調達コード:消費・生産パターンの変革というレガシーに

【画像】SDGsが世界基準となりつつある中、世界レベルのイベントは世界中の視線が集まることから、環境・社会・経済の3側面において求められる持続可能性への配慮レベルが高いと言えます。東京2020大会に関連するサプライチェーンにおいても環境破壊や適正な労働環境等に配慮している必要があります。組織委員会では「調達コード基本原則」*3を策定し持続可能性に配慮した調達を実現するための基準や運用方法を定めました。持続可能性に関する問題の多くは製造の上流で発生することが多いため、1次サプライヤーから2次サプライヤー、さらに2次から3次へと働きかけをすることで、供給過程全体で持続可能性への配慮が浸透するという仕組みです。東京2020大会において持続可能性に配慮した調達に取り組むことは、企業や公共部門における持続可能な慣行を推進することになり、社会全般における消費・生産パターンの変革というレガシー(後世に受け継がれるもの)につながる可能性があります。

CSR調達を進める際に便利なツール、「CSR調達お役立ちツール」紹介

グローバル・コンパクト・ネットワーク・ジャパン(以下GCNJ)は国連グローバル・コンパクト*4の日本におけるローカルネットワークとして企業のグローバルビジネスやCSR経営を推進しています。企業の実務担当者が他社事例や学識経験者から学び、情報交換する場としてGCNJには12の分科会がありますが、そのうちの「サプライチェーン分科会」では、次のような冊子を発行しています。*5
・「サプライチェーンにおける望ましいCSR活動のあり方」:持続可能性に配慮した調達のあるべき姿や重要プロセスについてまとめた冊子
・「CSR調達入門書‐サプライチェーンへのCSRの浸透」:国政情勢などに関する理解が進んでいない企業や業界において持続可能性に配慮した調達を浸透させるために、好事例やリスク事例をまとめた冊子
・「CSR調達セルフ・アセスメント・ツール・セット」:様々なサプライヤーの取り組み状況を把握しなければならないバイヤー側の負担や、逆にバイヤーからの多種多様なCSRアンケート回答依頼増加に伴うサプライヤー側の負荷増加という問題を解決するため、が作成されました。乱立するアンケートを統一することで負荷を抑え、サプライチェーン上の様々な企業がCSR調達を始めやすい環境を整備する一助となっており、無償で提供されています。ぜひ多くの企業に利用していただきたいです。

企業の社会的責任(CSR)= SDGs達成への配慮・貢献

企業の社会的責任(CSR)とは持続可能性への配慮(SDGsへの配慮・貢献)であると言えます。その配慮が企業経営のプロセスの中に組み込まれ、調達過程(サプライチェーン)にも同様の配慮がなされ、サプライチェーンに関わる他企業にもその配慮が広がっていけば、働く人の権利や自然環境への配慮などがきちんと行われるといった良い影響が地球規模で表れると期待できます。またコミュニケーションによってその努力を消費者に伝えれば、消費者もSDGs配慮の商品を選択・購入し、企業は利益が出てその事業が持続可能となります。その結果、社会全般における生産・消費パターンが持続可能なものになります。企業の経済活動は今やグローバルレベル。特に、大阪万博誘致が実現すれば、万博での調達にも東京2020大会の調達コードと同様の対応が求められる可能性があります。社会によい循環をつくるために、より多くの企業にSDGs配慮を実施していただきたいです。