教師海外研修への参加知見を活かした防災教育授業の開催 ~ドローンを使ったJICAの取り組みから学ぶ~

奈良市立都祁小学校 中 陽佑 教諭(2019年度教師海外研修(ルワンダ)参加)

2020年2月7日

阪神・淡路大震災から25年を迎えた2020年1月17日(金)。奈良市立都祁小学校(今西敏幸校長)では、全校生徒を対象とした防災教育学習「防災教育 DAY」が開催され、地域の警察、防災士会および災害地で人道支援や調査を実施するドローンを提供する企業と連携した体験型学習授業が実施されました。

地域と企業が連携!参加型学習授業

ドローンの実演と災害地で活躍するドローンの話

ルワンダでの車両運輸に関する問題提起

中教諭 ルワンダでの取り組みを紹介

みんなで考えてみた

8:20に開会式が行われ、4年生による防災クイズを通して生徒全員で防災の知識を高めた後、体育館に移動し、防災士の方から「地域の防災」についての講話、またドローンをプログラミングしている企業から「被災地で活躍するドローン」の講話とデモンストレーションが行われました。
その後、6年生が運動場で実際にドローンを飛ばす体験を行いました。インストラクターより簡単な説明を受けると、児童たちは運動場内を120mの高さまで難なくドローンを操作していました。またモニターでは120m上からの地域の景色をみることができ、手を振ってドローンに合図をおくる児童もいました。

その後教室では、中教諭による6年1組(児童23名)の英語の授業においてドローンを使った国際協力やJICAの取り組みが紹介されました。
中教諭は2019年8月のルワンダにおける教師海外研修の経験を活かし、ルワンダでドローンを用いて輸血用の血液を輸送するアメリカのベンチャー企業、ジップライン社の取り組みを授業で取り上げました。中教諭が研修から帰国後、11月に行った実践授業ではルワンダの山が多い地形が紹介されましたが、この日の防災教育授業では当時の授業内容を振り返りながら、山が多い地形における車での運輸交通の問題提起を行い、児童たちがロイロノートを使ってそれぞれが考えた問題をシェアし意見を述べるという参加型の授業を行いました。児童たちからは、「事故が起こりやすい」、「荷物など運ぶのに不便」など意見があがっていました。対して中教諭からは他に考えられる「輸送コスト」、「輸送時間」の問題の紹介があり、児童たちは頷きながら話を聞いていました。また、英語授業の一環としてはジップライン社CEOの英語スピーチ映像から単語の聞き取り練習が行われ、児童たちが英語スピーチを通じて事業の背景を知ることができるよう工夫されていました。

ジップライン社では携帯アプリを通じて輸血用血液の注文を受け、物流拠点からドローンを飛ばし位置情報で医療機関や場所を特定し輸血血液をパラシュートで投下し、納品しています。注文から10分ほどでドローンを飛ばし、本来は2時間かかる山道をわずか数十分で目的地まで運ぶのです。児童たちもこのアイデアから、ドローンのいろんな可能性があることを知ることができたと思います。
現在、オーストラリアで山火事が起こっている事例からは、ドローンを使ってできる支援を全員でロイロノートを使って意見交換し、児童らからは「山の上から炎の中で逃げられなくなっている動物を探す」、「食べ物や水を送る」、「募金を呼び掛ける」など様々な意見があがり、児童らが真剣に問題に向き合い考えた様子が伺えました。
最後にSDGsのゴールのうち、この取り組みがどのゴールに結びついているかをクラスで確認し午前中の授業が終わりました。SDGsに興味を持った児童が、授業が終わってからも中教諭に質問されていました。
午後からのプログラミング授業ではドローンを飛ばす体験が行われ、一日を通じて、児童らは防災をテーマに自然災害とドローンをはじめとした最新技術の可能性についての理解を深め、プログラムのねらいであった、安心で安全な社会づくりに関する新たな知識を深める機会になったように感じました。

「防災教育 DAY」は地域・企業・学校と連携してつくられたプログラムで、都祁小学校の児童たちのことを思って考案されたことが伺えました。中教諭がルワンダ教師海外研修でのご経験を活かし、ルワンダの事例を交えた授業を実施された事も、児童らが開発途上国に関する理解を深める貴重な機会になったことと思います。

JICA関西では、開発途上国において国際協力の現場を視察し、所属校で開発教育(国際理解教育)の実践授業を行うプログラム「教師海外研修」を毎年8月におよそ10日間の日程で実施しています。
2020年度も4月より募集を開始予定です。ご関心ある先生方、どうぞお気軽にお問合せください。

JICA関西 国際協力推進員(奈良県) 宮本純子